神様?・・・神様!

へろ。

神様・・・神様!

 公園のベンチで寝ているおじさんに350㎖缶のビールをお供えし、拝む青年。

 青年は数秒拝んだ後、立ち上がり歩き出す。


「ちょっと待ってくれよ、そこのあんちゃん」


「はい?」


「あんた、ここ一ヶ月半毎日俺んとこにビール置いて拝んでくけどさーどういうつもりだ?」


「え、だって、おじさん神様でしょ?」


「いやちげーけど」


「いやいや謙遜はいいですって」


「してねーよ、ばりばり人間だわ。つーか困るんだよな、ビール置いてかれてもさ」


「あ、もしかしてストゼロの方が良かったですか?」


「いやそういうアルコール度数の問題とかじゃなくて、俺さぁ飲めねぇーんだよ、酒」


「それは失礼しました。今まで何も言ってくれなかったから分からなくて」


「そりゃあなぁ。怖えーもんだって。毎日毎日よー、ビール置いちゃー拝まれて、ビール置いちゃー拝まれてってやられたら普通にビビるからね」


「……だって神様にお供えものをするのは普通の事だから」


「いやだから俺ただのホームレスだから。なんかしたっけ俺、お前に」


「いいえ」


「じゃあ、なんで俺が神様だとかいうわけ?」


「二ヶ月前に、おじさんこのベンチで菓子パンたべてましたよね?」


「いや、覚えてねーけど」


「菓子パン目当てに群がる鳩たちを尻目に、おじさんパンくず一つ落とさずに食べきっていたのを見て」


「いや意味分かんねーよ。どうやったらそれで俺が神になんだよ」


「まだ続きがあるんです」


「なんだよ早く言えよ」


「それで、僕だって最初は別に思いませんでしたよ、おじさんが神様だなんて。それどころか、コイツ鳩より生きるのに必死じゃんって、ちょっと草葉の陰で嘲笑ってました」


「とんでもなく失礼な奴だなッ」


「でも、それからおじさんの事が頭から離れなくなっちゃって。ほら、その翌週、結構大きめな台風来たでしょ?」


「あれは大変だったよ、ほんと。公衆便所で一夜明かすのはきついから」


「公衆便所にいたんですか。頭良いですね。」


「頭良かったら家持ってんだよッ。それでなんだよ、あの台風が」


「僕は家にいたんですけど、ずっとおじさんのことが心配で心配で。ずぶ濡れになってやしないか。とか、もしかしたら飛んできた看板かなにかに当たって死んでしまったじゃないか?とか。もう僕は気が気でなくて……」


「うん。分かった。それあれだ、親に内緒で野良犬の面倒見てる子供の心理だろ?」


「違いますッ。そんな犬っころとおじさんを一緒にしないでください!」


「いや、お前がなッ。お前が俺を犬っころ扱いしてるんだよッ。つーか、こえぇーよ、いきなり大きい声出すなよ。」


「すいません、ついかっとなって」


「それ、人殺した奴の供述でしか聞いたことねーからな」


「でも!本当にあの菓子パンの一件以来僕はおじさんのことしか考えられなくなっちゃって。それで一ヶ月半前、急に思ったんです。こんなにおじさんのことが頭から離れないのは、もしかして神様だからじゃね?って」


「意味分かんねーよ。どうなってんだよ、お前の頭」


「おじさんこそどうなってるんですか。なんで神様じゃないんですかッ?」


「だからやめろって本当に。自分ルール押しつけられても他人は困るだけなんだって」


「自分ルールじゃないッ世界の理だッ」


「お前みたいな奴が変な宗教つくんのかなッ?」


「なに言ってるんですか?」


「お前がだよッ。とにかくもういらねーから、酒は」


「は、はぁ。」


「なんだその……できれば、ほら、食べ物とかよー、タバコとかなら助かるんだけどな!」


「え、なに言ってるんですか?」


「いやだからほら……なぁ、分かるだろ?ビールの代わりにって」


「いやもう来ませんけど」


「え、なんで?急にどうした?」


「だっておじさん、神様じゃないんでしょ?」


「……神様だよ!」

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神様?・・・神様! へろ。 @herookaherosuke

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