第30話 辺境伯邸へ

 冒険者になって3日目にして、地球の神様から【不老不死】という迷惑極まりない能力を授かった。フォルトゥナ様からは【祝福】と【加護】という勇者や聖女などの限られた人にしか授けないありがたい能力を授かった。・・・地球の神様をもうちょっと殴っておけばよかったかも。


 朝からこんなんじゃだめだ。桶を【召喚】し、【水魔法】で水を溜め、顔を洗う。少しはスッキリしたかも。朝食をとるために1階の食堂へと向かう。朝早いので、まだ誰も食事に来てはいなかった。


 僕はアンゲラさんに挨拶と共に朝食をお願いした。アンゲラさんは「はいよ。」と言って厨房に入っていった。数分後には朝食を乗せた膳が運ばれてきた。朝食を食べ終わる頃には、宿泊客がだいぶ下りてきて食堂の席も埋まってきた。僕は膳を返却カウンターに置いて部屋に戻り、装備を整えるとギルドへと向かおうとした。


 扉を出る前に「ガイウス」と声をかけられた。振り向くと朝食をとっているローザさんが手で招いていた。同じテーブルにエミーリアさんもいた。2人と同じテーブルに着くと、「今からギルド?」と聞かれたので「はい。」と答えた。「もうすぐ食べ終わるから待っといてくれない?」と言われ頷く。アンゲラさんに果実水を頼んで2人と談笑する。


 30分後には、装備を整えた2人とともにギルドへ向かい歩いていた。すると、前からユリアさんが歩いてきた。彼女もこっちに気付いたみたいで少し早足で近づいてきた。「おはようございます。」と挨拶をすると、彼女も笑顔で「おはようございます。3人とも。」と返してくれた。ギルドの制服できているから、その関係なんだろうけど、どうしたんだろう?


「3人ともまだ町の中に居てくれてよかったです。実は辺境伯様からの返信をギルドマスターがさっき持ってきまして、それをお知らせするために『鷹の止まり木亭』に向かう途中でした。」


 もう返事が来たのかと3人して驚いていると、ユリアさんが笑顔で、


「さぁ、ギルドに行きましょう。ギルドマスターと馬車も待機させています。あっ、服装は冒険者ということで普段通りでいいそうですので、そのままで。」


 「さあさあ」とユリアさんにうながされ、ギルドへと急ぐ。本当にこのままの服装でいいのかと戸惑いながらも、ギルドに着いた。入り口には確かに馬車があり、そばにはギルドマスターのアンスガーさんが立っていた。「おはようございます。」と声をかけると、


「3人ともおはよう。すまないね。こんな急になってしまって、父がどうしても早く会いたいというから。見てくれこの返事を書いた紙を。」


 そう言って見せられた紙には、「ガイウスという冒険者に早く会ってみたい。この手紙とともに馬車をやるので、すぐ連れて来るように。服装はいつも通りでよろしい。」というような内容のことが書いてあった。なんとも味気無い内容だ。貴族様のお手紙だからもう少し、こう装飾された内容なのかと思っていた。


 「さぁ、早く馬車へ。」アンスガーさんに声をかけられ、僕たち3人とユリアさんが馬車に乗り込む。「道中、何が起きてもすぐ対処できるようにね。」と言いアンスガーさんは一頭の馬に跨った。

 アンスガーさんを先導に馬車が動き出す。門でも辺境伯家の馬車ということで特に止められことは無かった。そのまま、辺境伯様のお屋敷までの道中は何も起こらず、無事にお屋敷に着いた。


 しかし、お屋敷というよりももっと堅固なモノに見える。何しろ周りには堀が掘られていて、物見櫓があり、簡単には崩れなさそうな防壁に囲まれている。見たことは無いけどお城とか要塞といった感じが、しっくりくるんじゃないだろうか。


 そんなお屋敷の正門から入り正面玄関に馬車は着く。ただの冒険者の僕たちが正面玄関から入るとは、礼儀的に大丈夫なのだろうか。そんな自分の心配をよそに屋敷の使用人の人の手でドアが開かれる。ええいままよと、馬車から下りる。アンスガーさんは馬の手綱を使用人に慣れた動作で渡している。


 女性陣の降車には使用人が手をかしていた。全員揃うと、アンスガーさんを先頭に扉が開け放たれている、正面玄関へと歩き出す。玄関内には左右に使用人が分かれて並んでおり、僕たちが玄関内に足を踏み入れた瞬間みんな一斉に頭を下げた。あぁ、帰りたい。

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