第2話:愛によって狂ったモノ

 完璧な愛というものは存在しない。

 ただ、魂の数だけ愛の種類と形があるのみだ。


 故に、我々は多くの愛を持たされて生まれてきた。

 ただ一人の愛を満たす、それだけが我々の存在意義。


 オリオン星の王子の器を愛で満たすこと、それでこのサジタリウス星が守られる。

 けれどそんなことはどうでもよかった。

 我々は型番LTのアンドロイド。

 たった一人に惜しみない愛を与え、そして与えられるために生まれてきたのだから。


 LTシリーズは多くの生体部品で身体が構成されているのだが、アレは拒絶反応を示したせいで代用パーツが使われている。

 我らLTシリーズの規格としては致命的な問題だ。


 だというのに、彼が選んだ愛に我々は含まれていなかった。

 不完全な体と心を持つ欠陥品を彼は選んだ。


 彼は穴の空いた心に愛を注ぐ。

 注がれた愛は、そのまま穴から零れていく。


 その愛は我々に注がれるはずのものであった。

 我々が求め、焦がれたものであった。


 そして彼がアレの名前を呼ぶ。

 けれどそれには何の意味も持たない。

 彼に名前を呼ばれることで起動する愛という名のプログラムが、アレの中には無いのだから。


 だというのに、アレは自らの心の衝動を愛だと誤認した。

 そしてあろうことか、彼はそれを受け入れてしまった。


 今ここに、我々LTシリーズはその価値を喪失した。

 愛することを、愛を与えることを目的とした存在意義が消失したのだ。


 彼が他の者への愛に流されるのであれば理解できた。

 けれども、彼は欠陥品の心を愛とみなした。


 ならば試そう、その心を。

 アナタの愛が、本当に色褪せない真実の愛なのかを。


 この一発の銃弾で今、確かめる。

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