第241話 昇格?
投稿期間があいてしまい申し訳ありません。
また、喪中につき新年のご挨拶ができませんが、本年も拙作をよろしくお願いいたします。
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「いやあ、ガイウス卿も大変ですねぇ。いつものことですが。」
そう苦笑いしながらジョージが輸液、地球では栄養点滴と呼ばれるモノの準備をしている。時間がかかるかなと思っていたけど、その日の昼前にはジョージが点滴キットを持ってきてくれた。
「いやあ、以前、送還された時に何となくPJ(パラジャンパー)の資格を取っておいてよかったですよ。訓練、大変でしたけどね。」
そう言いながらもスムーズに手を動かしている。「アフガンに比べれラクなもんです。」とか言っていたけど、地球の地名かな?それとも国名?今の僕の状態では聞くことはできないけどね。
「それじゃあ、針を刺しますよ。・・・ん~、身体が強張っているから痛いかもしれませんが、我慢してくださいね。いきますよ?」
僕は1回まばたきをして肯定の意を示す。それを確認したジョージは頷いて、僕の左腕に点滴の針を刺す。物凄く痛い。激痛が襲う。刺されているところ以外の左腕全体が痛んでいるみたいだよ。思わず、呻き声が漏れる。
「1回で刺せましたよ。では、今から点滴液を流していきますからね。」
ジョージは笑顔で言い、僕から離れる。
「あ・・・り・・・が・・・と・・・。」
「どういたしまして。無理に言わなくてもよろしかったのに。さて、自分はこれで退室しますね。点滴液の取り換え時間にまた来ます。ゆっくり休まれてください。」
僕はその言葉に甘えて、ゆっくりと瞼を閉じる。と、同時にまた神様たちの空間にいた。そこには笑顔のフォルトゥナ様と複雑な表情のラケシス様がいた。
「えっと、昨夜ぶりです。フォルトゥナ様、ラケシス様。」
この場所では身体の痛みを感じないようだね。僕が体を軽く動かしているとフォルトゥナ様が頭を下げて言う、
「ガイウス。ごめんなさいね、痛い思いをさせて。」
「いえ、フォルトゥナ様が謝ることではありません。地球の神様が悪いんですから。今日はラケシス様だけなんですね?」
「そうなの。あの馬鹿の目を少し潰してきたから、ラケシスがこちらの世界に来て貴方と会っているのには気づいていないわ。」
・・・目を潰す。物理的なモノなのか超常現象的なモノなのかは聞かないでおいたほうがいいね。
「フォルトゥナよ、
「ええ、ええ。そうね。ガイウス。本当は処分するはずだった貴方の切り取った二つの魂の欠片をラケシスに頼んで、彼女の加護を上書きしてもらったの。上書きするために少し削ったけど、全体からみればほんの少しよ。それで、上書きした魂の欠片を貴方に戻そうと思うの。今の身体を全く動かせない状況からマシになるかと思うけど、どうかしら?」
えーっと、いいのかな?
「遠慮する必要はないぞ、ガイウスよ。あの駄神が原因とはいえ、我ら神々に全く責任が無いとは言えんからな。我らからの謝罪と思って欲しい。」
「あのーラケシス様の加護の強さはどのくらいになるのでしょう?」
「すでにフォルトゥナと駄神の祝福と加護を受けておるからな。我の祝福と加護をそこに付け加えるとフォルトゥナが管理するエシダラ界の勇者の能力を軽く越えるな。勇者と敵対しても簡単に勝てるであろう。そこに聖女が加わろうが結果は変わらんな。」
なんか凄いことをさらっと言われたけど、断る選択肢って無いよねぇ。
「お手数おかけしますがよろしくお願いします。」
「うむ、任された。魂には生き物でいう血管のようなモノがある。それを繋ぎ合わせれば完了となる。」
ラケシス様はそう言うと、すぐに僕の胸辺りに手を突っ込み前みたいにウネウネと蠢く僕の魂を取り出した。そこに前に切除した僕の魂二つをゆっくりと近づけて接着面を広げて、血管のようなモノを引きだして繋げていく。全ての作業が終わるのに10分もかからなかった。そして、魂が僕の身体に戻ってくる。不思議と・・・じゃないね。ラケシス様の祝福と加護を貰ったんだから、なんか力が溢れるような気がする。
「「あっ」」
二柱の女神様が声を上げる。嫌な予感がして声をかける。
「あの~、何かありましたか?」
「ガイウス、貴方の存在が私達にさらに近くなったわ。ステータスを見てみなさい。」
フォルトゥナ様に言われてステータスを表示すると、“種族:人族(亜神)”となっていた。
「あの、“亜神”となっていたんですが・・・。」
「うむ、ほぼ我ら神と変わらなくなったな。こちらの空間にずっといるかね?我らはそれでも構わんぞ?亜神ならすぐにでも神となろう。エシダラ界に戻れば時間が少々かかるだろう。」
少々の期間の長さが怖いので聞かないでおこうかな。まあ、あれだね、僕はまだ人間として暮らしていたいよ。
「えーっと、遠慮しておきます。」
「ふむ、そうか。」
「私はガイウスの思いを尊重するわ。ん?あら、アイツが気づいたみたいね。」
「なら、
「じゃあね。」
「はい、ありがとうございました。」
そして、僕はベッドの上で目が覚めた。痛みはあるけど筋肉痛程度になっている。身体も動く。声も出せる。僕は部屋の前に待機しているであろうダグを呼ぶ。
「ガイウス様!?動かれても大丈夫なのですか?」
「うん、大丈夫なようになったよ。フォルトゥナ様にお力を借りた。」
「なるほど。」
すぐに信じくれた。使徒の肩書きは伊達では無いね。
「レーヴィさんとマイユさん、ジョージを呼んでくれるかな?」
「承知しました。お待ちください。お食事はどういたしますか?」
「軽いモノをお願い。」
「はい、後ほどお持ちします。」
ダグが敬礼して退室する。
数分後、3人が揃ったのでなぜあのようになったのか、地球の神様とかラケシス様のことを言わないで、魂を削ってまた元に戻した話しをする。
「そして、この通り、痛みはありますが動かせるようになりました。フォルトゥナ様のおかげですね。」
「・・・魂に干渉するとは、ガイウス様が使徒といえども流石は女神様であらせられますな。」
「本当に。心配を致しました。」
「いやあ、流石ですね。あ、点滴はもう外しましょうか?魂による痛みならモルヒネも貼り薬も関係ないですね。どうします?」
レーヴィさんとマイユさんは驚きを隠しきれない様子で、召喚された存在であるジョージは特に何ともなくこの後の処置について聞いてきた。
「レーヴィさん、マイユさん。一応、今週は自宅療養ということで変わらずにしておいてください。ジョージ、点滴は今の輸液が無くなれば外してもらっていいかな?それじゃあ、これを食べたら僕は寝ます。」
疲れたよ。精神的にね。
明けて18日の火曜日。8月の真夏の太陽が照り付けるなか、クレムリンの中はエアコン?っていう道具が動いていて、快適な温度を保ってくれている。ジョージの説明と【鑑定】によると地下の核融合炉のおかげらしい。
まあ、そんな感じで冷えた牛乳とパンと肉炒め、サラダを朝食として美味しくいただく。思いがけず、一週間の休みを手に入れられたけど身体は戦闘に関してはまだ十分に動くとは言い難いね。黒魔の森の魔物相手なら少し苦戦するかも。まあ、トイレに行ったり、お風呂に入ったりといった日常生活に支障はないぐらいになったんだけどね。
それと、帝国の方では動きがあったみたい。国境を挟んでお隣の領主であるナボコフさんから時候の挨拶の手紙と共に届いたんだよね。先の海戦と国境での野戦で敗北したことで陸軍、海軍共に財務大臣から直々にお叱りを受けたらしい。単純に負けるならまだしも、多くの兵と指揮官、貴族階級が戦死、あるいは捕虜になったからねぇ。
戦死者の家族には一時金と今後の生活保障、捕虜に関しては返還のための莫大なお金がこの1カ月半で急に必要になったわけだから。まあ、そういうわけで、今回の野戦の後始末のための交渉団の派遣も揉めに揉めているそうで、最初はナボコフさんをとご指名があったそうだけど「私は無謀だと止めた。辺境伯である私にその役目を任せるからには相応の褒美があるのだろうな?」と言ったら謝罪の後は何も言ってこなくなったらしいよ。大変だね。
ま、僕は一週間の休暇をゆっくりと過ごさせてもらおうかな。
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