第149話 裁判
昨日は結局、役所の定時の17時を過ぎてまで手伝いをした。アルムガルト王都邸に戻ったのが19時だった。夕食を食べて、風呂に入ってすぐに寝た。そして、今日、5月7日月曜日はピーテル・オリフィエル侯爵の裁判の日だ。減刑の嘆願書があまりにも多くて早く裁判をして判決を出さないと内務省司法部がパンクしてしまうとの判断だ。休日出勤ご苦労様です。
そのため、休日であるはずの昨日のうちに起訴が行なわれている。そして、今日のうちに公判、判決というかなりのスピード裁判だ。他の捕まった者達には厳罰の嘆願書が届いているらしく、こちらは通常通りに行うそうだ。ま、人数も多いからね仕方がない。
それで、僕は今、証人台にて被害者として立っているのだけども、言うことは一つだけ、
「ピーテル・オリフィエル侯爵の国への思いが、今回の騒動の原因の一つであるから、私はその思いを責めることはできない。また、私は被害者ではあるが、実質的な被害には遭っていない。であるから、私、ガイウス・ゲーニウスは彼の者に対する減刑を求めるものである。」
はい、これで僕の裁判での出番は終了。後は判事さん達の出す判決を傍聴席で待つだけ。それで、判決だけど懲役15年執行猶予8年ということになった。大量の減刑嘆願書と被害者である僕の減刑を求める声を受けてらしい。あ、罪状は“高位貴族に対する殺人未遂罪”ね。因みに、他の貴族達とベアトリース達側室に“外患罪”も適用されるみたい。
そして場所を移して王城の謁見の間。近衛兵さんにガッチリと囲まれたピーテルさんが国王の前に跪いている。僕はそれを貴族側の列に混じって見ている。これから、爵位と領地に関する沙汰が下される。
「ピーテル・オリフィエルに告げる。お主の犯した罪はたとえ国のためであったとしても見過ごすことは出来ぬものである。よって余はアドロナ王国国王としての沙汰を下す。
「一つだけございます。」
「言うてみるがよい。」
「なぜ、そのように軽い罰で済んでいるのでしょうか?」
「国民とガイウス・ゲーニウスが願ったからだ。この答えでは不満か?」
「いえ、感謝申し上げます。」
それで、やり取りは済んでピーテルさんは謁見の間から退室した。陛下も退席されると、武官さん、文官さん、貴族が三々五々に解散する。僕は、陛下と宰相のアルノルトさんに呼ばれているので陛下の執務室へと向かう。
執務室の前で
「だいぶお疲れのようで。【ヒール】をかけましょうか?」
「いらんいらん。このようなことでいちいち【ヒール】に頼っていると依存症になってしまうわ。アルノルトはどうだ。」
「私も必要ありませんな。何とか一番厄介なことが終わりましたから。」
「そうですか。では、なぜ私はここに呼ばれたのでしょうか?」
「あー、ピーテルから男爵位以外を剥奪したであろう?オリフィエル家は侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵を持っておってな、今回の件で男爵位以外が宙に浮いた状態になっておる。なので、お主にやろうと思ってな。」
「えっ、いりませんよ。そんな厄介事の火種みたいなもの。」
「ガイウス殿、今回の一番の功労者は被害者でもある貴殿です。何かで
そう言って、頭を下げるアルノルトさん。陛下も頷いている。これは断れないなあ。
「わかりました。それでは、侯爵位、伯爵位、子爵位、騎士爵位の4つを有り難く戴きます。」
「ん?4つではないぞ、ガイウス。アルノルト説明を。」
「ガイウス殿、確かに侯爵位、伯爵位は1つずつですが、子爵位は2つ、騎士爵位は14あります。オリフィエル家は王国でも古い家でありますから、その代の当主が功績を挙げ、爵位を下賜され続けてきている。しかも、珍しく分家を作っておらんのですよ。」
「ああ、それで、爵位が貯まりに貯まっているということですか?」
「まあ、簡単に言うとそうですね。」
「しかし、家臣に下賜することもできたでしょうに。」
「あのピーテル卿がそのようなことをするとお思いですか?彼は、功績を挙げた家臣には最大限の名誉を与えるために、陛下からの下賜を申請されているのですよ。」
「それは、何と言いますか、凄いですね。」
「うむ、だからこそピーテルが衛兵隊に捕縛されたと聞いた時は驚嘆したわ。まあ、すぐにピーテルの
陛下はそう言って、深くため息をつき椅子にもたれかかる。
「まあ、ガイウス。お主のような人物に爵位を渡せばピーテルも納得してくれるであろう。大事に使ってくれると嬉しい。」
「陛下とピーテル殿の思いを裏切らないように努力いたします。」
「うむ、ガイウスよ、頼んだぞ。アルノルト。」
「ガイウス殿、こちらの書類の束が貴殿に爵位を与える
アルノルトさんがそう言って渡してきた書類を受け取る。枚数を確認すると19枚ある。“伯爵位を授爵する”という書類が2部ある。
「アルノルト殿、伯爵位の書類が2部あるのだが。」
「ああ、それは余からの手間賃だと思うてくれ。あとで謝礼金も出すがまずは爵位を授ける。好きに使うがよい。」
「ありがとうございます。陛下。」
うへえ、面倒くさいなあ。取り敢えずは貰っておくけどさ。その後は、30分ほど雑談して王城を出た。そのまま、アルムガルト王都邸に戻り、着替えもせずにベッドに倒れ込む。ここ数日は本当に疲れた。僕はそのまま意識を手放した。
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