煙草
ピッピ
短編
無邪気に子供たちが遊んでいたとは思えない変わりようの夜の公園。どことなく寂しさを感じる。池の水面に映る月明かりはゆらゆらと揺れていた。煙草に火を灯した。ジリジリと燃えゆく煙草を片隅に呑気に天に昇っていく煙を見ていた。物思いにふけっていた。
月明かりもさなか、暗闇の中を照らす2つの煙草の炎だけが彼女を目視出来る手掛かりだった。そっと手が重なる。僕の指の間を縫うように君が指を絡めてくる。優しく暖かいその手からは彼女と過した今までの日々を思い出させる。顔を覗くと彼女ははにかんだ。無邪気なその笑顔に愛おしさが溢れた。思わず僕は抱きしめた。強く、そして優しく。彼女の心音が激しくなる。僕の心音も激しくなる。互いに共鳴して離さない、ボルテージのあがったドラマーのように2人は息が合わさる。彼女は僕の首筋に舌を這った。上に上になぞられていく。自分でも汗ばんでいるのがわかる。流れる汗一滴一滴が幸せを感じさせる。顎の下まで舌が這い彼女と目が合う。今度は君から。そう言わんばかりに彼女は目を閉じていた
ゆらゆらと揺れていたはずの煙草の煙はいつの間にか消えていた。過去の思い出は煙とともに消え去り、現実に戻った今虚無感に襲われる。明かりの消えた暗闇の中には手が届くことの無い、月の明かりが水面に揺れていた。そして気づく。彼女はもう僕の隣にいないのだと。
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