第25話 ポーションを作って襲撃へ備えよう

 敵は一週間後にやってくる!


 ボヌールさん達と一緒に街道防衛戦を行った翌朝、私も何かしら決戦へ向けての準備をしようと考えていた。


 でも、平和な日本生まれの私には戦争の準備と言われてもピンとこない。うう~ん、どうしよう。ここは、RPGとかでボス戦を控えているって想定すればいいのかな? その場合用意するものは、いい武器、いい防具、それに回復アイテムっていうところかな?


 武器はこの愛用の爪と牙があるし、防具はキジトラ柄の毛がある。ということは、ポーションだね!


 ポーションなら在庫がたくさんあるんだけど、拠点に行ってもいいのかな? う~ん、ガーベラさんに聞いてみよっと。


 私は1階に降りて、朝ごはんの干し肉を食べてから、カウンターにいるガーベラさんに話しかける。


『ガーベラさん、おはようございます』

「あら、さくらちゃんおはよう」

『街の外に行きたいのですが、空を歩いてれば安全ですか?』

「そうね、対空攻撃が出来そうな強力なミノタウロスは本隊にいるでしょうから、今日明日くらいなら十分に高度を取ってさえいれば比較的安全よ。でも、どうして?」

『えっと、拠点にまだポーションがあるので、取ってこようかと思いまして』

「拠点は安全なの?」

『はい、拠点は安全です』

「なら大丈夫じゃないかしら? でも、必ず今日中に帰ってきてね? じゃないとみんな総出で探しちゃうからね」

『はい、取ってくるだけですので、午前中には戻ってきます。あ、それと、ポーションの瓶をいただけますか?』

「ええ、構わないわよ。ちょっと待ってね」


 そう言ってガーベラさんは奥に行くと、私が預けたのとは別の魔法のカバンを持ってきてくれた。


「はいどうぞ、この中にポーションの瓶が100本入っているから、好きに使ってね」

『ありがとうございます。でも、こんなにいっぱいいんですか?』

「ええ、大丈夫よ。昨日はさくらちゃんもたくさん回復してくれたみたいだけど、軍なんかではポーションもいっぱい使ったみたいなのよ。それでこの街の軍やハンターから、大量の空き瓶が回ってきたのよ」

『そうだったんですか、怪我とかは大丈夫だったんでしょうか?』

「大丈夫よ。使われたのは低ランクのポーションばかりだったから、重傷者はそんなに出ていないはずよ」

『そうなんですね、よかったです。そうだ、持ってきたポーションの何割かを軍や街のハンターさんに売ってもいいですか?』

「ええ、出来ればそうしてあげてほしいわ。私達は私やさくらちゃんにボヌールとか、回復魔法の使い手が多いけど、この街の軍やハンターの人たちは回復魔法使いも薬師も不足しているからね。ただ、売る際は軍かハンターギルドに直接お願いね。その辺ルールが少しあるの」

『はい、わかりました』

「あ、そういえば、昨日のこのポーションの器なんだけど、開け方が良く分からなかったの。どうやって開けるのかしら?」


 そういえば、すり鉢ポーションの開け方を伝えてなかった。でも、開け方って壊して開けるだけなんだよね。


『え~っと、壊して開けます!』

「壊すの?」

『はい、土魔法で作っただけの器ですので』

「そうだったのね、こんな感じでいいのかしら?」


 ガーベラさんが土魔法なのかな? を使って蓋をぱかって開ける。


「あら、奇麗なピンク色のポーションね。あら? これ、もしかして最高ランクのポーション?」

『ランクはよくわかりませんが、よく効くポーションです!』

「さくらちゃん、この品質のポーションは、妖精の国でもそうそう作れないわよ?」

『そうなんですか? よくわかりませんが、私が在庫で持っているポーションは全部そのポーションです』

「そ、そうなのね。ボヌールが凄い凄い言っていたけど、さくらちゃんは私の想像以上に凄いのかもしれないわね。でも、このレベルのポーションの在庫がまだあるのなら、お願いがあるのだけどいいかしら?」

『はい、何でしょうか?』

「実は、3か月前の戦闘の際に、この街の将軍をはじめ高ランクの軍人やハンターが大怪我をしちゃったのよ。最近、例の迷子の薬師のおかげで治ったと言っていたんだけど、まだ治っていない人もいるの。これを何割かそちらに回してしまってもいいかしら?」

『はい、大丈夫です。拠点にもまだ在庫とか材料がいっぱいあるので、全部持ってきますね』

「いえ、貴重なものなのでさくらちゃんがしっかり管理しておくといいわ。今回渡した空き瓶に入れるポーションは、もう少し低いランクの物がいいわね。最高ランクのポーションは材料も貴重なら、作るのにも魔力をたくさん必要とするでしょ? 今は頑張って最高ランクのポーションを作るよりも、ほどほどのポーションをほどほどの量作って、1週間後に消耗していないように体調管理をするのも重要な仕事よ。それに、最高ランクのポーションは支払いが後で困るのよね」

『支払いは別に適当でいいですよ?』

「それは絶対にダメよ」

『わかりました。では、これと同じポーションを在庫から10本分用意して、これより低いランクのポーションを無理なく作れるだけ作ってきますね』

「さくらちゃん、無理は禁物よ?」

『はい!』






 そして私はギルドを出て、隠蔽魔法をかけてから空を歩き出す。ちょっと怖いけど、絶対に安全そうな上空にまでてくてくと歩いていく。そして、思いっきりダッシュして拠点の上空まで走って、それから着陸する。


 う~ん、見られてる感じとか、一切感じなかったね。やっぱり上空なら安全なのかな。


 私は桜の木の寝床から、残りのすり鉢ポーションを1個持ちだすと、ガーベラさんに貰ったポーションの空き瓶10個に移し替える。これでピンクポーションは十分だね。


 あ、ピンクのポーションの材料の桜の花びらもまたちょっとだけ地面に落ちてるね。これも洗ってから桜の花びら入れにいれとこっと。


 あとはもっとランクの低いポーションを作ればいいんだけど、そもそもピンクのポーション以外のポーションの作り方を知らないんだった。私はピンクのポーションの作り方を知った時同様、猫の本能に訴えかける。


 弱いポーション~、弱いぽ~しょ~ん~。


 流石はキジトラさん印の猫ヘッドだ。あっさり弱いポーションの作り方が判明した。ふむふむ、作り方は基本的に同じでよくて、材料のランクを下げるか、回復魔法のランクを下げればいいのね。


 回復魔法はランクを下げようにも一つしか知らないし、ここは材料のランクを下げよう。


 え~っと、ランクの低いポーションの材料はどこ~。私が魔力をその辺に噴出させながら念じると、ランクの低いポーションの材料の場所がなぜかわかった。


 なるほど、この辺にはないっぽいね。あ、崖の下にならあるんだ。私は崖まで走って下を見る。すると眼下に広がる森の中に青い果実を発見した。どうやらあの青い果実がランクの低いポーションの材料みたいだ。う~ん、降りるのはミノタウロスのせいで怖いし、サイコキネシスで取れるかな?


 私はサイコキネシスで青い果実を取ろうとする。距離が結構あるから不安だったけど、私のサイコキネシスはあっさりと青い果実に届いた。私は取り合えず見える範囲の青い果実を採取する。これだけあればすり鉢9個分、ポーションの空き瓶90本分には十分足りるね。そして、拠点に戻って前回と同じようにそこら辺の土ですり鉢を作って青い実をつぶし、拠点の湧き水の池の水と合わせてポーションを作っていく。


 私は空き瓶90個分のポーションを作るとピンクのポーション10個と合わせて100個のポーションを魔法のカバンに仕舞い込む。ちなみに新しく作ったランクの低いポーションは青い色だ。青い実を皮ごと使ったから、当然と言えば当然なのかもだね。


 魔力は、気になるほど減ってないかな? ガーベラさんはほどほどのランクの物をほどほどに作らないと魔力が減るって言ってたけど、そんなにランクの高いポーションじゃなかったのかもね。


 う~ん、これでやる事終了かな? 余った青い果実は、桜の花びらの時みたいに長持ちするようにって念じた土魔法の箱に入れて、さ、街に帰ろっと。



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