第225話 夜戦・その2

 コロナワクチン3回目の副作用で40℃熱が出て、数日続いていたせいで、この作品しか仕上げられませんでした。残りの2作品は近日中に仕上げたいと思います。

 副反応は1日で治まるとかドヤ顔で言ってた上司の顔をぶん殴りたい。


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「『帝国軍の退路を断った。僕たちはこれより突撃を開始する。』」


『了解しました。ミスター豊久と呂布将軍にお伝えします。』


「『頼んだよ。ジョージ。』突撃しますよ!!敵陣に突入後は事前の打ち合わせ通り二人一組で攻撃を続けてください。」


 暗闇から了承する声が返ってくる。


「では、突撃!!」


 【火魔法】の使える全員で160cmほどのファイアボールを馬防柵、防柵に放つ。燃えながら吹き飛ぶ柵を無視して、騎馬突撃をかける。


「て、敵っ・・・、ガ・・・?」


 僕たちにいち早く気づいた歩哨をウィンド・バレットで撃ち殺す。彼は自分の腹に開いた穴を不思議そうに見ながら倒れ伏した。そんな光景があちこちで見られる。でも30秒もせずに、


「後方から敵襲ー!!」


 少しと遠いところにいた歩哨が声を上げる。それが帝国軍陣内に広がっていく。でも、もう遅い。僕達9騎は陣内に展開を始める。とにかく混乱させるのが僕たちの役目だ。ゲーニウス領側で戦闘を展開している呂布達の援護になるように敵の増援を遅らせないといけない。


 僕は漆黒のマントを収納し、輝くヒヒイロカネ製鎧が目立つようにする。そして、わざと大声で他の8人に指示を出す。「おい、あれが指揮官だ!!」「子供じゃないか!?」「子供だろうが敵は敵だ。攻撃を集中しろ!!」「チッ。おい、あの子供目掛けて全力攻撃だ。」うん、上手く釣れたみたいだね。


 プローホルの様子を【遠隔監視】で確認する。鎧を着ながらも頭を押さえて不機嫌そうにしている。そして、子爵と呼んでいた人からまた薬らしきモノを飲んで落ち着く。ふむ、【鑑定】できないのかな?あ、できた。えっと、状態を確認したいんだよね。あと、薬みたいなヤツの名称を知りたい。槍で敵をいなしながら鑑定結果を見ていく。


 ん?これかな。罹患という欄があって、そこに「脳腫瘍(悪性髄膜腫)、薬物中毒。」とある。ふむ。で、薬みたいなモノが「アヘン抽出物(麻薬、痛み止め)、錠剤、常習性あり。」あー、うん、これはよろしくないね。脳腫瘍ってのが何なのかは詳しくわからないけど頭の中の病気だろうね。ちょっと、ジョージに聞いてみよう。


「『ジョージ、今、大丈夫?』」


『話しができる程度には。』


「『脳腫瘍っていう病気わかる?』」


「『あー、はい。脳の癌ですね。結構、体とか性格とかにも影響を与えるみたいですね。こちらの【ヒール】とかでは治らないかと。あれは細胞が自然に変異して悪性となってできるので。進み具合によりますがその部分を切り取る必要があるかと。』」


「『アヘン依存になるぐらい痛み止めを服用していたら?』」


『基地の医療センターに早期にぶち込むべきです。』


「『ありがとう。』」


『いえ。』


 ふーん、なるほどね。プローホルがおかしくなったりするのはこのせいだろうね。だとすると、治療を受けさせて正気の彼と話しをしてみたいな。


「『スカイウォッチャー。』」


『はい、閣下。』


「『航空部隊に攻撃してほしくなくて、レンジャー連隊に捕虜にしてほしい人物がいるんだが、どう教えたモノかな?発煙筒がいいかね?』」


『そうですね。発煙筒でお願いします。何色ですか?』


「『赤だ。』」


『了解しました。エコー7に確認させマーキングしますので目標の近くで発煙筒を焚いてください。』


 僕はすぐに発煙筒を取り出して、発火させプローホルの天幕の近くに【風魔法】で補助して放り投げる。赤色の煙に帝国軍は驚いていたけど害が無いとわかると、僕達への攻撃を再開する。


『先程の騒動は?』


『敵が煙幕の展張に失敗したようで、煙幕を出す筒が幕外に落ちただけです。』


『なぜ、失敗だと判断する?ラヴレンチー子爵。前衛を攻め寄せている敵主力に我らの居場所を教えるためとは考えられんか?ヒュー参謀長!!貴官の考えは?』


『ハッ。プローホル様と同意見でございます。しかしながらこのタイミングでは少々おかしいかと。陽も上っておりませんし、前衛も突破されていません。何か別の意図があるかと。』


『ならば、その敵の意図を示すのが貴様の役割だろう!!これだから平民上がりはっ!!。』


『そこまでにしろ。子爵。参謀長、退室してよろしい。』


 どうやらまともな状態のプローホルみたいだね。ヒュー参謀長を別画面に映すと司令部幕舎から出て大きく背伸びをしていた。まあ、貴族だけの空間だもんね。気疲れするだろう。彼は、少し離れた天幕に入る。


『参謀長閣下、お帰りなさい。いかがでした?』


『貴族の方々は楽観視されているようだ。プローホル様はいつもより調子がよさそうでしっかりと指示を出されていた。ところで、司令部の天幕近くに後方からの敵が煙を焚いたようなんだがどう思うかね?』


『何かの合図か、目印でしょう。しかし、前衛が突破された報告はまだありません。被害報告は恐ろしいほど来ますが。』


『・・・私は敵がプローホル様があの天幕にいるとわかっているのではないかと思っている。』


『この司令部区画は全てが同じ大きさ、形の天幕ですよ?可能でしょうか?』


『12歳で辺境伯になる実力を持つ人物が率いているんだぞ。なにが起きてもおかしくあるまい。』


『親衛隊を動かしてこの区画の防備を固めましょう。プローホル様の天幕のみを厳重に防備すれば敵の思うつぼかと。』


『よし、上申してこよう。』


 よし、親衛隊1,500は司令部区画の防衛にまわるね。通常部隊も展開しているけどレンジャー連隊なら上手くできるだろうね。僕たちは暴れまわりながら帝国軍の後衛を滅茶苦茶にして、司令部区画を避けながら中衛へとその穂先をぶつけようとするところにスカイウォッチャーから警告が来た。


『全部隊へ。敵、竜騎士ドラグーン157騎、300秒後に戦域上空へと到達予定。』


『間に合ったな。目標、確認。AIM-9X(サイドワインダー)で補足できるな。全機、突っ込むのは少し後だ。AIM-9Xで敵さんの出鼻をくじくぞ。スカイウォッチャー、目標の割り当てを。』


『了解。・・・どうだ?』


『ガーデルマン。』


『大丈夫です。大佐。』


『よし、ロケットで眼をやられるなよ。フォイア!!FOX2!!』


 空を見上げると幾条もの炎の尾を引いてミサイルが飛んでいくのが見えた。数秒後、ナボコフ辺境伯領上空でミサイルの小爆発とそれに照らされて飛竜ワイバーンが墜ちていくのが見えた。普通の人なら見えないだろうね。チートのおかげでよく見えるよ。


『よし、格闘戦だ。ガンポッドはまだ使うなよ。20mmで仕掛ける。Los!!Los!!(かかれ!!突撃!!)』


 ルーデル大佐の掛け声とともに空が騒がしくなる。遠雷のようなF-15Eのアフターバーナーを焚いたジェットエンジンの騒音が響く。そして、空に曳光弾の光の線がいくつも走る。敵の飛竜ドラグーン隊はこれで終わりだね。20mmバルカンの直撃を受けて飛べるはずがないもの。


 さて、上空はルーデル大佐達に任せて僕は地上に専念しよう。すでに4時30分を過ぎて5時が近くになっている。帝国軍の中衛にある補給所を襲い占領しクリス達と合流する。誰も負傷してなくてよかった。補給所の備品を使って小休止がてら武器の手入れを交代で警戒しながら行う。


「みんな、大丈夫でした?」


「問題ありませんでしたわ。ユリア殿が上手く援護をしてくださったので、前面の敵のみに集中すればよかったので。」


「私はクリス様が討ち漏らした敵を討つだけだったので楽でしたよ。」とクリスとユリアさんペア。


「んー、私達はいつも通りだったかしら。」


「そう。私が後衛でローザが前衛。いつも通りで問題なし。」とローザさん、エミーリアさん。


「俺とレナータ嬢はただ暴れただけだからなぁ。」


「まあ、そうだね。あたしも気持ちよく暴れられたよ。」とアントンさん、レナータさんペア。


「少し退屈だったのう。」


「私達は龍なのですから、そこを忘れないように。」とフリードリヒさんとアンネリーゼさん。


 うん、問題無いようでよかった。


『スカイウォッチャーよりガイウス卿、聞こえますか?』


「『どうした?』」


『イーグル隊が地上攻撃を行います。』


「『わかった。イーグル1と直接交信する。』『イーグル1、ルーデル大佐。ガイウスだ。』」


『こちら、イーグル1。ガイウス卿、どうされました。』


『呂布隊、島津隊、それに我々別動隊はビーコンで把握しているだろうが、赤色の発煙筒の周囲は攻撃しないようにお願いしたい。』


『確認します。ガーデルマン見えるか?』


『大佐、2時の方向に見えます。』


『お、あったな。ガイウス卿、視認しました。』


「『それ以外は砦に攻撃しなければ自由にしたまえ。地上の我々は少し休ませてもらおう。』」


『了解。』


 数秒後には低空進入してきたF-15E編隊のガンポッドが火を噴き、“ボンッ!!”“ドンッ!!”と着弾音がした後に“ドッォォォォォ!!”という連続した発射音が響き渡る。至近弾を受けた帝国兵は吹き飛び、不幸にも直撃を受けた兵は一瞬で血煙となっていた。エグイねぇ。ま、これも戦争だよね。そろそろレンジャー連隊がヘリコプターでやって来る。第2戦の開始はすぐそこまで迫っている。

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