第8話 冒険者になる前に一仕事・その2

「大声出したら首を折らせてもらうからね。」

 

 そう言いながら盗賊その3の喉の拘束を緩める。その3はしばらく咳き込んでいた。落ち着いたころを見計らってもう一度だけ質問をする。


「今からおじさんは自身の命と引き換えに仲間のいる場所まで僕たちを案内する。それでいいよね?」


「あぁ、こうなっちまったからには仕方がねぇ。」

 

 その3は首肯した。後ろを振り向き冒険者のお姉さん2人にも確認をとる。


「お姉さんたちもくるでしょう?」


「えぇ、問題ないわ。」


「私も問題ない。魔法もまだ撃てる。」


「魔法使いのお姉さんには、この盗賊の膝を治してもらっていいですか?」


「わかった。それと私の名前はエミーリア。」


「わかりました。エミーリアさん。それではヒールのほうをお願いします。剣士のお姉さん「ローザよ。」ローザさんには倒した盗賊の生死の確認と遺体の片付けを一緒にしてもらっていいですか?」


「いいわよ。」


 ということで、エミーリアさんがヒールでその3の膝を治している間に僕とローザさんは倒した盗賊の生死確認と遺体の片付けを開始した。ローザさんとエミーリアさんが倒した盗賊は死んでいたので使えそうな装備やお金を回収してから死体を【収納】した。もちろん、能力がばれないよう魔法袋代わりに持ってきていた普通の麻袋に【収納】するようにみせた。


「あら、魔法袋を持っているのね。羨ましいわ。」


「祖父から譲ってもらったんです。入る容量も小さな平屋1軒分ぐらいしか入らないみたいですよ。」


「おじいさまは冒険者だったの?」


「いえ違います。普通の農業と畜産をしている農民ですよ。魔法袋は若いころ助けた冒険者からお礼として貰ったみたいです。」


 そんな会話をしながら僕の倒したその2の場所へとやって来た。気絶したと思っていたけど口からは血を流し、脈も触れなかったので死んでしまったみたいだ。その1も同じく死んでいた。どちらも殺すつもりなんて無かったんだけどな・・・・。


「人を殺したのは初めてかしら?少し顔色が悪いわよ。」


 どうやら、表情に出ていたらしい。僕は頷き、


「気絶させるだけですませようと思ったんです。殺すつもりなんて・・・。」


「私も初めて人を斬ったときはことが終わってから震えたわ。でもね、すぐ慣れたわ。いえ、慣れざるを得なかったというところかしら。魔物には人型のゴブリンやオーク、オーガなどがいるわ。それに護衛依頼で盗賊に襲われることもあったわ。そうすれば嫌でもね・・・。」


「そうですね・・・。慣れないといけないことですよね・・・。」


「すぐに慣れなくていいのよ。ゆっくりとね・・・。さて、湿っぽい話はここで終わり。エミーリアの治療も終わっている頃でしょうから戻りましょう。」


「はい。」


 エミーリアさんとその3が居る場所に戻ると治療はすでに終わっていた。


「それじゃあ、おじさん残りの仲間の所まで案内をお願いね。それと人数って何人くらいかな?」


「残りの人数はお頭も含めて18人だ。アジトの場所までは俺が先導して案内する。」


「もし、大声出したりしたら命の保障はしないからね。」


「わかってるよ。命あっての物種だ。」


「しかし、残り18人かぁ。3人で相手するには少し多いかな?どう思います。ローザさん、エミーリアさん。」


「確かに私たち3人だけでは厳しいかもね。町に行ってギルドか衛兵に伝えるのも1つの手よね。」


「ローザに同じ。」


「もし、さっきの盗賊5人分の強さを持つ人が助っ人としていたらどうですか?」


「それなら話は別ね。いけると思うわ。」


「でも、そんな人は何処にもいない。なにか考えがあるの?」


「じつは僕、【召喚】ができるんです。それでいけるかなって思って。とりあえず見ていてもらっていていいですか?」


 2人とも頷いたのを確認して僕は【召喚】をおこなう。なるべく強い人。それこそ誰も並び立つ人がいないほどの強い人。そういう人を【召喚】することを思い浮かべる。すると地面に魔法陣とともに光があふれた。光が収まるとそこには2m近くの大男が立っていた。


 男の格好は黒い鎧に腰に剣を佩き、矢を携え。右手には槍の穂先の根元に刃がついているモノ。左手には身の丈ほどの立派な大弓を握っていた。そして、その双眸は僕を見ていた。


「僕が召還者のガイウスだ。召喚されし者よ名を述べよ。」


 すると男は片膝をついて持っていた武器を置き、握りこぶしを胸の前で片方の手で包むと頭を垂れ、


「我が名は呂布。字を奉先と申す。召喚主よ何なりとご命じられよ!!」

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