第34話
俺の目の前に、突如としてどす黒く不気味でいびつな姿のドラゴンが現れた。
「何!? ドラゴンだと!?」
俺は咄嗟に飛び退き距離を取った。何故だ。一体何が起こっている。今の今まで目の前にはマゼンタがいたはずだろう。それなのになぜ今はドラゴンがいるんだ。訳が分からない。いや考えても仕方ない。とにかくまずは倒すのが先決だ。
「燃えろ!」
俺は火魔法を使ったが、ドラゴンには一切効いていなかった。何なんだ! 一体こいつは何なんだ!
「グオオオオオオオオオオオオオオッ!」
ドラゴンは激しい咆哮をあげた。その瞬間、俺は吹き飛ばされてしまった。なんて力だ。地面に叩きつけられて動けなくなってしまった。
「ぐっ……」
俺はどうにか立ち上がろうとしたが、まるで身体が言うことを聞かなかった。
「グオオオオオオオオオオオオオッ!」
ドラゴンが再び咆哮を上げた瞬間、俺は地面を転がった。なんだこいつはこの声は他のドラゴンとは比べ物にならない程の強さだと本能で感じる。こんなものに立ち向かえる人間などいるわけがないいていいはずがない。
「あああああああ」
俺は頭を地面に叩きつけた。何度も何度も激しく叩きつけた。
「ああああああああああああああああ!」
勝てない勝てない勝てない何が起こった何でこうなった一体俺が何をしたっていうんだ俺はただ必死に『人間』を守ろうとしただけじゃないかそのために化け物を犠牲にしようとしたんだ仕方ないじゃないか。
「あああ!!」
気が付くと俺は自分の首を絞めていた。息ができない。苦しい。意識が遠のく。死ぬのか? 嫌だ死にたくない。死にたくない死にたくない死にたくない。誰か助けてくれ。頼む周囲を見るが誰もいない目の前にはドラゴンがこちらを見ている見るな見るな見るな見ないでくれ。もう嫌だ。何でこんな目に遭うんだよ。俺が一体何をしたっていうんだちょっと異世界に行って姫を攫っただけじゃないかそれだけのことじゃないかなんでこんな目に遭わなくちゃいけないんだおかしいそんなの絶対おかしいだってそうだろ俺みたいな偉大で最強で唯一無二の存在であるバーフィー様がどうしてこんな化け物に殺されなくちゃならないんだ理不尽すぎるあまりにも酷過ぎるふざけんなふざけるな俺の思考を計画を世界を狂わせるな。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
ドラゴンが再び咆哮を上げるやめてくれその声を聞くと気が狂いそうになるやめろやめろやめろ俺はまた頭を地面に叩きつけた血が出る痛い痛い痛い痛いでもやめないやめられない。
「グアアアッ!」
さらにドラゴンが叫びをあげる駄目だ駄目だ駄目だ駄目だもう耐えられない耐えたくない何で耐えなきゃいけないんだ頭がおかしいおかしくなる俺は懐から剣を抜いたそしてそれを自分に向けた死ねばいい死んでしまえば全て終わりだ何もかも終わるそうすれば楽になるそうだそれが一番いいんだすぐにやるべきなんだ。
「ああもうこうすればいいんだろうそれでいいんだろう喜べよああ喜べよ!」
俺は剣を自分の喉元に突き刺した凄まじい痛みとともに鮮血が飛び散るああこれでいいやっと終われる俺は目を閉じたそして死んだ。
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