第162話 ドゥエイン・シンフィールド中将
呆けた顔をしているジョージは無視して、車が到着するのを待つ。程なくして黒塗りの車が止まり、後部のドアが開いて長身で痩身だが鍛えられている肉体をしている軍装姿の男性が降りて敬礼してきた。僕たちも答礼をする。
「アメリカ合衆国エドワーズ空軍基地の司令官を務めています“ドゥエイン・シンフィールド”中将です。こちらの最高責任者はどなたでしょうか?」
「私が貴殿らを【召喚】したアドロナ王国ガイウス・ゲーニウス辺境伯だ。見た目通り、子供だが最高責任者だ。」
「今後はどのようにお呼びすればよろしいでしょうか?」
「ふむ、そこにいるJTACのジョージ・マーティン中尉は“卿”と呼んでいる。それで、構わんよ。」
「それでは、ガイウス卿、ご命令を。」
「うむ、あちらのクレムリンの上空を見たまえ。
「可能か、不可能かで言えば、可能です。しかしながら、格納庫に住まわせるにはいささか数が多いようです。敷地内に別の
「その意見を受け入れよう。場所としてどこがいいかな?」
「ふむ、ヘリがあれば上空から見ることができるのですが・・・。」
「ならば、
「はっ、了解しました。ご一緒させていただきます。」
というわけで、ヘラクレイトスの背に乗せてもらって、クリスも含めて4人と1体で上空から基地を見ることにした。シンフィールド中将が説明をする。
「本基地には14本の滑走路があります。JTACのマーティン中尉がいるのなら航空機は見たことがありますね。それが離着陸するために使うものです。1番長いもので11,909mあります。幅は274mです。」
「大きいな。しかし、航空機はこれほどの滑走距離が無いと飛び立てないのか?」
「いえ、軍用機ならば1,000mほどもあれば離陸できます。着陸の際にはもう少し距離が延びますので2,000mあれば十分でしょう。本基地は様々な航空機の試験にも使われていますので、あのように長大な滑走路があるのです。」
「なるほど、ならば滑走路の近くはやめておいた方が良いか?」
「そうですね。ある程度の距離は取っておいた方が良いかと。今後、航空機を運用するとなった場合、離着陸の失敗などもあるでしょうから、それに巻き込まれないようにすべきかと。現在ある格納庫の近くが一番無難でしょう。」
「なるほど。しかし、格納庫の近くであると、航空機の騒音が凄そうだがどうだろうか?」
「ふむ、確かにそうですね。でしたら、あの辺りはいかがでしょうか?滑走路からも格納庫からもほどよく離れています。」
中将が指さした先は確かに滑走路と格納庫からある程度離れていて良いように思えた。
「うむ、あそこにしよう。ヘラクレイトス、高度を下げてくれ。」
「承知した。」
「風雨をしのげる時点で岩山での生活と比べると段違いだ。大きさも問題ない。流石はガイウスだ。」
「ハハハ、私は【召喚】しただけだ。本当に凄いのは
「気を遣わせて申し訳ないな。」
「気にすることはない。」とヘラクレイトスに返答しながら、シンフィールド中将のほうに視線を向けて尋ねる。
「中将、このようなかんじとなったがどうかな?」
「よろしいかと。ここなら今後、固定翼機や回転翼機の部隊を【召喚】しても離着陸には支障はないでしょう。」
よし、シンフィールド中将のお墨付きをもらった。これで、一安心かな?それでは、ウルリクさん達の所に戻ろう。
「さて、では戻るとしよう。衛兵隊を待たせすぎるのも気の毒だからな。ヘラクレイトスは我々を降ろした後は、群れの皆を龍舎に誘導すること。」
「承知した。」
結局、エドワーズ空軍基地の施設は使用せずに龍舎を新しく【召喚】するという結果になったけど、今後を見据えれば、まあいいんじゃないかな。
そんなことを考えていると、ウルリクさん達の所に戻ってきた。僕たち4人が降りるとヘラクレイトスは群れのほうに向かい
シンフィールド中将も乗ってきた車で基地施設まで戻るそうだ。ついでだからジョージの面倒をエドワーズ空軍基地で見てもらうようにした。何回も【召喚】するのが面倒くさいからね。うちでもよかったけど、同じ空軍の方が楽でいいだろうしね。それに、地球のご飯は基地じゃないと食べられないだろうし。
シンフィールド中将とジョージを乗せた車が去ったのを確認して、ウルリクさん達に声をかける。
「さて、これで、暫定的にだが我が領の軍事力が向上した。
「そうですな。」
と笑顔のウルリクさんと違って、後ろの衛兵さん達は顔が青くなっていた。なんでだろうねー。不思議だねー。
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