ミサントロピストの伴侶
Phantom Cat
1
「お加減はいかがですか?」
そう言いながら、「妻」がコップと錠剤を持ってきた。二十代にしか見えないが、既に「彼女」は私に半世紀以上連れ添っている。
「ああ。ありがとう。悪くないよ」
私は応えてそれらを受け取り、錠剤を口に含むとコップの水で一気に胃へと流し込む。
「それでは、失礼します」
コップを持って、「妻」がドアの向こうに消える。私は再び目の前に開かれているハードカバーの本に視線を移そうとして、ふと、背後の本棚の列に気を取られる。
一つ一つの本棚は私の身長ほどの高さで、それが五つ並んでおり、全てぎっしりと本が詰まっている。それを見るたび、私は少し不安になる。
私が生きている内に、この全てを読めるんだろうか……
もちろん、データ化してHRTMS(High Resolution Transcranial Magnetic Stimulation:高分解能経頭蓋磁気刺激)で脳内に叩き込めば一瞬だ。だけど私は古い人間。そんな風にして知識を得るのは好きじゃないし、私のかつての職業を奪った技術に与するのも本意ではない。だからこうして私は日がな書斎にこもり、今日もコレクションしてきた本を読み続けている。
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