第24話仲直り
「……えぇー、嘘でしょ」
なんかめっちゃブクブクしてるんですけど。明らかに気泡なんですけど。絶対下になにかいるんですけど。
そんな俺を肯定するように、アールグがマグマの中からニョキっと顔を出す。
そして、ギョロリとした瞳で俺を見据える。
正直、少し警戒している自分がいる。言わずもがな、さっきまでお互いぶっ倒れるまで喧嘩した相手同士だからだ。
いくら試していたとは言え、結果的に見ればお互いの私情を挟んだ末にちょっとガチになってやってしまったのも事実。ヴァルグとは仲良しになったってセルスは言ってたけど、俺とも仲良くなる保証なんてどこにもない。理由は分からないけど、アールグは転生者を毛嫌いしているらしいからな。
俺とアールグの視線が交錯する。
アールグは決して視線を逸らさずに、俺を見据えてゆっくりと近づいて来る。
やっぱクソデカイなコイツは。俺も進化したとはいえ、アールグから見れば大した差はないんだろうな。
あれ? ワンチャン俺ここで食べられる説あんじゃね? いやいやいやいやいやいや、ない! 大丈夫! 大丈夫? え、大丈夫だよね? セルス先輩言ってたもんね? はっ! これは、もしや……俺は試されているのか⁈ いついかなる時も、セルスを信じ抜けるかどうかを。フフフ、いいだろう! 俺は必ずセルスを信じきって見せようじゃないの!
「なにか考えてるかは知りませんが、バカっぽい事考えてんだろーなーって思えてしまうくらいアホな顔してますよ?」
「おぉい! 悪口2つも入ってんじゃねーか!お前はチクチク言葉を勉強し直せ! ってあれ? 妙に腹立つと思ったらヴァルグじゃねーか。おはよーさん」
「おはよーさんですー。ルーナ様も風呂ですか? 起き抜けに風呂とは中々通ですねー!」
「そーなんよ、風呂入りに来たんよ。でもさ、風呂なくね? まさかこれじゃねーよな?」
俺は恐る恐るマグマを指差す。
こんなもんに入るなんて冗談じゃない。こんなところに入るくらいなら全裸で街を歩いた方がマシだとすら思える。
「え、なに言ってるんですか。こんなマグマに入ったら死ぬに決まってんじゃないですか。常識って知ってます?」
「…………バン」
「ぶぅぱっ!」
バカ野郎め。あいつには今度口の利き方を教えてやろう。
「失礼ですがルーナ様。口を挟む事をお許し願えますでしょうか」
おぉっとそうだそうだ。バカ馬のせいで忘れてたけど今はアールグが目の前にいるんだったな。ふむ、しかしいきなりルーナ様……ね。違和感は拭い切れないが話を聞かない理由もないな。
「いいよー、ってか喋るのに俺の許可とか要らないっしょ」
「いえ、そうゆうわけにも参りません。私は貴方に牙を剥き、さらには敗北しました。本来ならばその場で命を取られていてもおかしくない事です」
「重い、そして堅い! そんな事でホイホイ命だなんだと騒ぐなよ、大袈裟だなぁ。んで? なんか言いたい事でもあんのか?」
俺はアールグとは真逆の態度で続きを促した。
「では、失礼致します」
一言断りを入れて、アールグはゆっくりと屈んだ。いや、俺的には屈んだ様にしか見えないけど多分これは跪いてるのかな? あいも変わらずでけーけど。
でもなんか敬意というか、誠意というか、そんなようなものは感じるのでここは跪いたと見てよさげだ。
アールグはその体勢のまま話を続けた。
「単刀直入に申し上げます。ルーナ様、
むっちゃ真剣な目をしてる。ってか会ってからまだ間もないけど俺はコイツのキレてイっちゃってる目か、敵意剥き出しの目しか知らねーわ。確かにどっちも真剣ではあったけど、今とは真逆の感情しかなかったな。
今のコイツの目は厳しさではなく、優しさを感じさせる真剣な目だ。
なら、俺から言うことは別にない。理由とか思惑とか、そんな事はどうでもいい。
これは俺のスキルによるものかは分からないけど、アールグは信頼できると直感で思ったんだ。
「うん、いいよ! これから楽しく暮らそうな!」
だから俺は、満面の笑みで
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