にーちゃん、聞いてくれ
紅月カナ太
「にーちゃん、聞いてくれ」
顔を両手で覆いながら呟く。
兄は何かあったであろう私を見ながら、ソファに寝そべり好物のカステラを口いっぱいに頬張っている。
兄は何も聞かずに「どんまい」と軽く返し、いくら待ってもそれ以上は何も言わない。
痺れを切らした私は荒ぶりながら嘆く。
「何があったのか聞いてよ!」
「何があった?」
「どうせ興味無いんでしょう!?」
「めんどくせぇな」
兄はカステラを食べながら話しているものだから、その咀嚼音が私を更に不快にさせた。
「あれは1時間前」
「話すのかよ」
「私はカステラが嫌いになりました」
「なんて事を言うんだ、妹よ」
「ご存知の通り、兄にカステラをパシらされた私は帰り道にカステラ強盗に遭いました」
「カステラは美味いからな」
感情的になりそうな自分を抑えて話を続ける。
「私はカステラ強盗犯を追いかけました。理由を知りたかったからです」
「カステラが美味いからだろう」
「犯人を縛り上げて知りました」
「相変わらずつえーな、俺の妹」
「理由は兄にカステラを入れるよう持たされたアタッシュケースが1億に見えたからです!」
「どんまい」
「何が!?」
私のやり場の無い怒りはにーちゃんに話したところでどうにもならない。
……うん、知ってた。
にーちゃん、聞いてくれ 紅月カナ太 @sigure-9k
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます