二重惑星
淀川馬琴
一人っ子と双子
第1話 一人っ子と双子
月は美しい。
そして地球も。
宇宙空間から見ると特に美しいと言う。
もし地球を毎晩のように見られたら、月の様に飽きるだろうか?
■
マウは大気圏突入の前にもう一度『地球』を見た。
美しい。
それはこれから突入する星ではない。
母星だ。
これから突入する星は耐熱パネル側なので見えない。
しかし毎晩飽きるほど見てきた星だ。
二重惑星。
どちらの星も美しかった。
■
マウは『天球』と呼ばれている星に歴史上初めて突入を開始した。
母星の技術の粋を集めた探査機で飛び立ったが、
しかしそれはおそらく片道切符の旅になる。
探査機は大気圏突入後、もう一度宇宙速度に達する程の性能を持っていない。
決して帰れない有人探査。
非人道的だが、決行されたのは当然の事だろう。
過去、誰が始めての冒険に死のリスクを考えなかったというのか?
世界一周?北極到達?新大陸発見?
宇宙に出るまでに十分な科学技術の発展を要するのは偶然か、
神の御業か、宇宙の意思か。
分かっていることは、天球にも水と空気と、緑の大地がある事。
どちらの星も双子の様に美しい星だった。
■
マウは大気圏突入後、
十分な大気で減速し始めた探査機から脱出し、パラシュートで落下する。
必要な資材も同じくパラシュート投下された。
最初の任務はその資材を回収し、母星と通信する事。
マウはまだ宇宙服のままだ。
そして酸素ボンベで呼吸している。
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