第170話 決断
小会議室から出るときにヘニッヒさんに手が空いている人を1人、ピーテルさんを呼びに行ってもらうようにお願いした。僕が直接言ってもよかったけど、立場上やめておいたほうがいいとヘニッヒさんに止められた。貴族って面倒なことが多いね。
それで、今、僕の執務室の応接机を挟んでピーテルさんと対面しています。お茶と茶菓子はラウニさんが用意してくれた。
「ピーテル殿、先日のお話しなのだが、オリフィエル領を陛下から下賜して戴こうと思う。そして、代官は貴殿に頼みたい。また、立場上、爵位が必要であろう。貴殿に準男爵位か男爵位を下賜していただけないか、陛下に書簡で先の件と合わせて伺おう。ということで貴族としての報告はお終いです。貴方を相手に偉ぶって話すのは疲れます。」
「ご決断ありがとうございます。粉骨砕身務めさせていただきます。しかし、爵位のほうはご無理をなさらないでください。爵位が無くとも、閣下の任命した代官という肩書きがあれば十分でしょう。」
「貴族年金があれば奥方にも楽をさせてあげられるのでは?ドレスや装飾品などにもお金はかかるのではないですか?」
「ハハハ、妻はいわゆる宝石などの装飾品には興味がないのです。もちろん、贈られたモノは大事にしますが、自分から欲しいと言ったことは一度もありません。ドレスも基本は手直しすることが多いですな。新規に作ったのは何年前のことになるやら・・・。妻は“そのような余剰資金があるならば領の発展につなげるべきで、それでオリフィエル家も富むことができます”と言っておりまして、妻の助言を受け入れていたら実際にそうなりました。」
「立派な奥方ですね。」
「はい、自慢の妻です。」
その後は、他愛ない話しを1時間ほどしてピーテルさんは宿に戻った。僕はすぐに執務机に向かい、陛下への書簡を準備した。書簡はすぐにヘニッヒさんの所に持っていき、その他の報告書の王都への来週の月曜の定期便と一緒に運ばれることとなった。これで、厄介事は1つおしまいかな?
あー、でも領地の件は早く届けた方がいいよねぇ。ヘニッヒさんの所に行き、書簡を回収。どーしようかなぁ。仕方ない、休養中だけど彼らに頼もう。扉を開き、廊下に顔だけ出して大声で言う。
「誰か、私の屋敷まで行き、呂布将軍と高順と張遼を呼んできてくれないか?」
すぐに若手の文官さんがやって来て、用件の内容を確認してクレムリンに向かってくれた。呂布たちはダグ達奴隷と共に月曜日の深夜にクレムリンについていた。火、水と休養させておいたから今から王都へ向けて書簡を運んでもらっても大丈夫でしょ。
30分後には鎧の音と共に3人がやって来た。
「只今参りました。」
「休養中に悪いね。急ぎの仕事を頼みたくて。」
「はっ、何なりと。」
「この書簡を王都、いや国王陛下まで届けて欲しい。僕の使いだと証明するために家紋入りの短剣も渡しておくよ。」
「御意。立ち塞がるモノは全て討ちとってもよろしいので?」
「それが、平穏に生きている人々に害を与えるモノだったら遠慮はいらない。」
「では、2,000騎のうち200騎を引き連れ行って参ります。残りの1,800騎の指揮はガイウス殿にお任せします。高順、張遼、行くぞ。」
「「はっ、将軍。ガイウス様、失礼いたします。」」
サッと、外套変わりのマントを翻して執務室から退室していく。ふう、これなら大丈夫だろう。呂布達が窮地に
そんなこんなで、17日の木曜日は終わった。ちなみに、約束の時間にボブ達を冒険者ギルドに迎えに行ったら、他の冒険者から「マスター」とか「師匠」とか呼ばれていた。うん、大体何があったかは想像できるよ。
5月18日金曜日。週末で給料日ということもあって行政庁舎の中は少し浮ついた感じで慌ただしい。今日はクリスとユリアさんは僕の手伝いのために一緒に登庁した。ローザさん達は今日も冒険者として
始業開始の鐘の音ともに業務を開始する。うーむ、今日も次々に書類の束が運び込まれてくる。まあ、これはみんなが真面目に働いてくれている証拠でもあるんだよね。昨日も定時を過ぎても残っている人は沢山いたから、その人たちが提出してくれたんだろうね。
ふう、お役所仕事は事務と接客を同時にこなさいといけないから1人1人の負担が増えてしまうんだよねぇ。なんとかできないかな?ギルドみたいに受付と事務方を完全に切り離しちゃうかな。でも、知識が無いと対応できないし、どうしよう?
というわけで、クリスとユリアさんに相談してみたところ、ユリアさんからすぐに答えが返ってきた。
「退職されて働きたい方を窓口業務専門として雇えばどうでしょう?知識はあるでしょうし窓口業務のみなので賃金は低めに設定すれば出費を抑えられます。年金も貰っているでしょうから、多少、賃金が低くとも問題は無いかと思います。苦情などの処理案件はすぐに責任者が対処するようにしてみたらいかがです?でも、退職された方なら簡単に対処してしまうかもですね。」
「はい、それはいいかもしれません。ヘニッヒさんにも相談してみます。まずは、書面にまとめましょう。」
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