進め!玩具隊

凛陰

第1話 進め!玩具隊 事件前編

一人の女の子が、寝室でぬいぐるみと遊んでました。名前は、ゆゆちゃんといいます。

小学五年生の小さい子です。

「きゅらじろう、今日は何をして遊ぶ?」

きゅらじろうというのは、ごくふつうの熊のぬいぐるみのことです。頭のところには赤いリボンがつけられています。

「じゃあ、一緒に絵本を読もうか」

言ってるのはゆゆちゃんなのだが、彼女の設定では、きゅらじろうが言っています。 

「きゅらじろう、何を読む?」

「君の好きなのでいいよ、僕はゆゆちゃんといるだけで、充分だぜ」

「もう、きゅらじろうたら~、照れるじゃない。じゃあ、かぐや姫を読みましょう」

彼女が本棚から、かぐや姫を取り出す。

「竹取物語か、まあ悪くないチョイスだ」

それから、ゆゆちゃんときゅらじろうは一緒にかぐや姫を読んで、一緒に寝ました。


それから月日が経ち、ゆゆちゃんは成人になりました。

ゆゆちゃんは小さいころと違って、背も伸び、大人らしい印象になりました。

成人になった彼女は、自分の部屋の押し入れを整理することにしました。

整理をしていくうちにだんだん奥の物も見えてくるようになりました。

そしてその奥にはおもちゃ箱と汚い字で書かれた、木箱がありました

中には、女の子の人形やマクドのハッピーセットなどが入っていました。

「わー、懐かしい」

ゆゆちゃんは一つ一つ、おもちゃを手にとって、ありがとうと言い、半透明のごみ袋に入れていきました。

木箱の整理が終わった後、ゆゆちゃんは、もう一つ奥に置いてあったダンボールを取りました。そして、そのダンボールには、きゅらじろうの家と書かれていました。

ゆゆちゃんはダンボールからきゅらじろうを取り出し、ぎゅっと抱きしめ、

「ありがとう、きゅらじろう」

そういって、きゅらじろうも一緒に半透明の袋へと入れた。

彼女はもう大人だ、だから子供の時に使っていた玩具の思い出なんてもうほとんど覚えていない。

もちろん、きゅらじろうの思い出も...。

では、おもちゃはどうだろうか。おもちゃは彼女と遊んだ思い出を覚えているのだろうか、一回じっくり考えてほしい。



「我の名は玩具隊副隊長、煌雨 京きらさめ きょう。玩具を愛し続けた男だ、どうだ、今日も決まっただろうハニー!?」

この人は煌雨 京、玩具隊の副隊長で中学の時の病がまだ残っている、残念な先輩だ。

意外に容姿はそこそこイケてるのだが、いかにも中二病て感じがするカラコンを付けていて、それが非常に残念だ。


「あー始まった京イキリタイム。このセリフもう百回くらい聞いた気がしますよ」

この人は、神楽 志乃かぐら しの、ダイソーで売ってそうな眼鏡をかけていて、ショートカットの茶髪だ。玩具隊雄一の紅一点で、この人はとにかくBLが好きで、京先輩との同期だ。まあ一言で表すと腐女子だ。


「イキって何が悪い、イキるとなんだか力が湧いてくるんだよ!」

「お前がイキると気持ち悪いんだよ!イキってかっこいいのは高梨先輩くらいしかいねえんだよ!」

「高梨先輩て誰だよ、もしかしてB...」

「これ以上言ったら殺すよ」

「やー、怖い怖い、本当、BL好きはすぐそんなこと...」

志乃先輩が京先輩のみぞおちをついた。

京先輩は倒れ、うずくまった。

しかし、数秒後にはピンピンになっていた。


京先輩てもしかしてM?と思っていた僕、宇城島 世界うきしま ロマン。友達の少なさ以外は普通の社会人だ。そしてこちらは、同期の 彼方 光かなた こう。白髪のチビだ。可愛い容姿から、高校の時クラスでは人気者だった。そして、俺のことは察してくれ。光とは高校の同級生で、一緒に廊下に立たされたり、校長室に呼ばれたりと嫌な思い出はすぐに思い出すのだが、嬉しい思い出はあまり…。


そして、僕たちは先輩達のカオスな光景をぼー…。と見ていた。

「おい、お前達、さっさと勉強会始めるぞ、席に座れ」

今、ドアを開けて入ってきたのは、玩具隊、隊長の盛岡 武もりおか たける

とても体がゴツくとても怖い人だ。

そして僕達、五人合わせて玩具隊だ。

そしてこの玩具隊は最近出来たのでまだ人は少ないのだ。


「では、今から第二回勉強会を開始する」

『はい』

「では、前の学習の復習からいこう。志乃、玩具隊の目的を三つ言ってくれ」

「はい」

と答えて、志乃先輩は席から立ち上がった。

「まず一つ目は玩具の暴走をとめる。

二つ目は、玩具が悔いの無いよう、暴走をとめたら優しく接して楽に成仏させる。

そして三つ目は、世界中の漫画をBLに変えること」

「一つ目と二つ目はそうだったな、でも三つ目は断じて違う。よし、志乃。この勉強会が終わったら後で俺のところに来い」

「はい、すいません」

そう言い、志乃先輩は涙目で座った。

それを見た京先輩は、ざまあみろという目で、志乃先輩を見ていた。

「では京、お前なら分かるな」

「はい、三つ目、それは全国民の女性を支配すること!」

辺りが静まり返った。

そして僕は鳥肌が立った。

京先輩もやっちまたなぁと思ったのか、さっきの言葉を訂正した

「すいませんでした。気を取り直して、三つ目、それは玩具と人間が仲良く平和に暮らせる国にすること」

「そうだったな京、お前も後で俺のところに来い」

「はい」

そう言い、京先輩は涙目で座った。

それを、志乃先輩は、ざまあみろという目で見ていた。

それを見た隊長はため息をついた。



ゆゆちゃんと友達は、水族館に行く約束をしてました。

「お待たせユユッチ!」

ユユッチというのはゆゆちゃんのことです。

「遅いよマナッチ」

マナッチというのはゆゆちゃんのお友達です。

「今、何時?」

ゆゆちゃんは時計を見る。

「今は八時四十五分かな」 

「えっ!うそ!早くいかないと」

そう言い、マナッチはゆゆちゃんの手を掴み走り出そうとする。

それをゆゆちゃんは止めて、

「マナッチ、さすがに連絡なしに三十分待つのはつらかったよ」

と、注意をした。

「ごめん、ごめん。今度からは気をつけるよ」

ゆゆちゃんはため息をついた。

「じゃあ早く行くよ、お客さんが少ないうちに入らないとゆっくり魚が見られないから」

「うん、分かってる。よし、行こう」

ゆゆちゃんと友達は水族館まで走っていきました。すると、とてつもなく大きな玩具と出会いました。

「ひっ!ユユッチ早く逃げよ!殺されちゃうよ」

しかし、ゆゆちゃんは固まったままじー…と玩具の方を見つめていた。

そして、ゆゆちゃんは玩具の方に向かって

「きゅらじ...ろう?」

とボソッと言った。



ちなみに、この事件が起こる前日、玩具隊では、

「よし、今回の勉強会は以上だ」

ぐががが~、ぐ~ 

「おい、世界、隣のやつ起こせ」

仕方ないので僕は光の大事な部分を殴りました。

「いって、何すんだよ」

「お前が寝てるからだろ、光」  

隊長の顔ははんにゃのようになってた。

「ひっ!盛岡その顔止めろ、オシッコちびっるぞ」

「呼び捨てとは、いい度胸だな」

「ひっ!」

「まあ、光、次からは眠るなよ。仏の顔は三度までて言うしな、今回は許してあげるよ」

光は人生終わったような顔から、ほっとした顔になった。 

「では、今回は解散。各自仕事だ!」

『はい!』


玩具。それはおもちゃの感情である。玩具が暴走してしまったら、おもちゃは人間へ復讐心を抱き、世界を征服しようとする。そして、玩具が壊れてしまったものは、おもちゃごと壊れ、破裂する。

これが今回の授業で習ったことだ。


志乃と京は隊長に呼び出されたので、しかななく隊長の部屋に行くことにした。

「あーあ、何が仏だ、あれは悪魔だよ、悪魔」

「まあまあ、落ち着いて」

コンコン。

隊長に呼ばれた志乃と京はいやいや隊長の部屋の扉をノックする。

「どうぞ」

恐る恐る志乃達は入る。

「まあ、座りな」

「はい...」

そして、隊長はにっこり笑って、

「今日はお前らにとっておきのをプレゼントしよう」

「なんですか、わくわく」

つい、志乃は声に出てしまった。 

「これだ!」

「え...」

志乃達の目は点になった。

なんと渡したのは、カブトムシとクワガタムシだった。

「ちょ、隊長、私たちが虫嫌いてことご存じですか?」

「あーもちろん知ってる。だから今回はロボットだ」

「ロボットといっても、この肌、そしてこの柔らかさは本物そっくりじゃありません」

「まあ、とにかくクワガタが志乃、カブトムシが京だ。大事に使えよ」

「値段は...」

「アマゾンでワンコインだ」

「安すぎだろ...」

がっかりしながら志乃達は出て行った。

そして、オフィスへと入る。

「どうでした、隊長の説教は」

光が、志乃達に聞く。

「説教というよりかは、虫をもらった」

「まあ、乙ですね」

「だよね、言うと思った」

志乃達は席に着いて仕事を始めた。



虫が仲間に加わった志乃は、クワガタとBLをそこらへんにポン!と置いていた。

「あー、この作業キッツ」

作業というのは、単なる事務作業。

ふっと横を見るとクワガタが、置いてあったBLを自分のハサミを利用して頑張ってめくろうとしている。

「もう少しだ、頑張れクワガタ!」

クワガタは最後の力を振り絞って見事ページをめくることに成功した。

そしてそのページにはこんなことが書いてあった。


「もう、出していいよな」

「いいよ、いっぱい僕のところに出して、アーーーーン」


それを見た志乃は飲んでいた、コーヒーをぶって吹いた。

「まさか、クライマックスシーンをめくるとは...」

そう言い、志乃はすぐにそのページを閉じた。

そしてこれからはちゃんと虫かごに入れようと思った志乃であった。


一方、京の方というと、

「あー、ものすごく背中がこしょばい まさか、カブトムシが俺の背中に入るなんて、どんだけ活発なんだこのカブトムシはよう」

そのとき、カブトムシが背中から滑って落ちてしまった。

「いって!カブトムシの足の節が背中にかかれて、痛い」

カブトムシは滑った後、京の背中から出て、そこらへんに飛んでいってしまった。

「なんと無責任なやつだ、この俺に傷一つつけるとは、許せん、奴はこれから刑務所いきだ!」

刑務所、正確に言えば虫かごのことなのだが、今回はちょっとイキらせてくれ。

帰宅後、恐る恐る鏡で背中を見ていたら、きれいにカブトムシが滑った後が残っていた。

「これは、まさにアートだ!」

そういって自分を慰めていた京であった。


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