外国人が200人引っ越してきた、どうする?

tamatamaki

第1話

  あと3年で売れなければ、団地を取り壊します、説明会をしたいのですが。

それからあっという間に、2年過ぎて。

 (入札の二回目でやっと売れました、ご迷惑をお掛けしました。

 民間にです。現在住んでいる住民は、10年間は現状でいいとの条件付きです。)

手紙一通だけの報告だった。条件を勝ち取ってやった、すごいだろう、と書いてる気がする。

住民全員、絶対売れないと思ってた。

小割はしないで全部まとめて、その上法人にだけ売る。

それが条件だったから、売れるわけないと考えるのは当然だと思う。

ファンドに、とかいってた。西日本と東日本、西日本から売れた。全部で何百億円だそうだ。

新しいところでも30年以上経過してる団地だし、配管の老朽化、雨漏りも多い。

更地にするのにも莫大なお金がいるだろうし、団地の住民も少なくなっている、

こんな現状では、間違いなく採算も取れないだろう。

団地は、売れないと勝手に考え、住民の80%があわてて引っ越した。

あわてた理由は子供のためで、学校の学区が変わるのが嫌だったせい。

近所に早く越さねば、学区内のアパートがなくなってしまうからだった。

私は長い間世話人をしていた関係で、最後の住人が引っ越してから引っ越ししようと思っていた。

お年寄とか、一人暮らしとか、家族に問題あるとかいろいろな理由があって、

大変になりそうな引っ越しの手伝いくらい、しなきゃと思っていたからだ。

心の準備は既にできていたので、売れたと聞いてにびっくりした。

買うメリットなんかあるのか?鉄筋だが後何年持つんだろう?

配管は限界も近いぞ。

投資金が余りにも高額で、採算なんかとれるのか?

買った会社は、社長がアメリカ人らしい、きっとハゲタカだ。

テレビで見たことあるもの。

それならば納得できる。テレビじゃすごいやり手だったもの。

考えるに、きっと更地にして土地だけ売って、採算が取れるとの計算だな。

東京とか大都市だけじゃないんだ。こんな所にも、やっとハゲタカかー。

すぐ取り壊すから出ていけって、地上げ屋が何人も来るかも。

一万円札で頬っぺた殴られることなんかもあるかもな。これもテレビでやってた。

住民運動なんかもしてたぞ、妙に楽しくなってきた。

この土地じゃ、ただ働くだけで何も刺激がないもの。どんな想像でも私の勝手だ。

今住んでいる団地は、2棟で60世帯が入れる普通の小型団地、

3DKの家族向けだ。

みんな出て行って、最終的に14世帯しか入居者がいなくなってしまったので、

幽霊団地みたいになってた。

空き部屋に住み着いてるハトも、住民に加えようか、みんなで冗談で話してた。

近くの新築アパートもあきが多いみたいだし、

古い団地は新入居者なんていないと思う。

地区の地主が相続税対策とかで、あっという間に綺麗なアパートが周りに増えちゃった。その綺麗なアパート空いてるみたい。

自分のところは棚に上げて、地主さんどうするんだろ?勝手に心配してる。

綺麗なそっちが満杯にならないと、住民うちまで回ってこないじゃないか。

このままじゃ、近所の地主さん商売にならないんじゃないかな?

団地住民のハトだけど、回しましょうか。

色々なからくりがあって、空きアパートでも安心らしいって聞いたことあるけどけど、

うちみたいな幽霊アパートが増えちゃったら、大変ですよ。夜なんかとても怖いですよ。

女性や小さい子供がいるところから、すぐ引っ越していきますよ。

一緒に遊ぶ子いないし、井戸端会議出来なくなって、ストレスたまるからでしょうね。

私、のんびりしてるでしょ。他人事でしょ。ここなんにも刺激ないもの。

幽霊団地の住民ってこんなもんです。島流しみたいなもんですよ。

さあ、どの日本人も経験したことのない、毎日途方に暮れる出来事が始まりますよ。


   外国人経営者との共生、できるの、できないの?

クラゲみたいに、何も考えずに浮かんでたら、何故か巻き込まれてた。

住んでる団地の土地ごと、聞いたことない会社に入札で安く売られた。これも赤字じゃ仕方ないか。

社長がいきなり外国人。ファンドとか言う会社、わけわからん。グルっても何もでてこない。

時代が変わったのに、住民は対応できてない。マゴマゴしてるだけ。

気付いたら、外国人社長と共生?することになった。

これって、日本の土地、住宅、領土として取られてるんじゃないよね。違うよね。

中にいるから分かること、困ること、世間と違ってるなと思うことあります。

共生で本当に起きること、起きたこと、事実だけ書きます。


   こりゃ日本中も大変だ

14世帯での生活は、気心も知れているせいか快適だった。

30年以上住んでたので、他家族とも仲良くしてもらってた。

日本人9世帯、ペルー人4世帯、ブラジル人1世帯。子育ても終わり、生活も安定してるみたい。

そこに急に工事業者が入ってきた。空き部屋の雨漏りでも修理するのかなと思ってた。

(リフォーム業者だよ。本部直接の業者なのでよくわからない。)管理人も初めは首傾げてた。

一軒終わって、すぐ次の一軒に移動してる。終わったところに違う業者が入り、違う作業。

数日後、団地の掲示板に、(リフォームで迷惑かけます)の表示。

下に部屋番号がでてる。すごい数の部屋番号、何が起きてるのか理解できない。

今までの状況じゃありえない。外装だけでもやったら、とは思ってたけど。

ダメですよ、このままじゃ転入者いないって、絶対損しますよ。ハトも怒りますって。

そしたら、あっという間の短期間で業者は帰っていった。

業者、他地区から来たって言ってた。近くのホテルから通ってた。

私、この時何が起きるのか理解できてなかった。島流し中だったからかな。

それがなんと、驚くことに、ビックリすることに、

次々と団地に新入居者が45世帯以上入ってきた。

総勢200人以上、週末になると引っ越しの車が団地内を走りまわる。

リフォーム業者が造った部屋は、外国人仕様の部屋。

畳の3部屋無くなった。全部靴で部屋に入れるみたい。

古い部屋が、驚くほど綺麗に変化してる。リフォームってすごいですよ。

ふすまなんか板張りにされてる、または無造作に玄関わきの空き地に捨てられてる。

日本家屋が捨てられてる、そんな気がした。

日本中こんなリホームされたら、ビックリするでしょうね。

旧住民はそのままだったのでうらやましい限り。今風に、色々設備もついてる。

グレードもあるみたい。部屋代が違うので分かった。どう違うんだろう?

それが敷金無し、礼金とか手数料も無し。保証人も要らない。

部屋代も入ってから1、2か月少ないみたい。動物も申告すればいい。

アパートが空いていて、困ってる家主さんもいるのに、こりゃ来るわ。

急に湧いてきたみたいに、新住民が押し寄せてきた感じ。この町、そんなに人口いたか?

この団地、お金なくても入れるもの。これ、腕ずくって言うんじゃないか。

引っ越してくるの綺麗な部屋だもの。ふすま、畳ないもの。日本人仕様無くなったもの。

考え方がいかにもアメリカ的というか、日本人の発想じゃないな。

あっという間に申し込み待ちできたって。外国人ばかりだって。なんてこった。


一家族ごとにかならず不動産屋がついてくる。

管理人が契約したり部屋を案内したり、忙しそう。

不動産屋が、家族に色々説明したりしてる、おとなしそうな家族じゃないか。

全員あまり話さないで黙って聞いてる。家族全員、新居の契約で緊張してるのかな。

ん!私の違和感が勘に触ったぞ。不動産屋に妙な違和感あったぞ。

こりゃ相談、説明だけじゃないぞ。完全に不動産屋が外国人借主に通訳してる。

外国人だからか不動産屋も外国人。

日本語はペラペラ。日本語の文書とか、説明してる。

私は最初に、共同部分の説明文とかゴミの収集カレンダーとか配布してる。

不動産屋がいるうちに持っていってたせいか、配布物をまた通訳してる。

(入居者は日本語がすこしは分かるの?)と聞いてみた。

当然だとばかりに不動産屋の説明は、

(家族全員分かりませんよ。こうして話してるのも分からないはずです。

だからこうして密着してる。

言葉が分からない外国人を、受け入れるところが少ないので、

どうしてもここに集中しますよね。)とさ。

45世帯中43世帯が、家族全員だれも日本語話せなかった。

どうりで不動産屋だけが目立つわけだ。おとなしそうじゃなくて、

分からないんだ。

不動産屋帰ったらどうするの。家族全員話せないって、その後、どうするの?

日本語が分からない外国人ばかり集中するなんて、夢だ、ありえない、

現実じゃない。

私、見て見ないふりしよう。こんなこと旧住民に説明できない。

知らなかったことにしよう。


25年前くらいに来た外国人は、2世、3世で能力も高かった。

日本語は分かったし、交流に苦労した経験はない。

(前の仕事は何してたの?)学校の先生、歯医者、商売してた、

軍隊にいたってのもいたな。

食べていけないから来た。犯罪が多いから、自分の国だけど嫌になった、

景気も悪いし。

色々、当時はこんな話してた。

年月が過ぎて、段々3世が多くなり、そいつらが沢山働きに来るたびに、

入国審査も緩くなるのか、

(そんなことないか?審査官の皆さん偏見で、すいません。)

日本語が、全く分からない外国人が増えてきた。

そいつら本当に何も通じませんから。

外国人、みんな働き盛りの年齢なので、慣れてくればどうしても

家族全員日本に呼びたがる。

日本で生活する外国人は、労働者だけという考え方はやめたほうがいい。

奥さんもいれば子供もいるし、下手すれば年取った親もいれば親戚、

友達まで一緒に住んでる。

日系が1人いれば、外国人が大勢ついてる。

こんなのに日本語なんか、分かるわけない。

年取った親とか、学校行ってる子供は、明らかに労働者じゃない。

ねー、外国人は労働者って、考え方違うでしょ。

最初は労働者だけを必要という目論見も、

グレーゾーンがあればすぐ突破されますよ。

最初はおとなしく顔見てて、グレーゾーン見つけると、

奥さんと子供すぐきますから。

日本国中私みたいに、大家族に呆然として、

口開けて子供のサッカー見てますから。

軍隊もある し、機関銃で強盗する国から来てる。

ブラジルでお店してた奥さん、黙って強盗にお金全部差し出したって。

3回もはいられた、もういやだ、こんな国にもう帰らないって。

日本人は親切で優しいから、来てくれてありがとう、ぐらいに思ってる。

観光客ならすぐ帰るけど、こいつら帰らないからね。日本で生きていこうとしてる。

マジで、こういうの移民っていうんじゃないかな。


 共生、できるの、できないの?

最初のうちは、外国人から話しかけてくることはまずありません。

ずっと交流できないこともあります。犯罪が多い国から来てる場合はなおさらです。

観光客とか、日本語が話せるとかは別ですが。

話したことない外国人、困った時だけ相談にきます。こじれてから。

解決してあげると恩にきるだろう、と考えるのは日本人だけ。優しいからでしょう。

外国人大概すぐに忘れてます。差別じゃありません、国柄です。

日本人と明らかに違います。

共生って、対等を意識しないと出来ないと思いませんか。

差別しちゃ駄目ですよ。人類みな同じ、少々のことはこだわらないで。

ブラジル人の子、いつもサッカーしてます。疲れをしらない子供は、どこでも同じ。

小さい小学生、目の前でボール蹴ってます。私ビックリした。

子供の距離じゃないだろう、こんな長い距離、ボール蹴って。

こりゃー勝てないわ。対等じゃないもの。

日本人の子、ほとんどボール上に上がらないもの。

ボールにカーブかけるな、むこうでやれ!

共生なんか無理。おまえら日本人の子にボールぶつけるなよ、ケガさせるなよ。


    防災訓練 

この項目が外国人との共生化で一番説明しやすい。

言葉が分からないのに不安だから、防災訓練は出てくる。交友のチャンスです。

この団地だけでやる夜間の防災訓練。19時に防災無線の放送あり。

津波くるぞ、地震くるぞ、これは訓練ですよ!

この地区、訓練が一年に3回もある。他地方の災害があるとすぐ増えた。

これじゃ、キリがないと思いませんか。訓練、まとめてできないのかな。

ヘルメットかぶって、私はいつも旗もって、団地の入口に立つ。

役員が2、3人出てきて世間話。

(今年も誰も出てこないね。食事時だし毎回じゃ飽きるよね。)

今まではこれで終了。たまに猫が歩いて通るだけっていうこともあった。

お待たせしました。今年の防災訓練大変だった。

出てきたのは4人家族。みんなで買い物でも行くのかな、

と思ったら近ずいてきた。

スマホで(家族で防災訓練にきた。)役員全員慌てた。

どうすりゃいいんだ。何も準備してないぞ。

しばらくやってないから、何すりゃいいか思い出せない。

そうか、今年は別だった!

とりあえず集会場へ案内。そこで驚いたなんてもんじゃない。

集会場の前に集団。50人以上いる。大人小人、男女さまざま。

そういえば新入居者が、ブラジルに地震はないって言ってた。みんな不安なんだな。

一人でいいのに、家族全員出てきたところもいる。

しかも徐々に増えてく。どうしよう。

今までは学生が、学校に出す書類にハンコがいるから仕方なく来てた。

女の子が多かった。今日の訓練出る?ってメール回すから、

女の子暇つぶしにブラブラ。

仕方ないので、集会場で床に敷いた段ボールの上に、

カーペット敷いて避難所造り。

(こうすると体、楽でしょ。段ボールで壁も作ってください。)

避難食の缶開けて、ランプの電池の確認して点灯、暗い中、試食会。

小さい時から知ってるから、こいつら言うこと聞かないし、とにかくうるさい。

他地区の防災訓練終わった子に、飴あるよ、お菓子あるよ、

ジュースも色々あるよ、みんなもいるよ、ってメールして、呼び寄せてる。

こいつら集会場の冷蔵庫に何入ってるか、よく知ってる。根こそぎ食べて飲んでく。

ポテトチップスなんか、袋の底の小さいのも指舐めて食べてく。

いつまでも底なしで食べてる。

ラップ、ぐるぐる足に巻いて、これ痩せるよ。

みんなで使うな!防災用品だぞ、なくなるから。

防災訓練、もう終わったから帰れって言っても、もう少し、

っていつまでも帰らない。

女の子だから、放りっぱなしっていうわけにはいかないし、

ああ、それから10年か。

防災訓練に、いい思い出ないので、やりたくないと思ってた。


今回は外国人ばかりだ。

集会場にみんな入れて、説明しようと顔見たら、言葉が分からないやつばかり。

日本語分かるの来てない。みんなこっち見てる、しかたない、オラー!

みんなを連れて棟の玄関前に案内、いきなり全部の街路灯の電気消してやった。

ワーっていう声。小さい子もいた。かなり団地全体が暗くなった。

階段を上って団地の一番上まで。5階まで上るのは大変だ。

津波の時は上に逃げる。想定の高さは3階くらいまで。

さあ、すでに停電してるよ。暗いので、前を向いて階段を下りない。

手すりを掴んで、後ろ向きでゆっくり降りる。

地震の時、団地は5階建てなので上の方ほど、長く大きく揺れる。だからゆっくり。

小さい女の子、キャーって。見えないから、お父さんに怖いって言ってる。

私、ほくそ笑む。

ここは避難指定ビル、みんな来る。助け合って災害に立ち向かいましょう。

団地の住民じゃないから来るなとか、絶対言わないで下さいよ。

次は水、高い建物は、水のタンクは建物の上にあるか、

下からポンプで上げるかです。

この団地は下にあります。集会場の横の建物に貯蔵してます。

停電になると水はすぐ止まります。電動ポンプで上に上げてるからです。

お風呂の水は、なるべくためておくようにしてください。

こんな説明、日本語じゃ伝わらないか。

ここまで身振り手振り、ポカーンとした顔してるやつもいる。もういやだ!

ようやく、みんなを連れて集会場に帰る。

いた! 来てくれた。日本語話せる小学生。

よかった、呼んでくれたんだ。

通訳がいれば何のことはない。

難しい言葉は使わないように、最小限度だが説明する。

次々と、みんな小学生に質問。小学生、ヒーローみたいでかっこよかった。

だけど、時間のかかること。単純に倍、いやそれ以上の時間がかかってる。

あれ、この感覚と空気感はどっかで?同じじゃないか、雰囲気が!

もっとここにいたい、帰りたくない。あの帰らなかった 、

女子中、高生と全く同じだ。

外国人は、質問攻めでいつまでも帰らない。通訳付くから時間が倍かかる。

防災訓練終わったから帰れよ!終了、 終了。

小学生、通訳しなかった。そんなこと言えないって。


共生、できるの、できないの?

地区の全体訓練でも、災害のある国ない国、

どちらの外国人も防災訓練に興味深々。

言葉が分からないのに来るなよ、とは言えず通訳は必要だし段取が大変。

またうちの外国人だぞ。積極的に前に出てる。

リヤカー引いたり、消防のホース持ったりしてる。

時間ばかりかかるし、他地区の日本人が私をにらんでる。

遊んでるみたいに見えるらしい。

外国人が防災訓練にこんなに興味持つなんて知らなかった。

でも私、外国人のリーダーじゃないんですけど。

うちの外国人、積極的で困ってるんですけど。


  野に放たれた

大変なことになった。名簿を出せと言ったのに、名簿が集まらない。

だから子供が何人いるか、全く分からない。

団地のブランコも、滑り台も、砂場も広場は子供で満杯。

中央の公園で遊んでる子供は、走ってるので勘定できないくらいいる。

みんなでゴールつくって、サッカーまでやってる。

今まで10年間位、子供なんか見たことない。

女の子が今年中学生になるが、一人だけいた。

その子、一人じゃつまらないのか、

公園で遊ぶ子なんか、しばらく見たことなかった。

団地から出ちゃだめだぞ、道に出るなよ、惹かれるぞ!

その中学生の女の子に言われた。この子ら全員日本語わからないよ。

砂場で遊ぶ小さい子も入れると、2~30人以上遊んでるぞ。

キャキャ、大声出して遊んでる。

そういえば何となく、イントネーションが違うなとは思った。

車が通るから道に出るな。裸足で走るな。

小さい子がいるからサッカーのボール強く蹴るな。

他の女の子に砂かけちゃだめ。男の子、ブランコ大きく揺らすな。

みんなキョトンとしてる。

小さい女の子が泣きながら母親のところに。

私が怒るので、女の子に嫌われたようだ。大変なことになった。

母親がにらんでる、どうしよう。そこで考えて、飴とお菓子作戦決行。

子供って素直だからすぐ仲良くなれるぞ。よし、たくさん配ろう。

待てよ、大阪のおばちゃんってそういう事なのか。

言葉なんて必要なく仲良くなれるものな。飴ちゃん食べなで、すむもの。

団地の砂場は長い事、誰も遊んでなかったから草が生えてた。

小さい子、生えてない隅のほうの砂場だけ使って遊んでる。砂場でも草生えるんだ。

暑い日中、スコップ持って、軍手して、ゴミ袋も持って砂場の草取り。

小さい女の子の指なんか傷つけたら、また泣かれるし、砂場全体を使ってほしい。

砂場の草は、ほとんどが蔓。まわりの草が根をはって伸びてる。

それを切りながらひっぱる。

普通の草取りとは違って力がいる。

小さい砂場なのに、草取りで3時間くらいかかった。

上のベランダから、こいつ何やってるんだろうとみていて、

自分の子供のためなのかと分かったのか、手伝いましょうか?

(終わってから来るな!)


 この団地の子供はブラジル人学校と、地区の小学校とに分かれてるらしい。

ブラジル人学校は門の前にマイクロバスが来る。毎日おかあさんと待ってる。

わたしゴミ捨てにいって、それ見てた。

地区の小学生はランドセルしょって歩いてる。緩い集団になってる。

可愛いな。大事にしなきゃ。子供はみんな同じだ。

ランドセルが大きくて、後ろに倒れそう。

親が付き添ってる子もいる、やっぱりかわいいな。

サッカー軍団もランドセル背負って仲間で一緒だ。

ん、小学校!小学校って日本の?こいつら全員、日本語分からないぞ?

団地の子は全員日本語話せないって、中学生の女の子言ってたぞ。

ダメだろう。小学校になんか行けないだろう。学校も困るだろう。

近くの日本人の小学生に聞いてみた。

ああ、あの子たちね。授業中も廊下ブラブラしてるよ。

先生も困ってるみたい。すごいよ。

そうだろうな。こんなの沢山学校に来られたら、日本中の先生発狂するかも。


 この中だけで済まない

困るのは押し付けられてる、私だけじゃない。

地域のみんなが、困ってるんじゃないかな。想像すると困ってる様子がおもしろい。

登校時の見守りが、おはようって声かけても無視だもんな。

おじさん、嫌われたと思うよな。

登校時の一団が、全員日本語が分からないって、信じられないだろうな。

経験ないものな。

地域のみなさん、少しは私の苦労分かってくれるかな。

でも小さい子、一年くらいで日本語少し理解しますよ。

何とかなります。一年位いや、もしかして3年位かかるかもな。

なにせ、家庭で日本語教えられないもの。テレビも日本語じゃなかったし。


  電話代がどうしてかかる?

何回目かに入ったリホーム業者は最悪だった。

色々な業者が入って、部屋のリフォームをする。床を剝がしてフローリング工事。

壁の塗り替え、風呂釜の交換、備品など全て外国人仕様、

畳の部屋は全て無くなった。  

築35年の古い団地の部屋は見事にリニューアル。

凄い、綺麗、電化製品と家具までついてる。

大阪の業者が元締め。団地の玄関前は取り壊した廃材、廃品の山。

すごい、ここまでやるんだ。リホームっていいな。私も最初はそう思ってた。

旧住民は、畳だけでも交換してくれないかな、30年以上たってるし。

床が長年の使用できしむとか、雨漏りがする、

トイレの換気扇が回らなくなって5年たつ。

台所の換気扇が音がするとか、文句たらたら。

これだけ差があると反感もでるよな。同じ建物内だもの。

部屋代30年払ってきたのにって。

リホームが終わったら新住民すぐ引っ越ししてきた。

旧住民いらっしゃい、何かあったら言ってくださいね。

私たち幽霊団地で苦労したもの。

旧住民、日本語分からないのどのくらいいるのかピンときてない。私黙ってたから。


その日の夜、ピンポン、ピンポン。我が家のチャイムが鳴った。

スマホを耳に当てて、新入居者家族が4人立ってる。

そのスマホを私に渡して電話に出てくれという。日本語が話せる友人らしい。

トイレのタンクの下から水がでてる。床が水浸しだ、とのこと。

家族4人とは、小さい子供が2人、奥さんと旦那。心配そうにこっちを見てる。

何かあったら言ってください。

余計なこと言ったと、私その時は気が付かなかった。

水が漏れっぱなしとのことなので、階段を下りて隣の棟へ。

また階段を上がって部屋の中へ。

トイレのタンクの下へ潜って見てみた。配管とタンクの間から水漏れしてる。

わたしの携帯で管理人に連絡。対応を協議。明日、朝に業者をよこす。

管理人が1週間に1回くるだけなので、毎回こんな対応。

わたし、すっかりベテランだ。

通訳に、相手のスマホで協議内容を連絡。

あれ、スマホは2台いるぞ、両方使ってるもの。2台必要なんだ!

元栓を締めなきゃ。マイナスドライバーが無いとのことで階段を下りて上がって。

自宅からドライバーを持ってきて水を止めて、水はひとまず止まった。

すごい、水道工事をやった。いや間違い、そのくらい疲れた。

元栓閉めただけなので、30秒で済む簡単な仕事。自分でやれよ。無理かな?

あれ、まだ外人がスマホで何か話してるぞ。

ポルトガル語は、何話してるかさっぱり分からん。

また変われということで、スマホで通訳と話す。

(新築リホームなのになんで水漏れする。入ったばかりなのに?)

私は今、文句言われてるか?時間が倍以上かかる、スマホでのやり取り。

なにかいって、スマホを交換して、答えを言って、また交換して、

奥さんにも説明して。

そしたら(朝何時に業者来るの、仕事あるから?)

また管理人に電話して。元栓一つで、一時間以上かかった。

そうしたら下の部屋から電話ありなさん、。

別のスマホ通訳がトイレの天井から水漏れしてる、きて。

何となくそうじゃないかなって思いましたよ。今までもそうだったから。

上の階止めたので、すぐ水漏れなおりますよ。また相手のスマホで説明。

工事の確認ミスで、連絡は管理人にすること、私は関係ないと説明しようにも、

通訳に時間がかかるので、あきらめた。

私は善意の第3者だ、それも言わなかった。

この外国人は、どこにも連絡できずに困って我が家に来たんだ。可哀想。

多少の文句は笑ってすまそう。夜遅いので帰って寝よう。


 翌日、疑問が。新リホーム?なんだそれ、

30年以上の建物の中替えただけだぞ。

それに昨日分かったが、トイレの配管、タンクは古いまま、

業者が塗装するので動かしたか?

ん、下の部屋に水漏れ?ここ鉄筋だぞ。

コンクリートで一部屋ずつ区切られてる建物だぞ?。

コンクリに亀裂か?文句言うほど、水漏れする穴でもあるのか。

疑問ある色々なことには時間がかかるので、知らんぷり。

想像どうりだと恐ろしい。

大阪の業者。確認もせず、施工も雑、管理人も流石に怒ってた。

施工が終わって、新入居者が引っ越してくる。

管理人からカギを受け取って、他の日に引っ越し。水道局が元栓を開ける。

休日とか、夜とか管理人がいない日ばかり引っ越してくる。

夜の引っ越しはやめてくれないかな。

ピンポン、ピンポン、音が怒ってる、一軒じゃなかった、時間なんかおかまいなし。

。私は、なれたものだ。マイナスドライバー持って30秒。

下の部屋に行って確認、3分の2は水漏れあり。

スマホのところだけ、どうしても時間短縮できない。

2台の電話はどうしても必要だった。

施工を請け負った所の業者、配管水漏れ全部同じ。

同じ体勢で仕事したんだ、塗装職人さんご苦労さま。

同じところに足をかけないで下さい。


  親切は、やりすぎ

理由を説明して電話代の請求、会社は知らんぷり。

親切で勝手にやってる。おまえら訴えてやろうか!

長い抗議文、ファックスで送ってやった。裁判所の住所まで調べた。

水漏れは住民のせいじゃない、何もしなければ水害になってた。

非常時の連絡場所も教えてない。

わたしの電話代払え。


  お互いに言葉が分からん

日本人にとって難しい言語がある。

まずスペイン語は翻訳機では、さほど苦労しなかった。

スペイン語使用のペルー人は、日本に来てる個人が、

ある程度の能力があるせいかな。

翻訳機も日本語になれてそう。そんなに苦労した記憶がない。

世界で一番使ってる人口が多いって言って自慢してた。

ポルトガル語はブラジル人も話すが、なじみがないせいか、何を言ってるのか、

全く想像すらできない。

ボディーランゲージが通じないこともある。日本とは動作が違うのかも。

ポルトガル語は翻訳機で簡単な言葉だけは翻訳できる。

少しでも日本的な言い回しになると違う意味が出てくる。

私は団地の注意点を、スマホで翻訳して入居時に配布したが、

なにを書いているのか分からないと、つきかえされた。

この件で最初に信用されなくなり、信用をとりもどすのに数か月間苦労した。

翻訳してそれをまた日本語に再翻訳して確認するという、

何とも情けないことになりやめた。

高額の翻訳機だと少しはいいらしいが、ポルトガル語圏は沢山いないので、

機械の翻訳能力が低いのかもしれない。(だんだん、よくなってるらしいですよ)

日本語を英語にして、英語をポルトガル語にするから安い翻訳機は精度が悪い、

とかいってたな。

翻訳機だけで安心して会話ができるかは、各言語と日本語との相性があるのかも。(あくまで私見です)

日本的な言い回しの事例です。地震が明日くるかも、だから防災訓練する。

といったのに、地震が来る、地震が明日来る、とメールを回された。

来るかもはダメ。

こんなことは日常茶飯事で、日本人が聞いたら嘘だろうということが、

本当にある。

日本でいう勘違いとは違うような気がする。回りくどいのかも。

又、言語に関すること。中国人は何とか漢字で話した。

半紙に神棚に貼る字をかいてもらった。

字はうまかったが、神棚なんかないので捨てた。

フィリピン人は英語が通じた。

ベトナム人は後で分かったが、英語は分かるみたい。

能力のあるのが来てるせいかもしれないが、

私にはベトナム語しか話せないといってた。

戦争してた国の言葉、話したくないのかも。

ベトナム人、(分かってるんだろう)って英語で聞いたら、横向いた。

私は自慢じゃないが、外国人歴35年以上。

そのほかの、タイ、韓国、インド、インドネシア、メキシコ、

ミャンマー、ニュージーランド、フランス。

南米の国も何カ国、名前は覚えてない。色々な国の人間と話してる。

英語も十分じゃない程度で私も大したもんだ。

海外旅行にも行きたいがパスポートはない。自信がない。

勤めてた自動車工場に研修にきていた外国人とか、団地の入居者、

みんなと仲良くなった。

夜勤で、インド人の研修長と仲良くなったことがある。

日本語が分かる面白いやつだった

夜に、インド人は止めた方がいい。見えない。

昼飯にいなりずし食べろってすすめたら、いらないって。

こいつら、カレー専門だった。いろんな国の違う事、いちいち覚えられない。

 

宗教って意外ときいてくる。

みんなが休みの日曜日、午前中の早い時間。

みんなで綺麗に掃除しよう。共同の場所だからみんなで。日本じゃ普通だ。

日曜日の朝、小さい女の子綺麗なドレス着て歩いてる。男の子はスーツだ。

家族全員で、教会にいく。ニコニコしてるから楽しいんじゃないかな。

日曜日は予定入れちゃダメ。外国人は出てこない。いや、いない。

国によって違う事は、覚えられない。

宗教なんて考えたことない。重要なことなんだけど。

日本中同じ問題で考えなきゃ。

日曜日の、日本の予定どうするの。土曜日にしてもいいのかな。


 先生が3人走ってる

5月の連休前は、先生の家庭訪問の日。その1週間前の夕方、ピンポン。

出てみると小さい小学生二人。

男の子と女の子。紙をいきなり渡された、何も言わない。

何だろうと思って読んでみたら、先生の家庭訪問の日の、

自家用車の駐車場所の紙。

二人はじっと見てる。先生が来られるか、だめかの瀬戸際だ。決死の覚悟だ。

私は丁寧に、地図まで書いてやったし、印鑑まで押してやった。

二人はニコニコして帰っていった。

あれ、この子ら公園で石を投げてたやつらだぞ。

怒ってやった子供だ。なんだ、いい子じゃないか。

そんな先生のために、団地の入口の駐車場所も広げてやった。子供のためだ。

団地中、何でそんなことするの、違法駐車で怒ってたのにと見てる。

一週間たてばわかるさ。説明したって長くなるだけだ。

訪問の日、階段の上から何となく団地を見てた。

そういえば20年以上前にも、こんなことがあったな。懐かしいな。

緊張して、うちの子が何をいわれるか、家じゅう掃除してソワソワしてたっけ。

あれ!中ヒールのスーツ姿の女性が走ってるぞ。

かなり早くて全速力、あわててる。先生だ!

見てたら団地の中をあっちいったり、こっちいったりしてる。

私、団地の上から見てたから良くみえる。こりゃ先生も大変だ。

男の先生と女の先生もいたぞ。団地の部屋を三人で行ったり来たりしてる。

懐かしいなあじゃないぞ!

この団地、家族全員日本語がわからないんだった。忘れてた。

あれ、先生ひとりだぞ。通訳つれてない。二人で回ると思ってた。

無謀だ、先生駄目だ。途方に暮れるぞ。落ち込むぞ。

全力でそりゃー走るよな。一軒で倍以上の時間かかるもの。次に間に合わない。

汗出して、髪振り乱してして急いでる。中ヒールなんか構っちゃいられない。

訪問して、黙って顔見てるわけにもいかないもの。なにか話さなきゃ。

部屋の中でどうしてるんだろう。スマホかなやっぱり。それ以外ないものな。

去年の家庭訪問と今年では、天国と地獄ほど違うぞ。

去年は1件、日本語わかる家だけ。

今年は20件以上、ほとんどの家族全員が日本語が分からない。

去年の引継ぎは通じないですよ。引継ぎ書類は無駄です。

安心してたんじゃないか、のんびり団地に来た先生いたもの。

その後、慌てて走ってたけど。

風がない穏やかな日です、汗には最悪の条件でした。

疲れてる先生と立ち話。来年は、言ってくれたら、協力しますよ。

帰って教頭先生と、相談してみてください。うちの団地だけ特別だから。

短期間で言葉の分からない子がいっせいに入ってきたし、

来年はもっと人数が増えますよ。

学校前の歳の子のほうが、今いる子よりはるかに多いです。

小学校に行く子も多いはずです。ブラジル人学校高いから。

先生、顔が暗かった。来年も担任かな。

団地では先生は、かならず走る、断言する。


  通訳なんか雇えない

学校で何百人のうちの何十人のために、通訳なんて雇えないのはよく分かる。

地域では縦割りなんかで、共有してないのかな。先生、通訳連れてなかったもの。

言葉の分からない外国人ばかり集まったので、この団地が、なんだか最先端に。

何でも教えますよ、なにせ困ったことばかり沢山経験あるもの。


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