第45話 鬼島津・その2

 方言が出てきます。()内の言葉が標準語となります。


 鹿児島県の色んな地域の方言が混じっていますので、正しい発音や意味でない場合があります。ご了承ください。


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「義弘、攻撃の合図は任せるよ。合図と同時に僕とエミーリアさんで門を攻撃して破壊する。その後は、義弘が本体を率いて戦闘を、僕とローザさんとエミーリアさん、ジョージ、豊久たちは敵の首領を討ちに行く。」


「承知した。では、・・・!!(お前ら!!)よう聞け!!今から!!(戦だ!!)薩摩隼人魂を!!(見せてやれ!!)!!(行くぞ!!)鉄砲隊、弓隊、前進。撃ち方用意!!」


「「「「「おう!!」」」」


 義弘の大声が響き、それに続き武士たちの雄叫おたけびが響く。ビリビリと、肌から体の中まで響いてくる声だ。鉄砲隊と弓隊が攻撃用意をしている間に、僕とエミーリアさんが森から出る。


 義弘と武士たちの大声に恐怖が沸いたのか、門番のオークはキョロキョロと辺りを見回している。そして、僕とエミーリアさんを見つけると、大声で門の中に何かを伝えている。どうせ「敵が来た!!」みたいなものだろう。僕とエミーリアさんは、そんなのお構いなしに門への攻撃準備を進め、魔法陣を展開する。


「ガイウス(殿)!!攻撃準備完了じゃっど!!」


「了解!!エミーリアさん、いきますよ。」


「任せて。」


 義弘の声を聞いて、2人して先ほどから展開していた魔法陣に、さらに魔力を送り込み【火魔法】で門を攻撃する。ファイアランス、ファイアボールが絶え間なく門に叩き込まれる。30秒後、魔法攻撃をやめる。「【火魔法がLv.2】に上がりました。」


 煙がはれた後には、黒こげの門の残骸と巻き込まれたオークの死体があった。そして、門の残骸の奥には、戦闘態勢を整えたオークの軍団がいた。

「ガイウス(殿)、エミーリア(殿)、伏せぇ!!」


 義弘の声に従い、地面に伏せると後方から“ドドドドドドオオオォォォォォン”と轟音が響き、矢が放たれていく。鉄砲から放たれた鉛玉は楯を砕き、矢も楯を貫いてオーク達に被害を与えている。


「あと、2斉射じゃ!!(そのあと)に突撃じゃ!!」


 僕とエミーリアさんは、鉄砲と弓の斉射の2回目が終わると同時に、ローザさんとジョージ、豊久たちと合流して吶喊とっかんする。豊久と率いる薩摩武士の雄叫びはすさまじい。すでに義弘の率いる騎馬隊と歩兵隊が先行して、戦闘を開始している。


 全員の能力値は詳しく見なかったけど、ただの兵士でさえ体力、筋力ともに500を超えていた。義弘や豊久は、呂布には及ばないけど800~900近い数値を持っていた。ちなみにジョージは、彼らよりも低い。知力は高いけど。未来人なのになんでだろうね。


 さてさて、頭ではそんなくだらない事を考えながら、体は流れるようにオークを討ち取っていく。ヒヒイロカネ製の槍は面白いように骨までつ。僕たちが進むだけ、オークの死体の山が後方に築かれていく。義弘の本隊も部隊長ごとにバラけながら戦域を拡大させていく。“鬼島津”の名にたがわない活躍だ。鉄砲の発砲音も聞こえる。鉄砲隊と弓隊の援護部隊も門内に入ったようだ。


 しかし、ゴブリンの集落よりも広いし、住処すみかもしっかりとした家の体裁ていさいを保っている。オークって結構、知能とかが高くて人間に近いのかもしれない。首領と会敵したら鑑定してみよう。


 チラッと、後ろを振り向くとローザさんとエミーリアさん、そしてジョージの3人が1チームになって、スムーズに戦闘を進めている。接近戦はローザさん、後方援護をエミーリアさんとジョージ。いい感じだ。ちなみに豊久率いる部隊は、僕と供に前進を阻害するオークを討ち取っている。


 特に、豊久はなんとえばいいのかな。敵と刃を交えた瞬間には、敵の首が飛ぶか、体を貫いている。まるで、案山子かかし相手に稽古をしているように。鬼は此処ここにもいた。


「はっはー、こんだけでは、(俺)は止められんぞ。(どんどん来い)。ガイウス(殿)も、(凄いなぁ)。」


「ありがとう。豊久。さぁ、敵の首領までもう少しだ。どんどん、討ち取ろう!!」


「おうさ!!(お前たち)、(行くぞ)。手柄は目ん前じゃ!!」


 おぉ、敵を討ち取るスピードが、更に上がった。いいね。気に入ったよ。薩摩武士。義弘は薩摩隼人って言ってたっけ。おっと、余計な事を考えていると、魔法が飛んできた。槍に魔力を通し、薙ぎ払う。ようやく、敵の中枢に近づいたのかな。


 鑑定してみると、ハイオーク、オークメイジ、オークジェネラルと上位種だけあって数値が高い。ほとんどが200台だ。低くても150はある。これは、確かに準3級のアントンさんでも厳しいね。


 でも、僕はチートのおかげで1000近い数値だし、今回【召喚】した薩摩武士たちは数値のほとんどが500台だ。豊久は900近い数値だし選抜した薩摩武士も700を超えている。負ける姿が想像できない。でも、気は抜かない。戦闘では何があるかわからない。


「豊久、ここが敵の中枢だ。油断せず行くよ。」


!!(任せてください!!)」

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