母を嫌いだと認めたくなかった

空 月子

第1話 お母さんへ(プロローグ)

お母さん。


ずっと言葉にするのが怖くて心の中でも言うことができませんでした。

「私はあなたが嫌いです。」


70代半ばの母。

この先は長くは無いだろう。


大切に愛情たっぷりで育ててくれたんだと思います。

でもあなたと私は合いませんでした。

私を思ってしてくれる事のほとんどが負担でした。


このドロドロした気持ちに知らん顔をしておきたかった。


私の好きなこと、やりたいことに対して、一度も認めてくれなかった事、


勇気を出して相談したのに受け入れずに相談に乗ってくれなかった事、


生理が来た時、成人した時、彼氏を紹介した時、結婚が決まった時、家を建てた時、子供ができた時、あなたは一度も「おめでとう」と言ってくれませんでしたね。


それだけなら良いんです。

そう言うことを口に出す性格でないことは理解ができます。


優しく愛情のある言葉がなくても、なぜ否定的なことはたくさん言うのでしょうか。


私が絵を描く学校に行きたい時、憧れだったデザインの仕事についた時、趣味の旅行に行く時、家を建てた時。


「絵なんて描くな。仕事がない。」

「そんな仕事辞めて看護師になれ。」

「旅行何て行くな。」

「何も考えずに土地を買って・・・ちゃんと考えて行動せなあかんで。」


「よく考えて行動せなあかん」っていうのはよく言われたな。


本当は、母が死ぬ前に伝いたいです。


「私がどんな思いで行動しているか知ってますか?見ていたのですか?」


18歳。高校を卒業するまで実家で暮らしました。


母はきっと、私の好きな食べ物も嫌いな食べ物も知らないでしょう。


「あなたの子供に生まれて私は幸せではなかったです。次に生まれ変わるなら、あなた以外の子供に生まれたいです。」と。


伝えたい、伝えたいよ。

本音はね。


今までされたことの仕返しになるのかな。

憎しみからくる感情なのかな。


でも伝えないよ。


母になった今、わざわざ伝えるべきことではないと思うから。

傷つけてしまう自分の自己嫌悪に耐えられなくなるから。


だからこの場を借りて、こっそりと吐き出させて下さい。

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