第7話 仲間との距離感
「これから会議室で話しあいが行われるのだろう。先に行くと良い。私は見ての通りだからな」
イフィールさんは訓練場のある方角を視線でしめして、それとは別の方向へと車椅子を進ませた。
そちらにはウーガナがいた。
釈放されたにもかかわらずたまに姿を見かける彼は、何か理由があってイフィールさんの近くにいるらしい。
出会った頃と比べると、角がとれた……というより小物感が増した彼は、とある理由によって呪われている。
その呪いと関係がある人を探すために、漆黒の刃を調べる必要があるらしかった。
啓区は、イフィールの姿を見送ったのち、再び歩みを再開。
中庭からは、ちらほらと人が散りはじめていた。
彼らはまた、それぞれの仕事に戻っていくのだろう。
城の復旧作業や、町の治安の維持など、やる事は山積み。
どこもかしこも慌ただしい。
城の廊下を歩く啓区達の横を、いまも兵士の一人が足早に通りかかった。
「啓区」
そんな中で声をかけてくるのは赤毛の少女。
横に並び立ち、速度を合わせて歩く。
「先に行ってたんだ。さっきはあんまり話しができなかったから、同じ場所にいたのか不安になっちゃって」
「あー、儀式中はちょっと離れてたもんねー」
「また消えちゃいそうになってるんじゃないかって、ちょっと心配になっちゃったよ」
「そこまで心配かけちゃったー? ごめんねー存在感薄くてー」
「え? 存在感は、薄くはないと思うけど……。そういう事言いたいんじゃなくて」
戸惑う姫乃は、何事か腑に落ちない様子だった。
次に話しかけてきたのは幼なじみ設定の少女、未利。
設定のだから、本当の……ではないのがミソ。
「何で同時に解散したのにアンタだけてってけ先行ってんのさ」
「てってけだってー、おもしろーい」
「どこが! 何気にアンタのツボ、よく分かんない時あるんだけど。というか途中でイフィールに捕まってなかった?」
「ちょっと、お話をねー。悼んでくれてありがとう的なー」
「ああ、なるほど。らしい話」
そこでぴゃっと反応するのがなあ。
彼女はキョロキョロ頭を動かして、件の人がいないか精一杯捜索中。
「イフィールさんなの? どこなの。なあもお話ししたかったの」
「あー。ごめんねー。でもたぶん会議室で会えると思うよー」
ネコのように丸い目をしたくせ毛のツンデレこと方城未利。
そして、オーバーオールで転倒時の防御力をあげている希歳なあちゃん。
この二人と僕は、幼なじみという設定で今までつきあっていたんだけど、色々あってその設定がなくなっちゃったんだよね。
だから、ちょっと気まずい。
「まったく、時々無償に単独行動しなくちゃいけない病にでもかられてんの? 予兆がなさすぎるんだけど」
「まさかー。一匹狼かっこいーするほど中二病じゃないよー。ちら」
「そこでアタシを見るな! 誰が孤独を愛するくせに寂しがりを自覚する兎風な一匹狼だ!」
「そこまでは言ってないよー」
意図してない形だったけど、彼女達に対して騙すような事してしまっている。
今まで通りの態度でいるけど、どう接していいのか分からなくなる時があった。
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