レジェンド•オブ•ブルーアイズトライブ
ケリーエヴァンス
第1話 プロローグ
ここは数ある大陸の中でも、広大な面積を誇る大陸の一つ、レトナーク大陸。
そしてレトナークの中でも一際広い面積を有しているのが、緑豊かなヴァレスティア森林。
このヴァレスティア森林は、大陸の中央に位置し、内陸のかなりの割合を占めている。その広い面積により、人の介入が行き届くことがなく、多種多様な動植物たちや、未開の土地が数多く存在している。
ヴァレスティア森林への進入は、戻ることができるかどうかわからない、生命の危険があるという覚悟がいるほどである。
ただ、森林の浅い付近では木の実や食用の植物が豊かであることから、しばしば食料調達に使われることが多い。
深く進入すれば、希少なものが手に入るが、その反面危険な動物などがいるため、命を落とす危険性が増すということだ。
そんなヴァレスティア森林を居住とする人間は少ない。食料には困らないが、危険が多数存在するからだ。
そんな少ない人間の1人、フェイ•オーディンは今日も森林の中を食料調達のためにのんびり歩いていた。フェイが根城にしているのは、森林のなかでも中層域である。
森林には危険度がわかるように層分けしてある。比較的安全な低層域から始まり、中層、深層、大深層、危険層、未開層と危険度が順次増していく。未開層は、文字通り到達したものがいないため、なにがいるのか、なにが起こるのかわからない層となっている。
人の介入が少ないということは、それだけ人との接触も少ない。ヴァレスティア森林に住もうとする者は、そういった理由で住む者ももいる。フェイもその1人である。
「今日も木の実と干し肉にしておくとするかなぁ」
気の抜けたセリフを吐きながら、木々の中を悠々と歩く。危険が多いはずのヴァレスティア森林の中で、フェイは緊張感のないセリフわ吐きながら木の実を探している。
フェイ•オーディン。性別は男。見た目は20後半ぐらいか、どんなに上に見ても30歳の後半には見えない。端正な顔立ちで、キレイな二重と大きい目の色は濃いブルー。どことなく人懐っこさも感じられるが、媚びている雰囲気はない。髪の毛は立つか立たないかぐらいのミドルヘアー。色は、混じり気のないグレー。木々の暗さで今は落ち着いたグレーに見えるが、時たま木々の合間からさす太陽の光に照らされると、光を放つような光沢のあるグレーとなる。身長は170の半ば。森林に進入する際によく用いられる、茶色でフード付きのポンチョのような1枚布で、長さは膝下ほどまである。それを上半身にまとい、生地が厚めの黒のパンツを履いている。上半身の布の端は、かなり古くなっているのか、所々千切れたり、糸くずが無造作にヒラヒラと風になびいている。体格は布のせいか、細身に見える。ただ、細身に見えるだけで、肉が引き締まった感じがうっすら見て取れる。
「む、ただ今日はトットルバに卸す品があったか」
フェイはそう言うと、少し足取りを早めた。
トットルバとは、フェイが居住拠点としている中層域から森林を抜けたすぐの村だ。主に森林で採取したものを卸す市場のような役割を果たしている村の一つで、他の町や都市に品物を流通させている。海でいうところの港といったところか。ただし、品物の価値は流通の流行に応じて千変万化する。ただ、希少価値の高いものは流行に流されず安定して高値で取引されるため、希少価値の高い品を一攫千金狙いで出稼ぎに来る荒くれ者も集うことがよくある。そのため、治安が良いところとは決して言い難くもあり、村レベルの規模にとどまっているのはその辺りが原因の一つである。
木々が生茂る中に、少し開けた部分がある。そこに太陽のスポットライトを浴びるように小屋が2つたっている。キャンプ状のウッドハウスのように、シンプルなデザインの木造ハウス。1つは居住用、1つは物置としてフェイは活用している。
こじんまりとした物置小屋の方へ入り、何やらさほど大きくないクリーム色の袋を取り出して、肩に担ぐ。
「これからだと帰って来れなくもないが、向こうで泊まるかなぁ」
今は太陽が1番高いところにあるころだ。これでは納品が終わる頃には夕方となっている。そのため、トットルバの宿でゆっくり休み、明日に帰ってこようと考えてのセリフだ。
森林の夜は昼間にも増して危険度が増す。そのため、普通の人間は明るいうちに森林での用を終わらせるのが通念だ。
「さぁて、出発しようかな」
フェイはトットルバを目指して、拠点の住処を後にした。
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