第46話 鬼島津・その3

 方言が出てきます。()内の言葉が標準語となります。


 鹿児島県の色んな地域の方言が混じっていますので、正しい発音や意味でない場合があります。ご了承ください。


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 オークメイジとオークジェネラルを数体倒すと、「【LVが38】になりました。【槍術がLv.20】になりました。」と自分自身のLVが上がった。力が湧いてくる。さらに、数体をほふる。もう少し、もう少しで首領の所へ槍がとどく。


 と、この局面で“鬼”がキレた。


(貴様ら)、邪魔じゃ!!鬱陶しか!!大将ん首ば獲らんとしとるのに、次から次へと・・・!!死にさらせ!!ちぇぇぇぇぇぇい!!」


 豊久が雄叫びと共に、群がるオークの上位種を一掃する。それに続く、配下の薩摩武士たちも雄叫びを上げながら、さっきよりも勢いよく突っ込んでいく。まるで、防御など捨てているようだ。いや、実際に捨ててる。


 魔法の直撃を受けようが、体に一閃を受けようが血を流しながら、オークの上位種を討っていく。これではまずいと思った僕は、ローザさん達に指示を出す。


「エミーリアさん!!豊久たちの回復援護をお願いします。順番は任せます。取り敢えず死なせないようにしてください!!ローザさんとジョージは、エミーリアさんに対して邪魔が入らないように援護を!!」


「わかった。【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】・・・。」


「わかったわ。エミーリアは必ず守る!!」


「了解です。ガイウス指揮官。」


 3人ともすぐに動いてくれた。彼らの動きを阻害するものは、僕と豊久たちが圧倒しているのも一つの要因ではあるだろう。しかし、上位種だから少ないと思っていたが、数が思いのほか多い。普通のオークも多いようで、義弘たちは広く散らばっている。それでも、苦戦している様子はない。流石の“鬼島津”に率いられた“薩摩武士”と云ったところか。


「ガイウス(殿)。援護射撃じゃ!!伏せっくいやい!!」


 鉄砲隊と弓隊を率いている盛淳もりあつの声が響く。僕はすぐに「全員、伏せろ!!」と叫んだ。伏せると同時に、鉄砲の轟音が響き、矢が飛んでいくのが見えた。目の前にいたオークの上位種が撃ち倒されていく。


「もう一射じゃ!!撃てい!!かけい!!」


 さらに、援護が続く。これでかなりの数の上位種の前衛をほふれた。「ありがとう。盛淳もりあつ。」と、礼を言い前進を再開する。つまり、首領を守るように展開されているオークの上位種の排除だ。


(私たちは)、右側面から攻撃しもす。」


 そう言いながら、盛淳もりあつ率いる鉄砲隊と弓隊は移動を開始する。左側は義弘が率いる本隊が進出しつつある。中央は僕と豊久率いる薩摩武士が圧迫している。首領までもう少し。


 そして、やっとその時が来た。首領を視線に捉えた。すぐに鑑定をする。どうやらオークロードのようで能力はアンスガーさんとアラムさんの中間。つまり、300台~400台だ。これなら勝てる。僕は、オークロードに対して槍を突き出し、挑発する。


「掛かってこい、部下に守られるだけの臆病者おくびょうものめ!!それとも、12歳の人間の子供にもかなわないのか!?」


 すると、オークロードは動かずに、何かの指示を周囲のオークガーディアンに出した。1分もしないで、8体のオークガーディアンが、木にくくりつけた何かを持ってきた。よく見ると、それは人だった。ボロボロの装備に衣服。そして首からぶら下がった冒険者証を確認した。そして、まだみんな息がある。


 人質をくくりつけた木を地面に刺し、オークロードはその奥で、わらっている。オークガーディアンは人質に剣の切っ先を向け、今にも止めをさしそうな状況だ。 僕はすぐに豊久に耳打ちをした。


「相手が人質の盾を使ってきた。僕が突撃して救い出すから援護をお願い。」


(わかりました)。ちえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいいぃぃぃ!!」


 豊久がさっきよりも大きな雄叫びをあげ、敵に斬りかかり敵の注目を集める。その一瞬の隙に人質の元へ跳ぶ。人質に剣を向けていたオークガーディアンは僕の速さに反応できずに、数秒もかからず、むくろとなった。オークロードも目を見開いている。


 僕はすぐに人質を囲うように鋼鉄の壁を三重に【召喚】した。これで、彼らの命を守れる。


「豊久!!ローザさん!!人質の救出は成功しました!!僕はこれから、オークロードを討ちます!!」

 

 そう叫んで伝えると僕は周囲のオークガーディアンをチート全開の本気で殲滅していく。100体近くいたオークガーディアンは3分もかからず全滅した。これで、オークロードは丸裸だ。オークロードは大剣を構えてはいるがじりじりと後退していた。


「逃がすはずないだろ。」


 僕はそう言って素早くオークロードの背後をとる。オークロードが恐怖に染まった顔で振り向いた瞬間、僕の槍はオークロードの心臓を貫いた。引き抜くとすぐに額にも槍を刺す。オークロードは恐怖の表情を張り付かせたまま死んだ。

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