自己矛盾の煉瓦塀


心の中に陥った。


水晶の窓の外、——

——子どもビールを並べて、

      (液体)

青いコップに注いで、

   (固体)

大きく騒ぐ子どもたち。

 (気体?)

夕方の、いろいろな背景。

——薄汚れた教室。掃除の時間に、

ほうきを持って一生懸命に床を掃く。


トランプカードが崩れて、いっせいに積み重なる。

その瞬間、数秒間。強烈な風が、嵐が舞い起こる。

青空に見えた天井にひびが入って、

崩れると、まったくの無音であった空間に、

多大な音の洪水が流れ込む、

チェット・ベイカー「Jazz Master」

エム・エフ・ドゥーム「Mm...Food」

カニエ・ウエスト「808 & Heartbreak」

やくしまるえつこ

      「RADIO ONSEN EUTOPIA」

去った天井の奥には、

幻惑の天がかかり

天の川が輝石宮きせきぐう石英館せきえいかんに橋をかける。


ところかわって、昔の町

ルビー色の風と、熱い影に包まれる。

木の板が転がる、それも影をつくる、

朱色あか砂地すなじに長いかげ。

虎が死ぬ、

鍋では茹で卵が出来上がる。

空から飛来ひらいした光が、大きな音を立てる

銀色の方舟はこぶね

知性の正体


お洒落な街は白のその上に、

とりどりに彩どる、極彩色ごくさいしき

見事に、建物に花開く、

々々てらてらと濡れたままの建築物

雨のエッセンスを集めて、

屋根をすべってゆく雨粒だった水は、

全てを悟ったように泣き

遠くの空から綺麗な雲が、

汚れないまま滑ってくる。

まるで出来立できたての水か、

い目のない明るいドレス。

極端に匂いをうすめたそんな風景。


——さあて、煉瓦塀に囲まれたこの迷路は、

様々な境遇を反映して、

無数の嘘をすくい上げる

人形のままではいられなくなる。

どの地点、どの座標、どの瞬間を切り取っても、

実はおんなじ線しかない。

みにくいものも綺麗なものも、

聖なるものもケガレたものも、

あるいはおんなじうずの中、

しかして、この世は無理に切り取り、

紙に貼り付け、名前をつける、


子どもたちが騒いでいる。

子どもビールを机に並べて、

真ん中には木の皿に、

てんこ盛りだったお菓子がもうなくなってしまって、

残り幾らか残っただけだが、

そのまま置いてある。いくつかのクッキー。

裸の電球が埃をまとって、

子どもたちの生きのいい頭皮を照らす。

こなのような光、

窓の外はまた、同じ風景。——


——心の中に陥った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る