エルフの薬師

 トントントン、ジュージュー

 窓から差し込むまぶしい朝日と食べ物のにおいで目が覚める。

「ここは......」

 そうだ確か昨日異世界に飛ばされて、それから眠くなって、気づいたらここにいて......もしかして誘拐?!

 驚いて、状況を確認する。

「服は、変わってる」

 なんか病院の患者さんが着るような服だ。

「荷物は?!」

 右の棚に置いてあった。

「あ、あれ?」

 誘拐だったら荷物はないだろうし、ベッドで寝かされてない?

 スンスン

 それにこの匂い

 ぐぅ~

「......」

 腹に手を当てて、

「そういえば、昨日の夜から何も食べてないな」

 もしかしたら食べ物を分けてくれるかもしれないとわずかな希望を持ち、ベッドから出てドアを開けると、廊下に繋がっており下に階段が伸びていた。

警戒しながら恐る恐る降りると、エプロン姿で料理をしていた耳の長いきれいな女性がいた。

向こうがこちらに振り向く途中で目が合ってしまった。......すると、

「あら、起きたのね。おはよう」

と優しく微笑み挨拶をしてくれた。

「あ......」

「ん?どうかしたの?」

「いや、別に」

 なんだあの人?!めちゃめちゃタイプなんだが!

 髪は金色で長いわけでも短いわけでもないくらいの長さで、身長は俺よりも少し高い。目の中は赤くてスタイルがかなりいい。

 って初めて見る人をそんな目で見ちゃいけないよな。

「ほら、もうすぐご飯できるから座ってて」

「え?あ、はい」

 そう言って料理に戻ってしまったので、言われた通りに席に着く。


 しばらくすると、

「はい、おまたせ」

 と、料理が出てきた。

 パン2枚、ベーコンエッグ、レタスとトマトという普通の料理だったが、それが今の俺にっとってはとてつもなくうれしかった。

「いただきます」

「めしあがれ」

 一口ベーコンを食べると、うますぎて涙が出てきた。

 昨日めちゃめちゃ泣いてたじゃん。

 そのあとも食べれば食べるほど涙が出てきて気づいたら全部食べ終わってた。

「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」

「あの、ありがとうございます」

「いいの、いいの。昨日あんな場所で倒れてていきなりお腹すいたって言ったと思ったら急に寝ちゃうんだもん。びっくりしたけど、大丈夫そうでよかった」

「え?」

「え?」

「実はなんも覚えてないんですけど」

「そっか、まあさっき言ったとおりだよ」

「そうなんですね」

「ねぇ、キミのこといろいろ教えてよ」

「えーと俺の名前は、八意天です。えーっと何話そう」

「ヤゴコロソラか......じゃあソラでいいね」

「あ、はい」

 いきなり下の名前で呼ばれると照れる。

「私の名前はアリス、この妖人種エルフの星の薬師くすしよ」

 アリスと名乗った女性はにこりと微笑んだ。

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