第52話 謝罪

 “処理・解体室”へ向かう道中、疑問に思ったことを聞いてみた。


「なんで、ユリアさんもついてきたんですか?」


「女のカンで面白いものが見れそうだと思ったからですよ。」


 ユリアさんは笑顔で答える。ふむ、面白そうなモノねぇ。さっき、“処理・解体室”にあったのは、魔物の死体と討伐証明部位だけだったけどなぁ。そう思っていると、“処理・解体室”についた。「ガイウス君が来ました!!」と、デニスさんが扉を開けながら言う。


 中に入ると、驚いた。グレゴリーさん以下“処理・解体室”で働いているギルド職員が、みんな土下座していた。その列にデニスさんもすぐ加わった。あまりのことに僕はポカーンと口を開け、ユリアさんはその様子がおかしいのか口を手で覆いながらクスクスと笑っている。


「え・・・。一体、何が?」


「疑ってすまなかった。ガイウスの報告通りだった。ギルド職員として申し訳ない。」


 グレゴリーさんが謝罪の言葉を口にする。恐らくは、「オークロードを含む3,784体だと!?ふざけているのか!?」とさっき言ったことだろう。別に僕は気にしてないし、怒ってもいないんだけどなぁ。ユリアさんをチラッと見ると、落ち着いたのか、“コホン”と咳をして、注目を集める。


「グレゴリーさん。ガイウス君が驚いていますよ。それに、彼は怒っていませんよ。」


 と、僕の代わりに言ってくれた。「本当か!?」と言うので、


「本当です。びっくりはしましたけど、怒ってはいません。3,784体なんて数字、そう簡単に信じられるものじゃないですもんね。グレゴリーさん、皆さんも立ってください。」


 「うむ。本当にすまなかった。」と言ってグレゴリーさんが立ち上がると、デニスさんをはじめとしたギルド職員の皆さんも立ち上がる。さて、ここからが本題だ。


「それじゃあ、改めて先ほどの飛竜ワイバーン12体とオークロードを含むオーク3,784体、それと、ついでに狩ったロックウルフを27体にオークのため込んだ財貨の解体と査定をお願いします。」


「おう、任せておけ。ただ、量が量だから解体と査定には時間がかかる。了承してくれるか?」


「もちろんですよ。ところで、どこに出せばいいですか?」


「うむ、ギルド所有の魔法袋に移し替えてほしい。ちゃんと個人識別ができるようにしているから、安心してくれ。おい、用意していたものを持ってきてくれ」


 するとデニスさんが結構な大きさの魔法袋を持ってきた。


「わかりました。それじゃあ、移しますね。」


 そう言って、偽装魔法袋から【収納】した、オーク達とロックウルフの死体を移した。移し終えると、ギルドの魔法袋に“ガイウス”と書いた布を貼り付けた。これで、あとは解体と査定が終わるのを待つだけだ。


「大体1日ぐらいで終わると思うから、また、明日、査定カウンターに来てくれ。」


「わかりました。それでは、お願いします。」


「さっ、ガイウス君、戻りましょう。」


 ユリアさんが手を引いてくるので、僕はそのまま“処理・解体室”を後にした。


「どうしたんですか?ユリアさん。まだ、何かお話でも?」


「えぇ、大事なお話が。もちろん、ローザさんとエミーリアさんも交えてね。」


 ローザさんとエミーリアさんも交えて?“シュタールヴィレ”に関することかな。そんなことを考えながら、ユリアさんに引っ張られていく。心なしか引っ張る力が強いように思う。


 併設酒場に戻ると、アントンさんは既にいなかった。ローザさんとエミーリアさんの2人で杯を重ねていたみたいだ。それでも、それほど量は飲んでいないようで、すぐに僕とユリアさんに気が付いた。


「あら、ガイウス。おかえりなさい。用件は済んだの?」


「おかえり。」


「ただいまです。はい、解体と査定の依頼をしてきましたよ。ただ、量が多いので明日まで時間がかかるそうです。」


「そう、なら宿にもどりましょうか。」


「あっ、それならローザさんとエミーリアさん、お話があるのでちょっとこちらへ。」


 ユリアさんがローザさんとエミーリアさんを連れていってしまった。何も頼まず席にいるのもどうかと思い、果実水を頼み、飲みながら待つことにした。ボーっとギルド内を見ていると、夕方だからか、帰還して受付カウンターで依頼クエスト終了報告や、査定カウンターで持って帰ってきた素材を渡したりしていた。


 うーむ。冒険者になって4日。僕は、上手く冒険者をやれているんだろうか。

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