第30話
暖かな朝の光の感覚を肌に感じ、俺はゆっくりと目を開けた。
チェックのパジャマを着た、白い肌と赤い瞳の女の子、マーちゃんことマゼンタが至近距離でこちらをじっと見ていた。
「おはよ、マーちゃん」
「おはよう。ハヤト」
俺とマーちゃんがお互いの想いを確かめ合ったあの日から一週間。高校は夏休みを迎えていた。マーちゃんは昨日と同じように俺の言葉に満足そうに頷くと、クローゼットから着替えの服を取り出しててとてと洗面台へと向かって行った。
部屋と廊下を隔てているドアの向こうから水の流れる音が聞こえてくる。こんな事で興奮してどうする、と思いながらもどこかで興奮している自分がいることに気づいて自己嫌悪に陥る。いい加減に慣れろ。
「今日も出かけよう」
ドアが開いて胸元とか何やらが無防備なキャミソール姿のマーちゃんが俺に言った。
「どこ行く?」
「動物園に行くぞ」
「いいけど、なんで?」
「今なら勝てそうな気がするんだ」
「動物園ってそういうのじゃないんだけど……まあいいか」
そうして俺たちは、身支度をした後、久しぶりに動物園へと行く事にした。いや、付き合い始めてからは初めてか。という訳で俺とマーちゃんは市営地下鉄東西線の円山公園駅にやって来た。改札を抜けて、階段を上がり地上へと出ようとしたところでマーちゃんが誰かに首を掴まれた。
「何見てんだよ」
俺は何が起こったのか理解する前に、マーちゃんの首を掴んだ奴に殴られ、蹴られ、吹き飛ばされて意識を失った。
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