最強チートを手にしたヘタレの異世界充実ライフ?

逢坂こひる

マイオピアの英雄

第1話 とんでもない事になってしまった

 僕は波瑠悠翔はるはると、企業に雇われている研究者で、アンチエイジングの分野ではそれなりに名が通っている。


 極端にリスクを嫌う僕のことを、ヘタレだとかチキンだとか嘲笑う者もいるが、それはそれで構わない。


 安全は全てのケースに於いて優先されるべき事なのだから。


 そんな僕は、アンチエイジングの新薬研究過程で、とんでもない事をしでかしてしまった。


 なんとマウスの若返りに成功したのだ。


 その事自体は非常に喜ばしい成果だ。

 

 しかし……問題は、マウスが潜在能力を超えるほど強化されてしまい、性格も荒々しくなってしまった事だ。


 簡単に言えばモンスターを作り出してしまったのだ。


 コレは非常にマズい。もし、こんな物が世に出回れば大変な事になる。


 これまでの研究成果を全て無かった事にするのは非常に心苦しいが、こんな大きなリスクを抱えたまま、研究を続けるわけにはいかない。


 僕はクラウドから全ての研究データを完全に消去した。


 マウスも書類関係も全て処分した。


 残すはサンプルのジェット注射1本のみだ。


 これがヘタレと言われる所以ならヘタレでいい。


 サンプル処分用に装置を準備していると、慌てふためいた担当助手が研究室に入ってきた。


「波瑠博士……何故ですか!」


「ん、どうかしましたか?」


「貴方はとんでもない事をしてくれましたね……」


「もしかして研究の事ですか?」


「はい、博士が噂通りヘタレでも、まさか全てのデータを消去するとは思いませんでした……」


 さすがに、面と向かって言われるとちょっと腹が立つ。


「君も知っていたはずです、研究は失敗だと」


「何が失敗だったと言うのですか!!」


「バァーン」


 乾いた音が鳴り響く。


「うぐっッッッッッッッッ!!!」


 右足を拳銃で撃たれてしまった。痛すぎる。気を失ってしまいそうだ。


「……ひっ……なっ……何故こんな事を……」


「波瑠博士……それをこちらに」


 最後のジェット注射をよこせと言っている。


「君は何を考えているのですか……まさかこんな物を世に出そうと言うのですか……」


「バァーン」


「ぐぁっッッッッッッッッッッッ!」


今度は右腕を撃たれてしまった。吹き飛んでしまうかと思った。


「違いますよ波瑠博士……研究は成功ですよ!若返った上で、潜在能力を超えた力を手に入れ、新たなる種として生まれ変わる。誰もが夢見る事ではないですか!」


 狂っている……彼は厨二病をこじらせてしまったのかも知れない。

 僕は機材に隠れた、しかし弾丸は容赦なく僕を襲う。

 

 今度は脇腹辺りに命中した。これはもう、ひいき目に見ても助からない。

 仮に逃げ延びても、待っているのは失血死だ。 


 僕はジェット注射を自分に打った。


 彼の言うような、新たな種として生まれ変わる為ではない。

 後始末のため……僕なりのケジメだ。


 もしここで、僕がこのまま殺され、死体からサンプルが採取されてもバッドエンドだ。


 今、最良の一手は、ここにある薬品で爆発を引き起こし、僕諸共、吹き飛ばしてしまうことだ。


 銃撃にさらされながらも、なんとか薬品の入っている棚まで移動し、薬品を確保した。


 僕は常にリスクを避けて生きてきた。


 例え遠回りでも、常にリスクの無い道を歩んできたつもりだ。


 なのに僕の人生の幕を、自分自身が作り出したリスクによって、閉じようとしているなんて皮肉な話だ。


 思い残す事も、後悔も沢山あるが、自分で撒いた種だ。


 僕は混ぜるな危険で爆発を引き起こした。






 こうして僕の人生は幕を閉じる…………



 

 



 ハズだった。







波瑠悠翔はるはるとさん」


「波瑠悠翔さん」


「悠翔さん」


「ん……」

 痛みが消えている。


「気が付かれましたか」


 目の前には、ブロンドの長い髪に琥珀色の瞳、鼻筋の通った美しい顔立ち、透き通る様な白い肌に神秘的な衣裳を纏った美しい女性が立っていた。


 まるで女神のようだ。



「あの……どちら様でしょうか……」


「私は愛と豊穣の女神フレイヤです。私のことはフレイヤとお呼びください」


 リアルに女神だった。


 周囲を見渡しても、ただ真っ白な空間が広がっているだけだ。

 その真っ白な空間の中で僕と彼女は2人きりだった。


(……やばい、緊張してきた)


 どの様な状況であろうと、こんなにも美しい女性と2人きり……女性に耐性の無い僕が、普通でいられる筈もない。


 今手を握られると、100%嫌われるレベルで手汗をかいている。


「ふふふふフレイヤさまぁぁ、こここっ…こ、ここは天国かなんかの死後の世界でしょうか!」


 噛みまくった挙句、声まで裏返ってしまった。


「あは、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ?」


「そ…それはもう手遅れでっす……もう心臓がパンク寸前です…」


「ふふふ、面白い表現をされますね、本当に大丈夫ですよ?この空間には、私とあなたしか居りませんので」


 むしろ、そのような状況だからこそ緊張するのだと、声を大にして言いたい。


「リラックスしてくださいね」

 出来るわけない。でも従順な僕は。


「は、はい……ありがとうございます……」


「そう言えばまだ、質問に答えていませんでしたね。

ここは、天国でも死後の世界でもありません。

ここは天国と現世の中間辺りと言った所でしょうか」


「ちゅ……中間?……何故そんな所に僕が?」


「それは……ですね……悠翔さん」


「はい」


「あなたに異世界に転生して頂きたいからです」


「!!!」


 正直驚いた。


 異世界転生モノは嫌いでは無い、むしろ好きな方だ。

 まさか自分にそんな日がやってくるなんて、夢にも思ってみなかった。


「あの……フレイヤ様、異世界転生ということは、魔物なんかもいたりするのでしょうか?」


 リスクの確認を忘れてはいけない。


「そうですね、悠翔さんが転生する世界は、悠翔さんの世界で言うところのファンタジーな世界ですので……」


 憧れていたファンタージな世界が目の前に……しかし、あんな事あったばかりなので、正直、乗り気ではない。


 前向きに生きる気分には到底なれない……憧れていた異世界だからこそ中途半端な気持ちでは行きたくない。


「フレイヤ様……すごく有難いお話しなのですが、お断りできないでしょうか?」





「へ……」






 フレイヤ様からすれば、想定外の返事だったのか、沈黙が続く……なんだか気まずい。


「えーとですね、異世界にはとても興味が有ります。

本来であればとても嬉しい申し出です!

でも、……あんな事があったばかりなので……

また同じ事を繰り返すんじゃないかと、とても不安で……」


「な……なるほど、ハルトの不安は分かります」


 さりげに呼び捨てにされている、嫌では無い。


「では、こうしましょう、ハルトがあのような結果になった原因は、ハルトに力が無かったからです」


 事情は筒抜けのようだ。


「ハルトの不安を払拭するために、今回は特別に力を授けましょう」


「ちなみに、どの様な?」


「ひと言で言えばチートですね。具体的には身体強化と、イメージ動作補正でいかがでしょうか?」


 チートと言う響きの割には地味に感じる。


「直感的に身体強化はわかりますが、イメージ動作補正ってどのようなものですか?」


「頭に思い描いたイメージ通りに、身体を動かすことが出来るスキルです。

格ゲー、無双ゲー、アニメ、アクション映画などが好きなハルトにぴったりです」


 全然地味じゃなかった。


 それにしても僕の好みまで調査済みとは……なんだか用意周到なところが逆に不安になってきた。


「でも、異世界って基本的に文明レベルが低いですよね? 移動手段とか医療面も心配ですよね……」


「わかりました、特別に瞬間移動と全回復もお付けしましょう」


 通販番組みたいになって来た。

 もう少し粘ればもっと色々付けてくれそうだ。


「運搬や通信、衛生面、経済面、いざという時の保険、魔物がいるのなら装備面……不安はつきません……」


「そ……そう来ましたか……わかりました。では、生活に必要そうなスキルは全て授けましょう。

それにプラスして全ての着衣に自動洗浄、自動修復、自動回復、自動魔力回復、さらに全てのポケットに空間収納をお付けします」


 僕の着衣がそれらしいものに変更された。言ってみるもんだ。


「ハルト、剣で攻撃したいと思って下さい」


「え」


「剣で攻撃したいと思うのです」


 言われるがままに、剣で攻撃したいと思った。

 すると両手に刀身がビームの剣を携えていた。


「な……」


「右手の剣はレーヴァテイン、左手の剣はクレイヴソリッシュ、この2振りの神剣はハルトがこれから向かう世界では神話級のチート装備です」


「まじかですか……」


「まじです、次は銃で攻撃したいと思って下さい」


 言われるがままに、銃で攻撃したいと思った。

 すると両手に一丁ずつ拳銃を携えていた。


「その銃はハルトの魔力が弾になるので、弾丸を装填する必要はありません。威力も見た目通りなかなかのものです」


 見た目は44マグナムだった。


「心が通った相手とは通信ができるように、念話のスキルも授けます」


「念話!?」


『念じる事で頭の中に直接話しかける事ができます』

 フレイヤ様の声が頭の中で直接聞こえている。


『なるほど……』


「ただし、心が通い合っていることが条件です」

 と言う事はフレイヤ様とは通い合っているのだろうか。


「最後にもう一つ『インヴィンシブル』と言うスキルを授けます」


 インヴィンシブル……無敵……。


「それは、どのような?」


「とっておきのスキルです。一度使うと、かなり体力を消耗して10分程は使えないので、注意してお使い下さい」


「効果は?」


「超加速です」


「超加速?……」


「周りが止まって見えます」


「まじですか……」


「まじです、持続時間は確か3分ほどです」


「それって……3分間ほぼ無敵って事ですよね……」


「そうとも言えますね、だから『インヴィンシブル』なのです」


「なるほど……」


 ゲームではないのが、ゲームバランス大丈夫かと思ってしまう程の優遇だ。ここまでしてもらえば、ヘタレと言われてた僕でもなんとかなりそうだ。


「フレイヤ様、ここまでしていただけるなんて……」


「転生していただけますか?」


「はい! もちろんです!」


「良い返事ですね。では向こうの世界でひとつ注意点がありますので、伝えておきます」


「何でしょうか?」


「ハルトの行く世界の魔物は体内に魔石を宿しています」


「魔石?」


「はい、魔物を倒した後は魔石を回収しないと、魔物が復活したり、より強力な魔物に生まれ変わったりします」


「それは……」


「魔石回収用の魔法もあります。

ですが今回はハルトのヒップバッグにその機能と、暴走抑止効果を付与しています。魔石はヒップバッグに溜まっていくと覚えておいて下さい。

きっと生計を立てる上で必要になります。

もちろんヒップバッグにも空間収納つけています。」


「なるほど……ところで暴走って何ですか?」


「先ほどお話した魔物が復活したり、より強力な魔物に生まれ変わったりすることです」


「分かりました。何から何までありがとうございます。

でも、何故、僕にこんなに良くしていただけるのですか?」


「前世のご褒美だとだけ言っておきます。イジーモードのボーナスステージを楽しんでください」


「前世の……」


「では、ハルトいってらっしゃい」


「はい、いってきます」


 突然足元に穴が空いた。


「えっえええっっっっっっ!」

 フレイヤ様は満面の笑みで送り出してくれた。


 穴から落ちるとそこは異世界だった。


 そして僕の眼前には大量の魔物がいた…………


 こうして僕の異世界生活が始まった。




————————


逢坂です。

読んでいただいてありがとうございます。


いかがだったでしょうか?


逢坂、本作を応援してやってもいいぞって方は、

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これからもよろしくお願いします。



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