空腹は回復の泉で。~最強キャラでゲーム世界に転生しても食べ物ないとか詰んでません?~
御手々ぽんた@辺境の錬金術師コミック発売
第1話
一人でやるゲームは、気楽でいい。
今、はまっている、レベル制&スキル選択が出来て、スキル選択で上位職の選択肢が変わるオープンワールドのファンタジー系RPG。
レベルMAXで転生できるやつで、私は氷系魔術師と錬金術師を既に極め、三回目の転生キャラを、使っていた。
その日は、サービス残業という名の地獄を辛くも乗り越え、明日は休みだからゲームでもするかと、夕食もそこそこにスタンバイ。
順調に育ってきたなとキャラを眺めて、ほくそ笑みながらホームからイベントのフラグ回収のため始まりの町にテレポートした時だった。
急激な眠気が。
ヤバイ。
寝落ちすると思ったときには異常なほどの眠気にあがらえず意識を手放していた。
そして、次に気がつくと、周りに見えるのは瓦礫ばかり。
そして自分の体を見下ろすと見たことのないものを着ていた。
──あれ、確かついさっきまでいつものスエットを着てたよな。
改めて両手を持ち上げ自身の衣類を改める。うん、これはいわゆるローブというやつか……。
焦げ茶がかった生地に銀糸で星座の刺繍がされているローブ。よくよく見ていくと、さっきまでやっていたゲームのキャラの装備に似ているような。
もしかしてと思い、ステータスと念じる──。
はい、何も出ません。
ちょっと気落ちして自分の掌を見つめていると、次の瞬間、ゲームの時のようなアイコンが!?
思わずアイコンを注視すると、吹き出し状に広がりました。
そこに書かれていたのは自分のキャラ名、職業:ハイプリーストレベル436、SP、MPの4項目。
あれ、ここ、ゲームの中?
でもコマンドウィンドウは開けないし……。
──そうか、もしかしてこれは、錬金術師の時に獲得した鑑定スキルが発動しているのか!
それならと思い、魔術師時代に氷結魔法を覚える前に習得していた初級水魔法を唱える。
「いでよ、アクアドロップっ」
呪文の発動に合わせ、目の前に拳大の水塊が出現する。水塊はすぐに重力に引かれ、草の乱雑に生えた地面へと落下。水が跳ね返りローブの裾を濡らす。
でた──。本当にできた……。
両手を前に差しだし、手のひらの上に出現するよう意識して再び呪文を唱える。今度は、拳サイズの水塊が出現し、手のひらの上に落ちてくる。恐る恐る口をつけ、味を確認。ゆっくりと飲み込む。
味は普通の水だ。どちらかと言うと純水に近い味がする。美味しくは無いがこれで水の確保は大丈夫だな。
手のひらに溶け残った水も、しばらく消える気配はない。
ふむ、魔力とかで作り出されたってよりは空気中の水分を集めてるのかな。
水を捨て、手のひらを注視し自身のステータスを確認する。魔術師と錬金術師をマスターしたこのキャラクターのMPは膨大で、僅かながらMPが減少しているのが確認出来るが、それも見ているうちに最大MPまで回復する。
自動MP回復のスキルも発動しているみたいだな。水飲むくらいなら特にMP残量は気にしなくてよし、と。
次に氷結魔法を試す。初級中級はひととおり使えるな。これである程度の敵性存在がいても時間稼ぎくらいは大丈夫でしょ。え、上級以上は試さないかって。
上級以上は基本的に範囲魔法よりも影響の大きな広域魔法がほとんどで、まだあんまり目立ちたくないし、何よりも周りが凍りついたら寒いでしょ。
そろそろ周りの様子を探索しにいくかな。
まずは寝れるとこ、後は食べ物を重点的にっと。
そろそろと辺りを伺いつつ、探索のための一歩を踏み出した。
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