第31話 ダヴィド・アルムガルト辺境伯
「父上を呼んでくるから、ここで待っていてくれ。」とアンスガーさんに応接間らしき部屋に案内された僕たち。ユリアさんは早速、席について出されたお茶とお菓子を楽しんでいる。僕たちもメイドさんに薦められるがまま席につく。
しばらくお茶とお菓子を楽しんでいると扉がノックされた。ユリアさんが立ち上がったので真似て立ち上がる。すると執事らしき人が扉を開け、アンスガーさんともう2人男性が入ってきた。みんなして頭を垂れる。その前にすぐに鑑定をする。お年を召しているのは、ダヴィド・アルムガルト辺境伯様。もう1人のアンスガーさんと年が近い方は、アンスガーさんのお兄さんで次期辺境伯のヴィンフリート・アルムガルト様。
「みんな顔をあげてくれ。父上、兄上、紹介しましょう。彼が9級冒険者のガイウス殿です。ガイウス殿の右にいるのが7級冒険者のローザ殿、左にいるのが同じく7級冒険者のエミーリア殿です。それと・・・。」
「お久しぶりです。ダヴィド様。ヴィンフリート様。ユリアで御座います。」
アンスガーさんの紹介を遮ってユリアさんが挨拶をする。その瞬間、ダヴィド様とヴィンフリート様の表情が苦いものに変わった。
「ユリアという名の女性ギルド職員がついてくるとは書いてあったが、まさかユリア殿だったとは、お久しぶりです。」
ダヴィド様はそう言って頭を下げる。それに続きヴィンフリート様も。一体どうなっているんだ。
「お2人ともご健勝で何よりです。私の目の黒いうちはアルムガルト辺境伯家の男子は腑抜けと、言われないようにしていただきたいものです。」
「はい、それはもう。ヴィンフリートの息子であり私の孫のディルク、ベルントにも鍛錬を欠かさないよう強く言い含めております。」
「ならば、良いのです。さて、ギルドマスター、途中で遮ってしまい申し訳ありませんでした。」
ユリアさんがアンスガーさんに頭を下げる。アンスガーさんは「ゴホン。」と咳払いし、
「まぁ、とにかく父上がお会いしたいと言っていたガイウス殿をお連れいたしました。」
「ふむ、アンスガーよ。お前から封書を貰った時にも信じられなかったが、孫とほとんど歳の差などない彼が、ゴブリンキングとその集落を殲滅し、お前に勝ったなど今でも信じられん。ゴブリンキングを討ったなどとは作り話か他の上級冒険者に手伝ってもらったのではないかね。お前との試合とて両隣のパーティメンバーと共に闘ったのであろう。彼1人の実力ではないのではないかね?」
「私が嘘を書いたと?では、どうします?会いたいとそう返事されたのは父上ではないですか。」
「ふむ、我が騎士たちと模擬戦をさせたい。そこで実力を見せてもらおう。どうかな?ガイウス殿。」
えっ、また試合!?しかも、今度は領主様の騎士たちと!?嫌だなぁ。馬鹿にされているけど、はっきり言って面倒くさい。でも、それでさっさとこの場から逃れることができるなら、
「わかりました。模擬戦受けて立ちます。ただし、僕個人としてです。パーティメンバーの2人には外れてもらいます。」
「ふむ、お主がギルドにした報告ではゴブリンキングの件の時もお主1人だけだったわけだしな。良いだろう。」
「ありがとうございます。辺境伯様。」
「では、屋敷の外に練兵場がある。そちらで闘ってもらおうかの。あぁ、ちなみに木剣などは使わず、きちんとした装備で闘ってもらう。」
「殺してしまいますよ!?」思わず大きな声で言ってしまった。
「ふむ。殺せるものなら殺してみるが良い。あまり大人をからかうものではない。」
そう言って、辺境伯様は出ていってしまった。ヴィンフリート様も僕のことを大したことないと思っているのか、使用人を模擬戦の準備をするよう騎士たちに伝えさせに行かせた。1人アンスガーさんだけが、顔を青くして冷や汗を流している。
「兄上、普通の実戦装備での模擬戦はマズイ。ガイウス君の言うように人死にが出るぞ。」
「アンスガー、お前こそアルムガルトの騎士たちを、なめているのではないか?ギルドマスターの椅子に長く座り過ぎたか?」
「ヴィンフリート様、私からも一言言わせていただきますが、ガイウス君は強いですよ。それも桁外れに。私よりも強いでしょう。」
「ユリア殿よりも?冗談でしょう。」
「冗談ではありません。彼の試合を2回、審判としてみましたが、彼の実力は確かに私よりも上回っているでしょう。騎士たちの訓練を見たことはありませんが、私がダヴィド様、ヴィンフリート様、そしてギルドマスターに課した修練よりも劣っているのであれば、結果は目に見えています。」
ユリアさんがそこまで言うとヴィンフリート様も顔色をどんどん青くさせていく。「父上を止めなければ」とヴィンフリート様が部屋を出ようとしたときに、使用人が戻ってきて、準備ができたことを伝えた。これで血を見ることは決まったわけだ。
さて、人を自分の都合で呼び出して、けなしてくれた辺境伯様には現実を見てもらうため、神様から授かった能力を余すことなく使って
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