第24話 二重惑星の哲学

アキ「我々天球人は知的生命体に進化する前から、

すでに不老不死性を得ていました。


この星に生息する他の動果物も、家畜としては実に扱いやすい。


動果物は地球の動物と違って子供時代が無く、性別も無い。

ただ刈り取れば自然と果物のようにまた実ります。

そして食料は必要なく、基本的に植物の親木から養分を得る。


つまり我々は不老不死で、さらに忙しく働く必要も無い。

生まれつき、です。


だからお金も無い。税も義務も無い。

唯一あるのは資源不足にならない程度に繁殖管理する事だけ。

繁殖欲、性欲もない。


そんな我々の生き甲斐はただ楽しむ事です。

知的好奇心を満たし、

仲間とのコミュニケーションを楽しみ、

科学的発見、発明、心身を鍛えるなどの達成感。

最後には安らかな尊厳死。


以上が我々の生態、文化です。



が、地球人との違いを知って、

宇宙の真理が一つ解けました。


この宇宙の生命を支配しているのは『強運』、偶然です。

そして生命の存在意味はおそらく必然です。


我々の太陽は『幸運』にも連星ではなく超新星爆発しないし、

生命に長期安定したエネルギーを与えます。


そのハビタブルゾーンには『幸運』にも磁界を持った岩石惑星が二つ。


外側の軌道には巨大ガス惑星が『幸運』にも隕石を吸収し、

安定した周回軌道で軌道交換も起こらない。


二重惑星のどちらの星にも『幸運』にも生命がいる。


この幸運というのは努力がかすむ程に圧倒的で非情な物です。

宇宙、特に生命は強運に恵まれるかどうかが全てです。


さてここまでは同じ『幸運』に恵まれた地球人と天球人ですが、

進化の途中から幸運かそうでないかが分かれてしまった。


天球人は生きる上で苦労が少ない。

生まれつきです。

天球人は幸運です。


しかし地球人には裕福か、容姿端麗か、健康か、

など数えきれない不運な人の上に幸運な人がいるようです。


どうあがいても100年も生きられない。

資源を奪い合う戦争で殺し合う歴史を重ねてきた。


天球人はその間も『生まれつき』平和に豊かに暮らしていました。

くらべると地球人は不運ですが、どうしようもなかった。


やはりどうやっても『幸運』には勝てません。」



アキはなにが言いたいのか。

自慢げな内容に少し不穏な空気がただよった。

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