第33話 リィムとマイア、勇者を求めて



 カーライルがアルベーリに付き合わされて、休日に疑問を持っている頃のとある町のとある家の中。


「起きた?」

「んあ……おはようなのよ……」


 ここはリィムの家。

 家に戻った後、かなり疲労していたのか、気絶するように寝たマイア。

 リィムの部屋にあるベッドを占拠して、たっぷり1日寝ていたマイアに、リィムが声を掛けた所だ。


「……ここはどこなのよ?」

「私の家よ。マイアはここに着いた途端寝たのよ」

「……そうだったなのよ。世話になったなのよ」

「まぁ、これくらいは良いんだけどね……」


 その時、グゥー……という間抜けな音が部屋に響く。

 音が鳴りやんだ後、ぼそりとマイアが呟いた。


「……お腹が空いたなのよ」

「はぁ……仕方ない。とりあえず何か食べるか」


 マイアを連れて、リィムは部屋を出る。

 保存していた魔物の肉で、簡単な料理を作ってマイアに出してやる。


「はぁー……満腹なのよ」

「……よく食べたなぁ」


 出された料理を片っ端から食べ尽くしたマイアは、満足したようにお腹を撫でている。

 それを見るリィムの方は呆れ顔だ。


「それで、ルインはどうしたの? 捕まったと言っていたけれど?」

「そうなのよ。ルインは国の兵士に捕まったなのよ。私は捕まりそうになったところを、逃げて来たなのよ」


 マイアは、ルインが捕まった時の状況を詳しくリィムに話す。

 その話を聞いていたリィムは、段々と顔が険しくなって行く。


「あの後ルインは、そんな事をしていたのね……」

「そうなのよ。ミオリムやムオルナは甘い汁を吸えて、満足そうだったのなのよ。結局、色んな村の人を騙し続けて、最終的には捕まったなのよ」

「ルインもそこまで落ちたか……カーライルがいれば、そんな事にはならなかったはずなのに……」

「カーライルもリィムも、追い出したのは悪い事をしたと思ってるなのよ。信じてもらえるかわからないけどなのよ。私はルインに唆されただけなのよ。ごめんなさいなのよ」


 険しい顔でカーライルの事を話すリィムに、申し訳なさそうな顔をして謝るマイア。


「マイアは元々、ルインの悪事には加担していなかったはずよ? それが何故、あの時はカーライルを追放する方に付いたの?」

「……ルインに言われたなのよ。カーライルを追い出せば、お金がもっともらえるからってなのよ……それで、私は調子に乗ってしまったなのよ」

「そう……貴女がお金に執着してるのはよく知ってるわ。それをルインに利用されたのね」


 マイアの言う事に、理解を示すリィム。

 本当かどうかを疑う事をあまりせず、元とはいえ仲間だった者の言う事を信じてしまうのは、リィムの良い所でもあり悪い所でもあった。

 もっとも、マイアの方も今更ルインを庇う必要は一切無いため、嘘を言っていないのだが。


「……カーライルにも謝りたいなのよ」

「……しかし、カーライルがどこにいるのかわからないしな……」

「一緒じゃ無かったなのよ?」

「一緒だったのは追い出された時までよ。その後に一度、別れを告げに来た時に会っただけね。追い掛けようにも、すぐ走って行ったし……私がここへ戻る事は伝えたけどね……」


 反省した様子から、落ち込んだ様子になったマイアを見て、リィムは歯噛みする。

 人のこういった姿を見ていられないのが、優しいリィムの特徴だ。


「……どうやら勇者は、魔王国にいるようだぞ?」

「父さん?」


 居間の扉を開け、声を掛けて来たのはルドルフだ。

 二人はルドルフに詰め寄ってどういう事かを聞く。

 どうやら、ルインが捕まる前に国王が指名手配のお触れを出していて、その中にカーライルという勇者が国外に渡ったため……と言うのがあったらしい。

 そのお触れを今、ルドルフが見て来たという事だ。


「魔王国か……ここから行けばそう遠くないね」

「行くのなのよ?」

「カーライルに会って、ルインの現状も伝えたいしね。行ってみるわ。ありがとう、父さん」

「私も行くのなのよ。会って謝るのなのよ」


 二人は頷き合い、準備を整えルドルフに見送られて、魔王国へと旅立った。



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