第7話 勇者、仕事内容を聞く



「それでは、仕事の説明だな。カーライルには管理職になってもらうわけだが、内容はいたって簡単だ。魔王国にある各町、村に行って魔物を間引く事が仕事になる」

「魔物を間引く……討伐するんですね。それは良いんですが、それで何故管理職と?」

「ん? 魔物を間引いて数を管理する職だ。……管理職だろう?」


 言葉としては略しただけで間違ってはいないのかもしれないが……想像していたものと全く違った……。


「管理職と聞いて、想像をしていたものとは全然違いますが……話が進まないので無視する事にします」

「うむ。魔物を間引く事だが、知っての通り魔王国では強力な魔物が多い。その魔物達の数が最近増えて来てな……それで、誰かこれらの数を減らす者がおらんかという話になったのだ」

「成る程……事情はわかりました。ですが、国の軍や魔物退治をするような人はいないのですか?」


「それがな……最近の若者がたるんどるせいか、魔物を退治できる者が少なくなって来ているのだ。できる者もかろうじて1匹や2匹程度が精一杯。ひどい時にはそれで大きな怪我をして魔物と戦えなくなる者もいる始末でな……」

「軍を動かせば魔物程度楽に討伐はできます。ですが、今回の目的は殲滅ではなく間引く事、つまり数を減らす事なのです。どこかの村が危機に陥ってる状況ならまだしも、現状で軍を動かす事はできません」


 アルベーリが、若者のふがいなさを嘆くように説明して、フランの方は軍が動かない理由を説明してくれた。

 しかし、それで何故人間の国であるロラント王国から募集をしたのか。


「人間を募集した理由は?」

「魔物の中には、魔法が効かない種族もいるからな。魔法に頼る魔族では太刀打ちできぬ場合もある」

「一部の人間しか魔法が使えない……人間なら対処できるでしょう」

「確かに人間は本来、魔法が使えませんね……儀式で魔法士などの職を授からない限り」


 ロラント王国では10歳の時、参加を義務付けられた年に1度の儀式によって戦闘職を授けられる。

 魔法士や戦士、治癒士等がそうだ……俺の勇者というのもそうだな。

 15歳で成人した時、正式にその職になるのだが、その儀式で職を授けられなかった人は一般的に商人や兵士、農民等になる。

 一般の人たちが戦えないわけではないが、職を授けられた人はその時に、付随した能力も授けられるので、魔物退治を請け負う事がほとんどだ。

 魔法士なら魔法が使える、治癒士なら怪我を癒す奇跡を使える、戦士なら武器の扱いが得意になって身体能力も上がる等、様々だ。


「魔法を使わない代わりに、武器を使う。そして、武器を使う事で職を得ていなくても、魔物を討伐できるだろう?」


 人間は魔法が使えない人がほとんどである代わりに、剣や槍、斧等の武器を使って魔物に対処する。

 目の前にいるアルベーリみたいに、体を鍛えている事が多いからだ。

 兵士になる、職を授けられなかった人間がそうだな。

 対して魔族は、魔法がある事が当たり前過ぎて武器をほとんど使わない。

 さすがに軍の兵士ともなれば、剣くらいは使えるんだろうが、町や村に住む人々は使えない……と、以前聞いた事がある。


「もし、人間が来てもそれが魔法士だったらどうしたんですか?」

「……そういう事もあるかもしれんな……まぁ、今回はカーライルという戦える者が来たのだから、気にする事もあるまい。はっはっは!」

「世界に一人しか存在しないという勇者ならば、魔物を相手にする事は朝飯前でしょう」


 アルベーリ……魔法士や治癒士だったり、管理職という言葉だけで内容を知らないため、戦えない一般人が来る可能性を考えて無かったな……笑ってごまかしてやがる。

 それとフラン、俺が勇者って事を知ってるって事は、部屋に入って来る前から窓に張り付いて覗いてたな?



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