第164話 教官たち
5月16日水曜日早朝、僕は
さて、それでは、【召喚】しましょうか。
「アメリカ合衆国海兵隊新兵訓練教官【召喚】。」
魔法陣と光が消え去ると、ビシッと敬礼をした10名の教官がいた。女性もいて内心驚く。
「アメリカ合衆国海兵隊先任教官のボブ・コンラッド海兵隊最上級曹長以下10名、ただいま着任しました。」
白髪の見えるボブ・コンラッド海兵隊最上級曹長が低くて太く、よく通る声で挨拶をしてくれた。白髪が混じっているが、それ以外の肉体面は他の教官たちと同等に鍛え上げられている。【ステータス】の数値も軒並み高い。
「よく私の【召喚】に応えてくれた。私はガイウス・ゲーニウス辺境伯。ゲーニウス領の領主だ。それでは、皆を紹介しよう。そのあと、諸君らの1人1人の自己紹介をお願いしたい。」
お互いの紹介が終わると、本題に入る。この話しは僕とヘラクレイトス、教官たちがいればよい話しなので、クリス達やシンフィールド中将には戻ってもらう。
「さて、諸君にお願いするのは、私の後ろにいる
「はい、閣下。よろしいでしょうか。」
「よろしい。ドニー・キーン上級曹長。」
「はっ、我々は、軍での生活と規律、人の殺し方などを教育してきました。しかし、龍に乗って戦う者の訓練は行ったことはありません。我々が適任だとは思えません。」
「うむ、君の言うことも最もだ。安心したまえ。諸君に
「閣下、よろしいでしょうか。」
「どうぞ、ボブ・コンラッド海兵隊最上級曹長。」
「ありがとうございます。はっきりといって、我々の施す教育・訓練は体力的にも精神的にもキツイものとなります。我々海兵隊は常に最前線に投入されてきました。そのために訓練内容はキツイものです。それに閣下は12歳です。大の大人でも音を上げる者がいます。それでも、お試しになりますか?」
「午前中は時間が
「了解しました。それでは、これより半日を使用した新兵訓練を行ないます。ここからは、我々は敬語は無しです。しかし、閣下は訓練生なので敬語が必要になります。それでは、諸君、始めるとしよう。」
新兵訓練を始めて30分がすぎた。姿勢の矯正だけなのに泣きそう。てっきり、できなかったら鉄拳制裁とかで拳が飛んでくると思っていたけど、ボブ達はそれをせず、代わりにあらん限りの罵倒をしてくる。そして、罰として腕立て伏せやランニング、腹筋をさせてくる。しかも、彼らも一緒になって腕立て伏せとかに付き合ってくれるから申し訳ない気持ちと情けない気持ちになる。
チート持ちの僕だから腕立て伏せなどの罰についていけている。しかし、募集兵はどうだろうか。冒険者や衛兵、腕に覚えのある者などが多いだろうが、ここまでの罵倒と、すこしでもミスをするとすぐに罰が与えられるというのは耐えられないかも。この訓練は精鋭を鍛え上げられるだろうけどヤバいかもしれない。どうしよう。
「あー、海兵隊最上級曹長。一時訓練中断だ。」
「了解しました。閣下。全員休め。」
ボブの号令で教官全員が休めの姿勢をとる。
「訓練の内容に質問がある。あの顔を近づけての罵倒には何の意味があるんだ?時には複数人でしていただろう?」
「あれは、恐怖感と圧力に対して耐性をつけるためです。大声で罵倒したり怒鳴るのはそのためです。」
「ふむ、なるほど。罰を与える際に一緒にやっていた意味は?」
「我々は新兵の手本とならなければなりません。ですから、どんな訓練でも先に立ち手本を見せなければなりません。そのためです。」
「つまり、“このぐらいの罰は俺でもできるんだからお前たちもできる”ということかね。」
「
「ううむ、なるほど。教官に歯向かったりした場合は?」
「上官の命令を聞けないのであれば、新兵訓練をやめてもらったほうがお互いのためかと。」
「確かに。軍というのは様々な命令が出る場所だからな。」
「そうです。兵であれば、上官の命令が戦争犯罪で無い限り有効であり、実行しなくてはなりません。」
「理由がわかればスッキリとするな。さて、それでは続きをしようか。」
「お言葉ですが、本当に午前一杯やるおつもりですか?」
「最初にそう言ったはずだ。さ、ここからは、教官と訓練生の関係に戻ろう。」
自分がやっていること、やられていることの理由がわかると気持ち的にだいぶ
ちなみに、
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