夜風

ピッピ

超短編

『 楽しかった?』そう貴方は僕の耳元で囁く。細く白い腕の中で僕は顔をうずめる。ブランド物の香水に吹かしたタバコの匂いがした。『 じゃあ寝よっか』そんな言葉を口にして彼女は瞳を閉じた。貴方はいつもシャワーを浴びない。そう、貴方の遊び相手って事ぐらい分かっている。どれだけ身体を重ねても愛を嘆いても貴方には届かない。貴方の笑顔は僕だけの物じゃないから。綺麗な貴方の寝顔を横目に貴方にキスをした。首筋から胸元にかけて少しずつ、少しずつ。僕の物になって。そう呟き、彼女の胸元に顔をうずくめ眠りにつく。目が覚めると支度をした彼女がいた。『 楽しかったよ』そう言い笑った彼女は僕の首筋にキスをした。その後忙しなく僕の家を出ていった。部屋に充満した彼女の香りの中に、微かに僕の家のシャンプーの香りがした

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