回想 2 来し方と嘘つき
1
おにいちゃんの正体を知っても、結局全然――は言い過ぎだが、ほとんど何にも変わらなかった。
おにいちゃんは私の血もお母さんの血も、飲んでいなかった。
お父さんの血なんて何をか言わんや。
「屋根の下を借りてる上に血まで頂くのは気が引けない?」とは、苦笑したおにいちゃんの
私の血を吸ってたらロリコンと
その時は保護者気取りか、と思ったので軽くスネを蹴っ飛ばしておいた。
「みぃちゃん、やってしまったねえ」
丸よりかは、圧倒的にバツの多い私のテストの答案を
小学校の五年だったか、確かそのぐらいの頃の事だ。
私の名誉のために言うと、断じて
「漢字は書くより読む方が楽ってのはよくわかるけど」
「……おにいちゃんはその分時間があるだけじゃん」
口を
「まあ、確かにそうだけど……その分忘れないようにするの、大変なんだぜ?」
「……」
「とりあえず、ゲームの前に書き取り、する?
というか、しないとみぃちゃんも僕も母さんに怒られると思うんですが」
おにいちゃんの手には漢字練習帳と鉛筆。
変なの、と私は思った。
本当のおにいちゃんでもないのに、おにいちゃんは母さんに怒られるのがイヤだと言う。
確かに、母さんは怒ると怖いけど。
「暗示とかでどうにかしちゃえ、とか考えないの?」
「みぃちゃんの教育上、そこはよろしくないだろ」
はい、と漢字練習帳と鉛筆を渡される。
私は仕方なく、赤ペンで答えの入った答案を並べて、漢字練習帳を開き、おにいちゃん監視のもと、間違えた漢字の書き取りを始めた。
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