第191話 航空戦力増強
式典の翌日26日月曜日の早朝、僕とピーテルさんは騎乗しながらエドワーズ空軍基地に向かっていた。ルーデル大佐とコールドウェル大佐に頼まれていたモノを【召喚】するためだ。昨日の夕方にクスタ君に知らせに行ってもらっているから準備は出来ているはず。
基地の格納庫前に着くとシンフィールド中将とルーデル大佐、コールドウェル大佐、整備員やパイロット達が敬礼で出迎えてくれた。馬上から答礼し下馬する。
「おはようございます。ガイウス卿。今回はルーデル大佐とコールドウェル大佐の要望を叶えてくださるということで基地を代表して感謝します。ところで、後ろの御仁はどなたでしょうか?」
「おはよう。中将。彼はピーテル・オリフィエル準男爵だ。飛び地となる属領オリフィエル領を治める代官だ。」
そう答えると中将は頷き、ピーテルさんへ向かって右手を差し出した。
「このエドワーズ空軍基地の総司令官をしておりますドゥエイン・シンフィールドと申します。爵位はございません。ピーテル卿と同じ旗の
「こちらこそ、ドゥエイン殿。」
そう言ってピーテルさんは握手をする。特に問題ないみたいだね。
「さて、では始めるとしようか。ピーテル卿、昨日も言った通りこの能力のことは口外厳禁だ。見たら後戻りできなくなるぞ。」
「かまいません。閣下。」
「よし、では【召喚】」
すぐに巨大な魔法陣と光が現れ終息する。後にはルーデル大佐の要望であるSG2(ドイツ空軍第2地上攻撃航空団)の搭乗員たちとA-10CにF-15E“ストライク・イーグル”。そして、コールドウェル大佐の要望である“ハインド”が在った。ブラックホークやリトルバードに比べるとなんか凄くゴツイヘリコプターだね。
「こ、これはモックアップのみで終わったはずのスーパーハインドMk.V!?」
「何か問題があったかな?コールドウェル大佐。」
「いえ、これは予想以上のモノを戴きました。早速、慣熟飛行訓練を行い次回の出撃に間に合わせます。」
そう言って、コールドウェル大佐は部下たちに指示を出し始める。ルーデル大佐の方を見るとSG2の隊員達を整列させて訓示していた。
「貴官らがこの世界においても私の指揮下に入ってくれることを嬉しく思う。ここではアカ共はいないが魔物と呼ばれる生物が脅威となっている。勿論、国同士の争いもある。我々はガイウス・ゲーニウス辺境伯閣下の
両大佐の様子を見てピーテルさんの所へと向かう。僕は笑顔を作りながら問いかける。
「どうだったかな。私の能力【召喚】は?」
「・・・申し訳ありません。言葉が見つかりません。ただ、凄まじいとしか。これらは噂の“魔物狩りの鉄の鳥”なのですよね?」
「ああ、そうだ。」
「それをこれほどとは・・・。」
「まだ、上手く頭の中が整理できないだろう。一旦、行政庁舎に行こうじゃないか。」
「・・・はい、閣下。」
ポカンとして“心此処に有らず”の状態のピーテルさんとニルレブの街へと向かおうとするとシンフィールド中将が声をかけてきた。
「ガイウス卿。申し訳ありませんが、先日、お話ししたAWACSもお願いできないでしょうか?それと、航空機の航続距離を延ばすために空中給油機という種類のモノも。」
「ああ、そうだった。何か決まった機種名はあるのかね?」
「E-3G“セントリー”16機とKC-46“ペガサス”30機をお願いいたします。」
「承知した。【召喚】」
駐機場にP-8並みの大きさの飛行機が一気に46機も現れた。すぐにシンフィールド中将が、
「乗員たちに現状の説明を行いに行きます。お止めして申し訳ありませんでした。」
と敬礼をしながら言って、僕の答礼を待って大型機の群れに歩いていく。さてと、それでは行政庁舎に向かおうかな。
行政庁舎までの道中もピーテルさんは上の空だった。ヘニッヒさん達に挨拶をして自分の執務室に入るとピーテルさんも現実に戻ってきたようだ。
「取り乱して申し訳ありません。」
「別に騒いだわけではないですしかまいませんよ。あ、クスタさん。お茶を僕とピーテル卿の分をお願いします。」
クスタ君にお願いするとすぐに「わかりました。」と一礼して部屋を出て行った。
「あの能力はヘニッヒ殿やクスタ秘書官もお知りなのですか?」
「いえ、シュタールヴィレと護衛騎士の3名、イオアン殿、ツァハリアス殿、そしてピーテル殿、貴方だけです。」
「わかりました。では能力についてはこれ以上お聞きするのはやめにしましょう。強力な戦力、しかも
「ええ、それで結構です。おかけになられたらいかがです?」
「ありがとうございます。しかし、お言葉遣いは変わらないのですね。」
ふぅとため息をついて聞いてくる。
「まあ平民上がりですからね。以前も言ったかもしれませんが公の場でなければ素のままでさせてもらいます。」
ドアがノックされ「お茶をお持ちしました。」とクスタ君の声がしたので「どうぞ。」と答える。慣れた手つきでお茶を僕とピーテルさんの分を用意してくれる。
「クスタ秘書官はおいくつですかな?」
クスタ君がピーテルさんの質問に手を止めて答える。
「私は現在13歳です。」
「それは・・・。ご出身はどちらか聞いてもよろしいかな?」
「はい。ゲーニウス領オツスローフの孤児院です。住んでいた村は魔物に襲われて無くなりました。両親もその時に。」
「これは、辛いこと聞いてしまった。配慮が足りず申し訳ない。」
「いえ、お気になさらないでください。孤児院での生活は辛くは無かったですし、今はこうして働いてお給金を貰えていますし、ガイウス様をはじめ周りの方々が優しいので幸せですから。」
そう言って照れたようにはにかむクスタ君をピーテルさんは眩しいものを見るように目を細め、
「そうですか・・・。私も代官として領民たちを幸せにしなければならないですね。」
「ピーテル閣下なら出来ると思います。なにせガイウス様が代官として任命された方なのですから。」
クスタ君はそう笑顔で答えるとお茶を淹れる作業に戻る。お茶を淹れおわりカップを僕とピーテルさんの前に置いてくれる。それとお茶菓子も。
「ガイウス様。お話しの邪魔になるようでしたら退室しますが、いかがしましょう?」
「ああ、通常通りに業務をしていてください。ただ、此処で聞いたことは口外厳禁です。」
「わかりました。通常の守秘義務と同じように扱えばよろしいでしょうか?」
「ええ、それで大丈夫です。」
納得した表情をしたクスタ君は「それでは業務に戻ります。」と言って秘書机で作業を再開した。
「では、帝国海軍の侵攻についての対処を話し合いましょう。ツァハリアス殿には援軍を送ることは伝えてありますので問題ないでしょう。」
「はい、閣下。では、オリフィエル領海軍から領海警備を差し引いて出せるのは・・・。」
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