第一節 疑問
アベルは愛を知らなかった。身近にある感情と言えば奪いたい、壊したい、ぐちゃぐちゃにしたい。そんな感情だけだ。
悪魔達は誰も愛を知らない。ただ1人を覗いて
アベルは沈まぬ月を眺めながら少し昔の光景を頭によぎらせていた
父サタンの城には古い書庫があった。
幼き頃、その書庫に連れて行ってもらったことがある。目にする数々の種族の本、当時のアベルは目を輝かせていた。ふとその本の中に自分たちと似たような容姿をしている物が描かれた書物を見つけた。
父に問う
『 この生き物はなに?』
父サタンは確かこう答えた
『 それは人間という生き物だ。奪う、我がものにしたい、壊したい。そんな感情を持った醜い生き物だ。似ているだろう?』
幼き頃のアベルは違和感を覚えた。その書物には確かにそういう欲が描かれていた。だがひとつ違うものがあった。男女が微笑みながら抱き合っている描写だ。
見たことの無い感情、アベルは胸をおどらせ父に問うた。
『 それは愛だ。人間が最も欲しがり、最もいらないもの。』
父はもの鬱げに遠くを見つめその場を去った
この言葉からアベルは人間界に興味を持った
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