第45話 城壁に掲げられた大漁旗
ミノタウロス達との防衛戦が始まって二日目の朝。私は朝からミノタウロスステーキをもぐもぐと食べていた。うん、今日も朝からゼボンさんのステーキは絶好調だね。
「ようさくら、朝からがっついてるじゃねえか!」
『おはようございます!』
ボヌールさんは、私と一緒のテーブルに座る。
「ま、俺も同じの食うけどな!」
『美味しいですよね』
私とボヌールさんが仲良く朝ごはんをたべていると、ギルマスのユッカさんが目立つところでぱたぱた浮かんで、演説を始める。
「うおっほ~ん! みんな、よく聞け~! 今から僕が演説するぞ~!」
ギルマスのユッカさんとはあんまりしゃべったことが無いんだけど、ガーベラさんよりもだいぶ若く感じるんだよね。しゃべり方が若いからなのかな?
「今回のミノタウロス達との戦いは、今日が山場になると思われ~る! なぜなら、え~っとえ~っと、何だったかな? とにかく、きっと今日が山場になる! というわけで、みんな今日も頑張ろう!」
「「「「「にゃ~!」」」」」
「ご清聴ありがとうございました!」
ユッカさんは空中でぺこっとお辞儀をすると、パタパタとどこかへ飛んでいった。
『今日が山場になるんですね』
「ああ。ユッカの奴、今日が山場になる理由忘れたっぽいな。これだからカンペは用意しとけって言ったのによ」
『あの、どうして今日が山場なんですか? 長期戦の可能性もあったんですよね?』
私も長距離のために香辛料とか服とかいっぱい買ったのに、このままじゃ全部余っちゃう。幸い買ったのは保存がきくものばかりだから、大丈夫なんだけどね。
「当初の予想では長期戦2割、短期決戦8割って言われてたな。そもそもこういう城塞都市の攻め方ってのは2種類しかない。力技で攻め込むか、兵糧攻めにするかだ。ただ、この街はさくらも知っての通り、湖上交通があるから、陸路を抑えただけじゃあこの街の物資が無くなることはない。だから、兵糧が尽きるまで包囲するっていう長期戦は仕掛けられねえ。一応この街には積極的に仕掛けず、この街の軍を抑えられるだけのミノタウロスを残して、隣街を襲う可能性なんかも指摘されてたが、ま、素直に力技で来たってことだな」
『うう~ん』
「ま、細かいこと考えるのはロジャーとかその辺にやらせときゃ良いんだよ。俺達は逃げ道だけは確保して、後は適当に暴れるだけってな! そうそう、短期決戦の中でも、今日ってピンポイントでわかったのは、ハンター達の調査のおかげだ。昨日の夜、ミノタウロスの本陣がこの街へ向けて動き出した、到着は昼頃のもようって連絡が入ったらしいんだ」
『わかりました!』
「何度も聞いてるかもしれねえが、俺達は俺達の仕事をすればいいだけだからな。決して無理をするなよ? 負けたって湖に逃げりゃあいいだけだし、その後で本格的に妖精の国に援軍を送ってもらえばいいだけの話だ。ユッカの話だと、この街が抜かれるようなことがあったら、そん時は妖精の国としても本格的に援軍を送ってくれるっていう話になってるらしいからな」
『わかりました。じゃあ、私達は怪我人の治療とお肉の確保ですね!』
「そういうことだな!」
私とボヌールさんは朝ごはんを食べ終えると、いざ戦場へと出発する。私はまず庭に設置型回復魔法陣を設置して、それからボヌールさんと共に城壁へと向かう。
「さくらちゃん、いざとなったらボヌールを盾にしてでも逃げるのよ! ボヌール、さくらちゃんにかすり傷一つ負わせたら許さないわよ!」
『はい』
私は取り合えず頷いておく。
「わかってるよ。ってか、昨日報告したろ? さくらはマジでアオイ並みに強いから心配いらねえっての」
「それはそうだけど、とにかくお願いね!」
「ああ、任せとけ。じゃあさくら、行くぜ」
『はい』
私とボヌールさんは妖精の国のギルドの庭を出て、城壁の上へと上がる。城壁の上では、昨日からずっと戦闘が続いていたらしい。
『いっぱいミノタウロスがいますね!』
「だな。4mの魔法使い系ミノタウロスを中心に釣っていくか?」
『そうですね、まずは5mを確保しませんか?』
「それもそうだな! よしさくら、昨日みたいに強化魔法を頼むぜ!」
『はい!』
私は昨日みたいにボヌールさんに強化魔法をかける。じゃあ、準備おっけいかな?
『ボヌールさん、釣りしていいですか?』
「いや、ちょっと待て。おいお前ら、昨日の午後のことわかるか?」
ボヌールさんは周辺の軍人さんに話しかける。
「はい、引継ぎはしているのでわかります。もしや、サイコキネシスで強い個体を狙うおつもりでしょうか?」
「話が速くて助かるぜ。そう言う訳だから、サイコキネシスで釣った奴には手出し無用で頼むぜ」
「わかりました」
なるほど、昨日は軍人さんに釣ったミノタウロスを攻撃されちゃったもんね。混乱を引き起こさないためにも、事前の連絡は必須だよね。流石ボヌールさん、熟練のハンターさんだね!
「ってなわけだから、いつでも釣ってくれていいぞ」
『わかりました。まずは5mからいきますね』
「おう!」
私は5mのミノタウロスを探す。え~っと、昨日は5mのミノタウロスは、真ん中と左右に1匹づつ、合計3匹いたんだよね。そして今日は・・・・・・、何という事でしょう、昨日1匹釣ったにも関わらず、今日も同じ配置で3匹いるではありませんか! あんなに美味しいお肉が自動で補給されるなんて、凄いです! これは凄すぎです!
やばっ、危うくよだれを垂らすところだった。今日は猫として、ううん、人間として、決してよだれは流さないと、私は心に誓ったからね。昨日の醜態はもう2度とさらさないよ!
私はよだれに注意しながらサイコキネシスを発動させる。まずは真ん中の5mのミノタウロスだ!
『ボヌールさん、釣ります!』
「おし、来い!」
私の体から伸びた魔力は、真ん中にいるミノタウロスをしっかりと掴み、そして引き寄せる! 引き寄せたミノタウロスをボヌールさんの目の前に横にして置くと、ボヌールさんが首をスパって切ってくれる。
「おし、完璧だぜ!」
『はい! あと2匹いるので、5mのをまず全部釣り上げちゃいますね』
「あの左右のミノタウロスにも、ここからサイコキネシス届くのか?」
『はい、普通に届くと思います』
「そ、そうか、あいからわずバカげた射程と出力のサイコキネシスだな。まあいい、ガンガン釣ってくれ!」
『はい!』
その後、私とボヌールさんは、いっぱいミノタウロスを釣り上げ、そして絞めていった。
今日も絶好調だね! 5mのミノタウロスが3匹に、4mの魔法使いミノタウロスが10匹、4mの戦士系のミノタウロスも10匹釣り上げちゃったし、まさに大漁って感じだ!
今の私の目には、城壁の上に掲げられている軍旗が、大漁旗に見えるよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます