ミニマムモンスター愛好家~小さくて可愛いのはお嫌いですか?~

ロゼッタ

可愛いって素晴らしい!

この世界にはたくさんのモンスターが生息している。


最大級のモンスターと言えば『ホエールドラゴン』だろう。


体長200mを超す超大型モンスターで、生息地は海である。


濃いめのグレーの体、大きな口、海深1000mでも軽々と潜っていけるだけの強度を誇るが気性は実に穏やかで、滅多な事では人を襲う事はない。


だが一度逆鱗に触れると手に負えない恐ろしさもあり、ホエールドラゴンの生息地での漁には細心の注意が必要とされている。


逆に最小のモンスターはと言えば 『キャンディアント』ではないだろうか。


キャンディを思わせる甘い匂いを発する超小型モンスターで、その体長は1cmにも満たない。


集団行動を好むモンスターで、少々荒っぽい性格ではあるが攻撃力はほぼ0のため、1匹に襲われても屁でもないのだが、これが数万匹単位になると骨すら残さないと言われている。


実際、キャンディアントの巣にイタズラをした者が年に何名か行方不明になっている。


だが巣さえ荒らしたりしなければほぼ無害と言えるモンスターで、主食はコーラルの実である。


コーラルの実は人間が食するには有毒なのだがとても甘いいい匂いを発する木の実で、この匂いがキャンディアントの甘い匂いの正体でもある。


もちろん他にも多種多様なモンスターが生息しているこの『アースノーム』で、私『リルラ・バーミリアム』はモンスター研究をしながら暮らしている。


研究家と言えば聞こえは言いが、実際にはミニマムモンスター愛好家である。


ミニマムモンスター。


手のひらサイズ程のモンスターの通称なのだが、このミニマムモンスターの可愛らしさと言ったら、そこら辺の美少女の比ではないのだ。


特に齧歯目系のモンスターは実に愛らしく、目に入れても痛くないと言っても過言ではない。


私が一押しのモンスターは『ラビッツモール』だ。


体長7cm程で長い耳が特徴、もふもふの体にクリクリとしたまん丸い目、少し開いた口からチラリと見える小さな歯、短い手足、まん丸い尻尾が実に愛らしいモンスターである。


草食性のラビッツモールはラッキークローバーを好んで食する事から、地域によっては幸せの象徴とも称されている。


臆病な性格で、人を見ても自ら襲ってくる事はなく、仮に襲われたとしても短い手足でのパンチ攻撃が主なので怪我をする事はほとんどない。


その可愛らしさから愛玩動物としての需要も高い。


毛色も様々で、近年では掛け合いで生まれた珍しいカラーの個体は高値で売り買いまでされている程である。


次にオススメするのが『プーリースライム』だ。


小降りの三角形の耳を有し、体よりも少し大きめの尻尾が実に愛らしい。


が、その名の通りスライムである為もふもふした毛はない。


手触りが抜群で、ムニムニしたその体はいつまでも触っていたくなる程だ。


カラーリングが生息地により違い、草地が多い地方ではライムグリーン、岩地が多い地方ではライトベージュ、水源地方ではスカイブルー、砂漠地帯では何故かレッド。


他にも氷山地帯ではラベンダー、火山地帯では金色などが目撃されていて、そのカラフルさに形容の愛らしさ、攻撃力が低い為にほぼ害さない性質等から人気を博している。


ウルフ系、ドラゴン系、ゴブリン系等のモンスターは知能が高く攻撃力も高い為、人にとっては悪害な生物だが、ミニマムモンスターは人に癒しを与える存在と言えるだろう。


可愛いは正義とはよく言ったものだと思う。


そう、正に可愛いは正義なのだ!


ミニマムモンスターは可愛い。


だから正義なのだ!


「リルラ博士?また妄想の世界に入ってます?依頼されてるモンスター調査の期限が迫ってますけど?」


助手の『マリア・ブロックウェル』が何やらうるさいが気にしない。


私の頭の中はミニマムモンスターでいっぱいだ。


とは言えお金の為には依頼はこなさなければならない。


今回の依頼は『ロックマッシュ』の生体調査だ。


数年おきに異常発生を繰り返すキノコ型モンスターで、見た目は岩そのもの。


体の表面も岩のように固く、切り付けると睡眠作用のある胞子を撒き散らす。


特殊調理を施せば食べられなくはないのだが、その調理法が実に難しい為食用として流通するのは困難で、有害モンスター指定がなされている。


今年はロックマッシュが異常発生しているので、その詳しい生態系や発生域等の調査を依頼されてる。


これがミニマムモンスターの調査だったらどんなに幸せだろうか。


「嗚呼、可愛いって何て罪なのだろう!」


「はいはい、またミニマムモンスターですか。分かりましたから仕事しましょうね」


マリアがいつもの様にドライに返してくる。


彼女もミニマムモンスターの魅力を知れば立ち所にその魅力に取り憑かれるだろうに。


「マリア!君は実に惜しいことをしている!可愛いは素晴らしいのだよ!」


「はいはい、仕事しましょうねー、博士。」


ロックマッシュの調査に出掛けるとしようか…


きっと行く先には可愛いミニマムモンスターが私を待っているだろう!





















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