第11話 テスト
ドルスさんを先頭に僕たちはギルドに併設されている練習場に向かう。門で衛兵をしているドルスさんは出入りの多い冒険者とは知り合いが多いのかさっきから挨拶されている。3分ぐらい歩いて練習場の待合室に着いた。思いのほか広く幅は50m、奥行きは100m以上はありそうだった。
「さて、ガイウス君。君の剣と弓、格闘術の実力を今から見せてもらうことになる。弓は簡単だ。100m先に的を置くからそれを射てくれればよい。剣と格闘術は私が相手をしよう。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
「それじゃあ、まずは弓からだね。的を置いてくるから準備でもして少し待っててくれ。」
ドルスさんに言われ僕は弓を取り出し、矢を一本ずつ歪みがないか確認していく。確認が終わり弓を射る準備ができたところにドルスさんが戻ってきた。その頃には暇な冒険者や職員の人が観覧ブースに十数人ほど見学に来ていた。
「では、十本射てもらおうかな。」
「はい。・・・・では、いきます。」
弓に矢をつがえ引き絞る。屋内だから風の影響は心配しないでよい。周囲の視線も無視だ。ただ的へと矢を届かせればよいのだ。僕は息を吐くと同時に矢を放った。`タァン!!`という的に当たる音が聞こえる前には、2射目の用意を終えすぐに放つ。それを8回繰り返した。
10本全て射終わるとドルスさんに視線を向けた。ドルスさんも一緒に来ていたローザさんとエミーリアさんも口をあんぐりと開け瞠目していた。観覧ブースもざわざわしていた。
「は、半分くらいしか当たらないと思っていたが、全て的に当たるとは・・・」
「いやはや、ガイウスには驚かされてばかりね。」
「12歳とは思えない技量。凄い。」
ドルスさんが持ってきた矢の刺さった的を見て、また3人とも驚いていた。
「全部、ど真ん中・・・だと!?」
「あはは・・・。最早規格外ね。」
「凄い・・・。」
3人の様子を見て僕はやり過ぎたと思った。観覧ブースからも「ウソだろ!?」「弓の腕だけなら中堅並みかそれ以上だな」など聞こえてきた。でも、もう見せてしまっているからには後戻りできない。だから僕は3人と周囲の反応を無視して次に進もうとした。
「えーと、弓はこれでいいですよね?次は剣にしますか?それとも格闘術にしますか?」
「あ、あぁ。そうだな次は剣にしよう。確か両手剣だったね。この木剣をつかいなさい。私も同じ両手剣の木剣を使わせてもらおう。勝敗条件は急所に寸止めか、木剣を落とすか、降参したらかにしようか。勝敗条件は格闘術も同じようにしよう。」
「わかりました。お願いします。」
「それでは、練習場の中央へ。ユリアさん審判お願いできますか?」
ドルスさんが観覧ブースに居たギルド職員のユリアさんに声をかける。
「いいですよ。」
ユリアさんが笑顔で答えた。ユリアさんが練習場に入り僕たちの近くまで来た。ユリアさんが手を挙げ、
「それでは、始め!!」
勢いよく振り下ろした。それと同時に僕は姿勢を低くしてドルスさん目掛けて走り出す。ドルスさんはその場で木剣を構えて僕を待ち構える。まずは、左下から右上への斬り上げだ。それをドルスさんは左半身を後ろに引き、木剣を構え腹でいなそうとする。僕はいなされながら上がっていく木剣がドルスさんの胸元あたりに来たところで強引に軌道を変え、右に大きく薙ぎながらその場で一回転する。
ドルスさんを再び視線に捉えた時には、驚きの表情をしながらも、僕の攻撃を防御しようと、木剣を右半身の横に逆立てに構えた。さらに木剣の軌道を無理に変えて一旦引いて、ドルスさんの左胸目掛けて一気に突き出すと見せかけ、ドルスさんの意識が上半身の防御に向いているのを確認したら、そのまま、左下に薙いでドルスさんの右足に一撃を入れる。
「ぐぅ、やるな!!だが・・・。」
ドルスさんが二の句を継ぐ前に、右足に一撃を入れた木剣を一気に上に斬り上げてあるところで止める。僕は笑顔を作りながら、
「ここも急所ですよね?」
と、男の大事なところにピタリと木剣を当てて言う。
「あぁ、そうだ。私の負けだ・・・。」
「そこまで!!勝者、ガイウス!!」
ユリアさんの声が響いた。観覧ブースからは「マジかよ・・・。」「ドルスさんが負けた!?」「ドルスを負かすなんてなかなかの腕だな。」などなど声が聞こえた。というか、さっきよりも人が増えてる。なんでさ。ただのテストの模擬戦なのに。しかも、まだ冒険者にもなっていない12歳の子供の。まぁ、いいか。さてと次は格闘術だ。
「ドルスさんこのまま格闘戦もやりませんか?」
「と、いうことですがドルスさんはいかがでしょうか?」
「大丈夫ですよ。」
ということになったので休憩なしで格闘戦だ。木剣を元の場所になおして再び練習場の真ん中にドルスさんと距離を置いて立つ。ユリアさんがまた手を挙げ、
「それでは、始め!!」
合図とともに勢いよく振り下ろした。今度はドルスさんの方から仕掛けてきた。ドルスさんの右のストレートのタイミングに合わせ、左手の裏拳を手首に当て軌道を逸らすと同時にそのまま掴み、おもいっきり引っ張った。ドルスさんが少しバランスを崩したのでそのまま右手でドルスさん上半身の鎧が覆っていない所を掴み、身体を反転させながら投げた。ガシャン、ガシャンと音を出しながらドルスさんが転がっていく。追撃を加えるために後を追おうとしたがユリアさんに止められた。よく見ると打ち所が悪かったのかドルスさんは気絶していた。
「そこまで、ドルスの戦闘不能により、勝者ガイウス!!」
こうしてあっけなく格闘戦は終わった。観覧ブースに居る人たちは驚きすぎて逆に沈黙している。この後の冒険者登録とかはドルスさんが目を醒ますまで待つことになるのかなぁ。早くこの場から抜け出したい僕は気絶しているドルスさん引きずって待合室へと戻った。
「ガイウス流石ね。」
ローザさんが声をかけてくる。エミーリアさんはすぐにドルスさんの所に向かって行き、
「右手首が折れていて、肋骨とかもひびがありそう。すぐに治療しないと」
と言ってヒールを使い始めた。もしかすると、僕またやっちゃった?そして、空気を読まずに頭に声が響く
「【ヒールLv.1】を取得しました。【格闘術】がLv.36【剣術】Lv.20【防御術】Lv.24になりました。」
また、少しだけ強くなりました。
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