第94話 娘さんも幸せにします
朝食のあと、ローザさん達と合流して夕暮れ時にはインシピットに戻った。道中では特に何も無かったので割愛だよ。ただ、インシピットの町に入る時に、入門の列に並んで待っていると、衛兵隊長のドルスさんが走ってやって来て、詰所の方に案内される。
「ガイウス・ゲーニウス辺境伯様、クリスティアーネ・アルムガルト様。貴族証をお持ちであれば、優先してお通ししますので、次回からはそのようにお願いいたします。」
「本音はなんですか?あと、口調もいつも通りでいいですよ。」
「ガイウス君。君は今、もの凄く注目されている人物だ。そんな人が列に並んでいるのを気づかれると騒ぎになる。そして、私の仕事が増える。」
「あー、フォルトゥナ様の教会へのお告げとかのせいですよね?」
「まあ、それもあるけど・・・。君、自覚は無いのかい。12歳で武勲によって辺境伯、さらにはフォルトゥナ様の使徒など英雄物語の主人公ではあるまいし。今、この近辺で最も注目されている人物だよ。君は。ローザ君たちも年長者なのだから、そこのあたりを注意してほしいな。関係ないって顔していますけど、ユリアさんにアントン殿もですよ。・・・はあ、確認が終わりましたので、どうぞお通りください。」
詰所の中を通り、インシピットの町に入る。そのまま、冒険者ギルドに行って、エレさんにアンスガーさんに取り次いでもらうようお願いする。すぐに案内できるということだったのだが、クリス以外のみんなは併設食堂で待っとくとの事だったので、僕とクリスの2人でアンスガーさんに会う。
執務室の扉をノックし、
「アンスガーさん、ただいま戻りました。」
「ああ、ガイウス君、クリスティアーネ、無事に戻ってきてくれて何よりだ。さて、時間も時間だし、手早く用件を聞こう。」
柱時計に目をやると、17時23分。確かに、手間をとらせるのはいけないね。クリスを見ると、頷いたので、
「明日、23日の月曜日の午前10時にダヴィド・アルムガルト辺境伯様とヴィンフリート・アルムガルト伯爵殿のお2人にお会いして、お話しをしたいので、先触れをお願いできないでしょうか?」
そう言いながら、
「
「はい、そうです。」
「では、こちらからのお願いも聞いてもらえないだろうか?」
「なんです?」
なんかの魔物の討伐かな?
「フォルトゥナ教教会“インシピット”支部の神官長ベドジフ殿が、23日から28日の間に教会に来てほしいということだ。まあ、もっと丁寧な言葉だったがね。」
「あー、わかりました。伺います。」
んー、少し面倒くさいことかなあ。ま、教会に行けばわかることだし、今考えても仕方ない。
「おいおい、フォルトゥナ様の使徒がそんなに下出に出なくてもいいんだよ。“行ってやる。”ぐらいの気持ちの方が、相手もわかりやすくていいだろう。」
「生憎、そういう
アンスガーさんは顎に手をやりながら、
「フムン。全く、君は歳相応以上の人格者だ。子供だから、わがままを言ってもいいのだよ。」
「結構、自分の好き勝手に生きているつもりですよ。僕は。」
「わかった。先触れの件は了承した。父上と兄上に伝えておこう。迎えは必要かね?」
「いえ、必要ありません。飛んでいきます。」
「いくら、君の力でもクリスを抱えてジャンプしても本邸まではつかんよ?」
おっと、
「フォルトゥナ様の使徒になったので、鳥のように飛べます。ですので、空を飛んでいきます。」
「なっ!?本当かね!?凄いな。それは。・・・わかった。門番の衛兵にも伝えておこう。それと、
「そうですね。お願いします。」
「うむ、任された。さ、夕食の時間だ。ユリアさんたちを待たせているのだろう?早く行った方がいいと思うよ。」
「わかりました。それでは、失礼しました。」
「失礼しました。叔父様。」
クリスと共に礼をして、執務室を出る。そのあとは、奥さんでギルド受付嬢のエレさんの仕事上がりを待つというアントンさんと別れ、“鷹の止まり木亭”に戻り、夕食を摂った。明日の予定については既にみんなに話しているので、アントンさん、ローザさん、エミーリアさん、ユリアさんの4人で適当に
ちなみにユリアさんは準1級の冒険者証を持っている。流石は、騎士爵持ち。ついでに云うとユリアさんの家名は、レマーだ。だから、正式な名前はユリア・レマーとなる。余談だね。
夕食をすませて部屋に戻る。ちなみに、折檻はもう終わりだ。僕が辺境伯になったので、精通した時点でチョメチョメすることになった。ユリアさん曰く、跡取りは、早ければ早い方がいいとの事だった。そして、子沢山になったら、家臣団を形成すればよいとも言っていたね。まあ、明日次第さ。
そして、23日の午前9時50分、僕は、両脇を迎えに来た
そこに着地すると、本邸からダヴィド様とアライダ様、ヴィンフリート様とドーリス様が護衛とともに出迎えに来た。
「ガイウス・ゲーニウス辺境伯殿。
「ガイウス・ゲーニウス辺境伯様。私も父と同様に、ご訪問を歓迎します。して、用件とは?」
僕は衛兵さんと
「クリスティアーネ様を伴侶とさせて戴きたい。そして、クリスティアーネ様も幸せにしましょう。」
「「「「はっ!?」」」」
あれ、なんかやっちゃったかな僕。アライダ様が笑みを浮かべながら、
「このようなところで、クリスティアーネを伴侶にと願ったのは、百歩譲ってお許ししましょう。まだ、貴族の礼儀とかもお知りではないでしょうから。しかし、クリスティアーネ“も”ということの意味を聞いてもよろしいでしょうか?もちろん、屋敷の中で。」
クリスは隣でため息をつき、ダヴィド様とヴィンフリート様は顔を青くしている。そして、その視線の先のアライダ様とドーリス様のこめかみには青筋が浮かんでいる。あ、これはダメなやつですね。
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