回想 1 違和と怪物
1
私がそれに気がついたのは、小学校四年生の時だ。
学校から帰って宿題を終えた私が、おにいちゃんとテレビゲームをしていた時だ。
それもおせんべいをかじりながら。
お
……今もって考えると、あの
とりあえず、あとはどっちか必殺技決めた方が勝てそう。
そんな時だったのだ。あまりにタイミングが悪すぎる。
いや、そもそもおにいちゃんに目をつけられたという時点で、私は運がないのかもしれないけど。
冷たい水を頭から
あるいは、ずうっと水中に
ひんやりと
動かせなかった。文字通り、指先一つ。
おにいちゃんは当然のように、私の操作キャラに必殺技をかまして勝ってから、
「みぃちゃん?」
ぎくり、とかろうじてできていた呼吸すら止まる心地だった。
母さんにも、父さんにも、私にも似ていない。
それは当然だ。
だって、この隣りにいる男は私のおにいちゃんなんかじゃない。
――私に、おにいちゃんなんかいない。
それでも、確かにあれはおにいちゃんだと頭の中で何かが言う。
いや、待て、おにいちゃんの名前は? ――出てこない。
いやでもこれは私のおにいちゃんで、私におにいちゃんなんかいない。
「みぃちゃん」
ずっと聞いていると眠くなってくるような、絵本を読み聞かせするような、少し平坦で落ち着いた心地いい深みのある声。
固まる私の目をじっと見つめたまま、おにいちゃんは言った。
「気がついちゃった?」
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