第10話
4
新学期がはじまってしばらくしたとき、クラスに転校生がやって来た。
その転校生の名前を河合涼介(後に通称 デーモン)といった。まさにあの河合老人の孫だ。そういえば老人は「9月になったら孫がニューヨークから帰って来る」といっていた。だが、まさか同じクラスになるとは夢にも思っていなかった金太は、早速『ロビン秘密結社』のメンバーになるよう勧誘する。
帰国したばかりの涼介は、早く友だちが欲しかったこともあるし、ましてや金太がジイちゃんの友だちということもあって、ふたつ返事でメンバーに加入にした。
金太は早速ほかのメンバーに集合をかける。ほかのメンバーも河合のジイちゃんをよく知っていることもあって、諸手を挙げて賛成した。
ところが、しばらくして新メンバーのデーモンは、突然金太に相談を持ちかける。
その相談というのは、ニューヨークから戻ってしばらくしたとき、あるものをスーツケース入れて持ち帰ってしまったことだった。そのデーモンが持ち帰ったのは、ウエスタンスタイルのカーボーイの格好をした小さな人間だった。
金太ははじめ見たとき、ただのフィギュアにしか見えなかった。ところがその人形のようにしか見えなかった物体が、突然歩き出して次には言葉も喋ったのだ。アメリカにはすごい玩具があるもんだ、と感心した。それが小さな人間とは思えなかったのだ。
そのアメリカからスーツケースに忍び込んで密航をして来た小さな人間は、名前をジョージといった。
デーモンは内緒でジョージを部屋にかくまっていた。ところが、時々ママにいわれてお手伝いさんが部屋を掃除することがある。案の定、ある日お手伝いさんにもう少しで見つかりそうなり、急遽金太に相談したのだ。
断ることができなくて、金太は秘密基地にジョージをかくまうことを決めた。ところが、秘密基地にはほかのメンバーが来ないとも限らない。それに結社の掟のなかに隠し事はしないという条項があるのだが、見つからないことを願って決断した。それは金太自信どうしたらいいのかまったく判断がつかなかったからだ。
秘密基地でジョージは生活することになったのだが、ジョージは自分で食料を調達することが不可能なため、金太とデーモンが交代で面倒を看ることになった。
校則で禁止されてる学校帰りにコンビニに立ち寄り、食べやすいベビースターラーメンやポテトチップスや菓子パンなどを買って小屋に搬んだ。
そんなことが数日続いた頃、放課後に小屋を覗いてみると、昔使っていた犬小屋の隅で震えて怯えているジョージの姿があった。
「どうしたんだ、ジョージ」と金太が訊ねる。
訊かれてもジョージはなにも返事をしなかった。それどころか、なにかを思い出したように益々身を硬くしてしまうのだった。だが、どうしても聞かなければ話が進まないと思った金太とデーモンはジョージが落ち着くのを待った。
ようやく話すことができるようになったジョージがいうには、「昨日の夜中に、殺されるんじゃないかと思うようなことがあった」と恐るおそる話しはじめた。
ジョージが眠っていたとき、なにか小屋のなかで聞き慣れない音が聞こえ、目を覚まして恐々覗き見てみると、すぐそこに大きなねずみが食べ残しのポテトチップスをむさぼっている姿があった、というのだ。
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