第36話
4
土曜日になって、デーモンの声かけでボーリングに行くことになった。
「とりあえず私立がすんだから、気分転換をしよう」という口実だった。
この前アイコからも私立高校の合格連絡があったし、ノッポも同様に合格したことで、メンバー4人全員が私立高校の合格が決まった。そこでデーモンが提案をしたのだ。
みんなも同じ気分だったのだろう、誰も反対するものがいなかった。だが、今回だけはネズミに遠慮してもらいたかったから、彼にだけは連絡しなかった。
ボーリング場は結構込み合っていた。30分ほど待たされて、いちばん端のレーンで投げることになった4人は、久しぶりのボーリングに興奮を隠せなかった。
だが、気持ちとボールの行方はひとつになることはなく、1ゲーム目は散々の結果になった。すぐに2ゲーム目に入ったのだが、やはり思うようにボールが走ることはなく、1ゲーム目に較べてもそれほど点数は伸びなかった。
2ゲームすんだところで、デーモンが金太を誘う。
「金太、のどが渇いたからジュース買いに行こ」
目配せをしながらベンチから立ち上がった。金太は突然のことに戸惑いながらデーモンのあとを追った。
「いいから、早く来いよ」
デーモンは小声で金太にいう。
「どうしたんだよ、急に」
「だからさあ、あいつらをふたりだけにしたいんだよ。あのふたりをなんとかしたいっていったのはキミじゃないか」
デーモンは少し怒った言い方で金太を見る。
「なるほど、そういうことか」やっとジュースを買いに来た意味がわかった金太は、そういったあと振り返ってふたりを見た。「でも、あいつちゃんとアイコに話することができるかなァ」
「できるかどうかは別として、とりあえずふたりだけという舞台を拵えないとだめだろ?」
「まあ、な」
自販機でジュースを買ったふたりは、話すことがなにもないままジュースを飲み、時折遠くからふたりの様子を覗う。
「どうだ?」と飲みかけた手を止めて金太は訊く。
「だめだ。あいつら距離を置いたままで、一向に話す素振りがない。なんか上野動物園のパンダのお見合いみたいだ」
「ほんとだ」
しばらく自販機の前で時間を潰していたデーモンと金太だったが、あまり遅くなると余計なことを勘ぐられるかもしれないので、ふたりにもジュースを買ってレーンに戻った。
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