異世界転生したのに【インキャラ】ってなんだよ。

ばいと戦士

第0話 プロローグ

 キーン コーン カーン コーン


 「はー、やっと終わったぜ」


 この何度聞いたかもわからないぐらい聞いたチャイムの音を背に泰然とした様子で校門を出て行こうとしていた。


 そう、この男こそこの物語の学生時代万年インキャラの主人公 [佐藤悠斗] である。


 「今日も0人か」


 今日学校で話した人数を数えるって言うのが習慣になっている。二年目あたりからは0人が当たり前になってきたので0人が誇らしいと思えるようになってきたほどだ。


 そんな独り言を呟きながらいかに家まで早く帰れるかという帰宅部の鏡のような思想にふけりながら帰路についていた。


 「そういえば、なんでこんなインキャラになっちゃったんだろ」


 街でイチャイチャしているカップルとすれ違うたびにこんな考える意味もない邪念が俺の完璧な家までの演算の邪魔をしてくる。



 あれは高校入学日のことだった。 


 「はー、ついに明日かー 緊張するなー」


 中学時代スクールカースト最下位だった俺は高校デビューを果たそうと親に頼んで地元では少しばかり有名な私立高校に通うことにした。


 次の日の朝、俺は待ち受ける華やかな高校生ライフを胸に心を躍らせていた。


 「行ってきまーす!!」


 玄関からの踏み出した一歩は希望に満ち溢れ、ここから学校への道が俺の為だけに作られたものだと感じるほどだった。

 私立校ということもあり私服登校だったので、高校デビューするべく用意した真っ白なアンクルパンツに真っ赤なパーカー 胸元には申し訳程度のネックレスを身にまとい、舐められないようにと春休みから鏡の前で毎日練習したメンチ切った面を下げながら学校へ向かって行った。


 キーン コーン カーン コーン


 「はー、これが高校の音のチャイムかー 中学校と変わんねーな」


 聞き慣れたはずののチャイムが新鮮に感じるほど高揚としていた。


 「はーい、みなさん席についてくださーい」


 担任の先生の声で我にかえる。


 「それでは出席番号1番の人から自己紹介お願いしまーす」


 「私の名前は新井 結衣です。 みんな仲良くしてくださーい」


 無難だ。この自己紹介がこの先の高校生ライフの全ての鍵を握ると言っても過言ではない。

 1番から自分の番になるまでの間ひたすら昨日の夜から考えてたヨウキャラになるための自己紹介文を呪文のように唱えていた。


 「次は、24番 佐藤悠斗くんお願いしまーす。」


 「はい! 俺の名前は 佐藤悠斗。 中学の頃から割とイケイケやで。好きなことはアニメを見ることとボカロを聞くことで、趣味は人間観察 特技は友達を作ることや。まー、みんな仲良くやってこーや。」


 勝った。俺は確信していた。このクラスには中学時代の俺を知るものはいない。つまり嘘を言おうと誰も気づかないのだ。慣れない言葉とメンチ切った顔面を巧みに使いながら、自分が思う全てのヨウキャラ要素で確実なヨウキャラを演じたのだ。


 次の日から俺は周りには誰も近寄らなかった。



 そして現在に至る。

 なにがダメだったのかもわからない。

 まー、そんなことどうだっていいだろう。


 「ふー、やっと家についたか」


 少し悲しいことを思い出してしまい、早く自分の安心できる場所に行きたくなったのか、二階の自分の部屋に行く足取りは少しそそくさとしていた。


 「よっ、こらしょっと」


 俺は自分の部屋の定位置につき、パソコンをスムーズな動作で立ち上げた。


 「ん?なんだこれ?」


 俺はある広告を目にマウスを動かす手が止まった。

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