青空が泣いているんだ。

都稀乃 泪

第1話 僕と君の出会い

 今日は定期考査で早く帰ることが出来たので、なんとなくいつもは寄らないサイクリングロードの方に行ってみることにした。

 小さい頃は近くに祖父母の家があったので、よく通っていたのだが、祖父があの世へ、祖母が老人ホームへ引越してからは滅多に通らなかった。


 久しぶりに訪れると、記憶よりも青々と雑草が茂り、坂の所為もあるだろうが僕の背丈程もある草が沢山生い茂っていた。

 そこはもはや知らない場所のように映ったのに、坂を登りきると昔の記憶のままのサイクリングロードが映し出された。


 適当に歩いて風を浴びるだけのつもりだった。いつもとは違うところへ行くことで何か刺激を受けたかった。


 実を言うとスランプに突入していて、文学部で小説を書いている以外にもネットに投稿したりしていたのだが、如何せん伸び悩んでいた。


 五分も歩くと、昔父と自転車の補助輪を外す訓練をしたトラックのある場所まで来た。

 そこで思い出に浸っていると、何やら人の声が聞こえた。

 足元に視線を移すと、同じくらいの年の女の子が腰に手を当てて“声出し”をしていた。

 演劇部員の友達の勧誘で一度だけ見学に行ったとき、見たからだ。


 少しして彼女はキョロキョロと周りを見回して人がいることに気づくと、スマホを弄り始めてしまった。

 僕がいてはやりづらいのだろうと思い、足早にその場を去った。

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