本編

第1話 プロローグ



 僕が6歳の頃、村が魔物の群れに襲われた。夜も遅い時間だったので寝ていたところを叩き起こされ僕と母さん、ばあちゃんの3人は、父さんとじいちゃんに床下の貯蔵庫に隠れているように言われ、父さんとじいちゃんは武器を手に持ち村のほかの男衆たちと一緒に魔物を倒すために村の門まで向かった。


 僕たちは3人で身を寄せ合って魔物が去るのを待った。最初のほうは魔物の咆哮と人の悲鳴が混じって聞こえてきたけど、しばらくすると誰かが「冒険者だ!!冒険者がやって来たぞ!!」と叫んだと同時に地面が揺れ魔物の咆哮の勢いが弱まった。


 そうしてしばらくして外が明るくなってきた頃には魔物の咆哮も聞こえなくなっていた。父さんとじいちゃんが帰ってきて「もう、安全だぞ。」と声をかけ僕たちは貯蔵庫から出た。村の広場では見たことのない人たちが村のみんなに囲まれお礼を言われていた。


 あとから知ったことだけど魔物の群れが来た時に近くの町に馬で人を遣り冒険者ギルドで緊急依頼を出したそうだ。しかし、最初は夜も遅い時間で誰も対応できる冒険者がいないと言われたそうだけど、丁度ギルドに併設されている食堂兼酒場にいた冒険者パーティが自ら依頼を受けると名乗り出てくれたそうだ。


 ただ、お酒が入っていたせいか加減がわからず魔法使いの人がかなり強い魔法を村についたと同時に魔物の群れに放ったそうだ。それが地面の揺れた原因らしい。そのあとは、ほとんど一方的に魔物の群れを殲滅していったそうだ。その冒険者パーティのおかげで村は守られた。


 これが初めて僕が冒険者になろうと思ったきっかけ。今日、誕生日を迎えて12歳になった僕は、明日は町に行って冒険者ギルドに行き冒険者として登録するんだ。家族のみんなは反対しなかったけど、心配そうな顔をしていた。


 そうそうこの6年のうちに双子の弟と妹が生まれたんだ。6歳になる弟のトマスと妹のヘレナは「ガイウス兄ちゃん行かないで」と泣きついてきたけど、「1年に必ず1回は帰ってくるから」となだめたらなんとか納得してくれた。そのあとはみんなでいつもよりちょっと豪華な晩御飯を食べて、明日に備えて眠りについた。



 そうして僕は今、真っ白な空間に見知らぬ男の人と一緒にいる。その人は開口一番、


「明日から冒険者になるお前にチート能力をくれてやろう。」


 と言った。この白い空間もそうだけどチート能力ってなんだ?



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