第四羽

 そして何も見つからないまま五時限目が始まった。



≪見つからない≫


≪手掛かりなしか。俺もだ。昼休みを使って三人の様子を見てきたが不審な点はない≫


≪見つからない自信があるのか、それとも………≫


≪ギリギリまで探そう。諦めちゃダメだ≫



 そして五時限目が終わった。


 タンチョウは当てもないまま教室を出るとそのまま走って体育館へ向かった。


 自分でも経験があったタンチョウは吉田は部室で誕プレの存在を匂わせたと確信していた。


 だが、その誕プレの行方の見当はついていなかった。部室の前に来るとそこにはオオルリがいた。



「来たか」


「オオルリ、どうして?」


「キセキレイと話をしたんだ。勘や第一印象ってのは重要らしい。もし、なんの脈絡もなくそこだと言う確信が生まれたのならそれに従うべきだって」


「だけど、どうしようもないぞ」


「いいさ、吉田と接触したのはタンチョウだけだ。その勘を信じるさ。手伝うよ。どうするつもりなんだ?」


「中に入ろう」



 タンチョウとオオルリがバレー部の部室へ入った。


 調べが付いているタンチョウは三人の容疑者の使うロッカーをオオルリに示した。


 どれも特徴はない。普通のロッカーだった。だが、名札がついている。


「ここか」


「ああ、三つとも鍵がかかってる。ピッキングしよう」


「出来るのか?」


「出来ない。出来るか?」


「した事がない」


「困ったもんだな」



 オオルリがスマホを取り出すとコマドリたちに連絡を取った。



≪ピッキング出来る奴はいるか?≫


≪した事ないよ≫


≪ない。ピッキングするの?≫


≪タンチョウがそう言ってる≫


≪必要ならやればいいと思うな。でも、するのなら本当に必要な事だけね≫


≪もう犯人は特定してるの?≫


≪それがまだだ。だから三人ともやるつもりらしい≫


≪休み時間はもうすぐ終わるよ≫


≪ああ、何とかするしかないさ≫



 タンチョウは会話に参加しなかったがこれらのやり取りを自分のスマホで見ていた。


 無駄な事をしている余裕はない。やるのは必要な事だけ。


「止めよう。教室へ戻る」


「え、おい」



 タンチョウは部室を出て行った。


 オオルリは急いでタンチョウの後に続いたが納得していない様子だ。



「どういうことだ?」


「無駄な事をしている余裕はない。遅刻をする必要はない」



 タンチョウとオオルリが歩いていると六時限目の授業を受けるために移動している四人組に出くわした。


 吉田とバレー部員の容疑者三人だった。タンチョウとオオルリは驚きに目を見張ったがすぐに表情を戻すと四人をつぶさに観察した。


 吉田は刻一刻と時間が過ぎていき、奪われた誕プレが戻ってこないので朝よりも一層落ち込んでいた。


 安藤や漆山はそんな吉田を励ましているが石井は三人の後方を歩いている。


 そして六時限目が始まる鐘が鳴った。



≪さっき職員室へ行って来たんだけど一年三組の名簿を見たら安藤くんが四時限目を遅刻してる≫


≪なるほどねー。奪って隠し場所を考えて隠しに行ってたら遅刻って事も考えられる≫


≪うん、十分にね≫


≪ピッキングはどうだったの?≫


≪していない。今からやりに行く≫


≪わお、なになに、私に抜け出すなんてダメだぞって言ったのにやっちゃうの?≫


≪必要な事だからな。用意は出来てる≫


≪今のところ、安藤くんが犯人として濃厚だ≫


≪分かってる。任せておけ≫


≪でも、どうして六時限目なの?≫


≪キセキレイが言ったように時間割を把握しておいた。一年三組は今は化学の授業だ。化学室に移動してる。取り返した後にそのまま吉田の机の中にでも放り込んでおく≫



 そしてタンチョウは授業を初めて抜け出した。

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