第25話 呼び出し・その5(3回目の依頼終了)
アラムさんは双剣で攻防一体の動きをしてくる。それに惑わされないように弓から槍に持ち替えて捌いていく。アンスガーさんが魔法を撃とうとしているのが見えたので、持っている槍を弓につがえてそのまま射る。ギョッとした表情をしたアンスガーさんが槍を叩き落とす。
今、僕の目の前にアラムさん、背後にアンスガーさんと挟まれるようになっていて、ローザさんとエミーリアさんがアラムさんの背後を取っている形になっている。今のところ僕の考えた作戦通りにアンスガーさんとアラムさんの警戒を僕に向けることができている。
ローザさんも隙をついては背後から斬りかかっているが全て避けられるか防がれている。エミーリアさんの魔法による攻撃も牽制として動きを鈍らせることができているが、決定打に欠けている。
もっとだ。もっと相手に攻撃をして隙を作り出さないと。僕は残った矢を連射しながらアラムさんに向かう。すぐに矢が無くなるが気にせず弓を腰にかけ右手に長剣を握り突進する。背後ではアンスガーさんが動き出し、エミーリアさんに向かっている。エミーリアさんは魔法の集中砲火で足を止めようとしているが防がれて回避されている。
僕はアラムさんに突進しながらも左手に槍を【召喚】して、アンスガーさん目掛け投擲する。彼は槍で叩き落そうとしたが、僕の投擲の威力で彼の槍と僕の槍の両方が折れる結果となった。その結果に彼とアラムさんの動きが一瞬だけ止まる。この一瞬だけで十分だ。
わざと大振りした長剣での一撃をアラムさんに打ち込む。彼は双剣を交差させて防ぐ。すぐに長剣の柄から手を離し、格闘戦を仕掛ける。左足で右足先を踏み逃げられないようにし、拳を
アラムさんは立ち上がろうとしているが両手首が折れた今、継戦能力は無きに等しい。僕は「お二人とも後は任せました」と
撃たれた魔法を何とかして撃ち落とそうとして、長剣を【召喚】してそれに全力で魔力を込めてみる。上手くいったようで魔法を斬り落とすことができる。
「ただの木剣に魔力を込めて魔法剣にしただと!?」
さらにアンスガーさんは動揺する。そして「【魔力封入】を取得しました。【水魔法Lv.1】を取得しました。【風魔法Lv.1】を取得しました。」新しい能力を三つも取得した。【魔法】系は取得した理由は【見取り稽古】のおかげだからわかるけど、【魔力封入】は自分で行動した結果が上手くいったから取得できたのかな。
そんな無駄なことを考えていると剣を構えたアンスガーさんはすでに目の前だ。僕は走ってきた勢いをそのまま長剣の切っ先に乗せ突きを
痛みで顔を歪めるが、右手に持った長剣で反撃しようと振りかぶっている。流石だ。でも、振り下ろす前に僕の左の拳が彼の右肩に叩き込まれる。一瞬、そう一瞬だけ彼の動きが止まる。だがその一瞬で十分だ。僕よりも背の高い人を相手にする場合は急所の顔面が最も遠い。だから、アントンさんの時のように膝を破壊して僕と同じ目線まで下りてきてもらう。
鈍い音が練習場に響く。上手く膝周りを破壊できたようだ。しかし、彼の闘志は折れなかったらしい。不自然な格好になりながらも長剣を振るってくる。あの体勢だと破壊された膝周りに無理が行くだろうに。だから僕はもう片方の膝も壊した。そして蹴りを顎にお見舞いする。彼はそのままドウッと倒れた。「Lv.が36に上がりました【格闘術がLv.41】になりました。」今更上がってもなぁ。そう思いながら彼の首に長剣を沿える。
「まだしますか?」
「いや、アラムも私ももう闘える体ではない。降参しよう。」
「ギルドマスターのアンスガーとサブギルドマスターのアラムの降参により、勝者シュタールヴィレ!!」
ユリアさんの声が響く。一瞬後、観覧ブースから爆発したかのように声が上がった。「すげぇ、勝ちやがった。」「あの、ガイウスってやつがほとんど1人でやっていたけどすげえな。」「アントンさんに続いて、ギルドマスターとサブギルドマスターが負けるなんて・・・。」「かわいい顔して恐ろしい子ねぇ。」いろいろ聞こえるが試合が終わった今は後始末をしないとね。まずは【召喚】した武器を【送還】して、エミーリアさんにアラムさんの治療を僕がアンスガーさんの治療を行う。【ヒール】を取得しておいてよかった。2人の怪我を完治させた後はユリアさんを先導にして僕たち5人は待合室へと向かうのだった。
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